杉作J太郎の
DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画

25本目・『ランペイジ 巨獣大乱闘』

　アタマを使いたくないとき、あるよね。
　働かないときもある。
　そもそも普段からあまり使ってないのかもしれない。
　使ってるつもりでも使ってないから難しい本なんかも最近は読まなくなってきた。時間がなくてとか、視力の問題でとか、読書灯がないから手元が暗いんだよなとか、理由は常にあるがそういうときに私が思っているのは自分自身に対する言い訳なのだろう。
　しょうがないのかもしれないが本当はそれでもアタマを使っていないといざというときに役に立たなくなる。いざというときがあるのやらないのやらわからないが追いつめられて困っているいる誰かの役に立ちたいし自分自身が追いつめられて困ってるんだよ私の場合。十年以上かけて作っている映画がまだ完成しない。なんとかしなければいけない。やる気がいくらあっても作戦がないからいけないんだ。アタマを使わなければいけない。使っていないとどんどん使うのが面倒になってくる。アタマに限らすなんでもいっしょだ。

　とはいえ、それでもアタマを使いたくないときはあるのだ。
　使ってはいけないときがあるんだ、いまの時代には。
　それはよくない、最悪の方向を選択してしまうかもしれないからだ。考えすぎるとよくない。
　だから使ってはいけないときには何もかも忘れてアタマをらくにしてやらないといけない。
　音楽がいいね。
　そういうときの音楽はいいんだ。
　全身をもみほぐしてくれる。
　本や漫画とかの視覚を使うものとか、物語を把握して追っていくものは難しいことがある。
　失恋したり大失敗したりひどい目にあったり人間関係でつまずいたりして辛いとき、さあ映画でも見ようか、テレビドラマでも見ようかと思ったがまったくアタマに入ってこなかった経験、みんなにもないかな。私はある。結構ある。常にある。

　そんなときに最適な映画がかつてレンタルビデオ隆盛の頃にはずらーっと並んでいた。ひとつの映画が20本30本40本並んでいた。えーっ、こんな映画、誰が見るんだろ。そんなに面白いのかな。凄く話題になったわけでも映画祭で賞を獲ったわけでもないのに。
　それは、アタマをからっぽにして見たい人がたくさんいるからなんだ。
　世の中が複雑になって煩雑になってみんな疲れている。人間関係も複雑なら世のマナーや常識やしきたりやモラルも多様化して難しくなってる。そして傷ついて消耗してる。
　レンタルビデオ屋にひとつの映画が20本30本40本並んでいたのはその人たちのためだった。いわばセーフティネットだったのだ。
　まさに、いまだったらこの映画がズラリ並んでいるだろう。
　わかりやすい。
　字幕なくても吹き替えなくても絶対にわかる。
　もちろんロックの声は聴きたいし、吹き替えの若本さんの声も聴いたら聴いたでさらに面白くはある。
　だがなんにもしらなくても。
　ぼんやり眺めているだけで絶対にわかる。
　人物の見分けも超かんたんだ。
　筋肉ムキムキのスキンヘッド、元プロレスラーのロックことドウェイン・ジョンソンが主人公。もうひとりの主人公は真っ白なゴリラ。
　宇宙を振り出しにひとつの都市が壊滅してしまうかもしれないスケールの大きな物語だが主な登場人物も画期的に少ない。
　巨大化したゴリラ、オオカミ、ワニが大暴れする映画です。
　元はアーケードゲームです。
　大好きなドウェイン・ジョンソン、ナオミ・ハリス、ジェフリー・ディーン・モーガンが主人公チームなので個人的には超満足の作品です。ドウェイン・ジョンソンは製作総指揮にも名前がありますがプロレスラー時代に全世界の人たちに愛された経験がこうした言語や物語（主義主張宗教観含む）を必要としない娯楽に結びついているのでしょう。

『ランペイジ 巨獣大乱闘』（ニューラインシネマ/ワーナー・ブラザース）2018年

出演/ドウェイン・ジョンソン、ナオミ・ハリス、ジェフリー・ディーン・モーガン、マリン・アッカーマン、ジェイク・レイシー、ジョー・マンガニエロ、マーリー・シェルトン、ユライア・フェイバー
脚本/ライアン・イングル、カールトン・キューズ、ライアン・J・コンダル、アダム・スティキエル
撮影/ジャロン・プレサント
音楽/アンドリュー・ロッキングトン
監督/ブラッド・ペイトン

＜隔週金曜日掲載＞
画像：上記作品　ポスター