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サブカルチャー 2021.12.10(金)

きたがわ翔の新書『プロが語る胸アツ「神」漫画 1970-2020』を買うことにした:ロマン優光連載201

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第201回 きたがわ翔の新書『プロが語る胸アツ「神」漫画 1970-2020』を買うことにした

 漫画家・きたがわ翔先生の漫画論『プロが語る胸アツ「神」漫画 1970-2020』を購入することにした。読むのを非常に楽しみにしている。
 そう言うと「え、なんで!」とあきれる人もいるかもしれない。なぜなら、きたがわ翔先生はネット記事における漫画・『鬼滅の刃』に関するインタビューの内容が疑問視されている真っ最中だからだ。
 件のインタビューだが、過去の少年漫画に比べて、主人公・炭治郎が強くなるために修行で努力するような描写があまり見られないといった、実際に原作を読んだ人間からすると非常に不可思議な内容が語られている。それについてはSNS上で膨大な数の反論がなされているのだが、『鬼滅の刃』では炭治郎が修行している描写がたびたび描かれているし、最近の少年漫画の中では修行シーンの割合が高い作品だ。最近の少年漫画は修行シーンや強くなるための努力があまり描かれないと言われた場合に反証に使えるような作品である。
 また、作品中にモノローグが多いという話をするのにアニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の中の煉獄さんの最後のシーンを引き合いにだしていて、原作漫画の話をしているはずなのに非常に不可思議である。
 モノローグが多いことが少女漫画からの影響がという論の立てかたも非常に雑で、昔から少年漫画でも多かったという反論もあるし、 昔の漫画はヒールは改心したりしなかったが今は悪人にもいいところがあるという描き方をするという話についても、昔からそういう悪人描写はあるという反論がされている。実際、その通りだ。きたがわ先生が本当にちゃんと原作を読んでいたのなら、今までちゃんと漫画を長い間読んできたのなら、こんなことを言わないのではないかと思わせられてしまう雑な内容のインタビューだ。
 非常に雑な漫画論であり、評価するに値しないものであり、著書のプロモーションのために受けたインタビューだと思うのだが、こういう状態では逆効果ではないのだろうか。
 ところが、不思議なことがある。なにげなくTwitterで「きたがわ翔」で検索していたら、ある方が興味深い記事を貼っているのを見つけた。それがPRESIDENT Onlineに掲載されている『プロが語る胸アツ「神」漫画 1970-2020』の鬼滅について触れた章の抜粋記事  ( https://president.jp/articles/-/52048 ) だ。その記事における鬼滅論はインタビューとは印象が全然違う。まず、そこではインタビューで疑問視されていたような鬼滅の実際の内容と矛盾しているような論は存在しない。鬼滅における少女漫画の影響について語る部分も、件のインタビューとは違って色々な例を出しながら丁寧に語られていて、インタビューでは雑に語られていたモノローグの話も、その効果や役割の少女漫画的な部分がわかりやすく説明されている。あくまで先生の読みときであって正解かどうかは別の話ではあるが、一つの論としてはちゃんと成立しているのだ。 黒死牟について触れた部分もちゃんと読んでいるという印象を受ける。
 同じ人間が同じ作品について語っているのに、別人が語っているかと思うくらい印象が違う。本当に不可解だ。インタビューを行ったライターが、最近の少年漫画によく見られる傾向について先生が述べた一般論(あれはそういう内容だ)の部分を鬼滅の話に雑にくっつけてしまったのか? その一般論さえ、非常に雑になっているのは語り手の問題なのか、まとめた側の問題なのか? それでも炭治郎の努力描写について触れた部分は圧倒的に変だ。PRESIDENT Onlineの記事はあくまで著書の鬼滅に関する章の一部を抜粋したものであるから、全体を読めばインタビューで語られているような変な部分が出てくる可能性もある。全体を通して読むとどんな感想をいだくことになるのだろう? 気になって仕方がない。

 そういうわけで、『プロが語る胸アツ「神」漫画 1970-2020』を購入することにしました。 全部読むとやっぱり変なのか? それともすごくちゃんとしているのか? インタビュー記事と本人の文章の感じがまるで別人のような謎はとけるのかといったら、まあ、とけないとは思いますが。先生は雑で新書の編集がちゃんとしてるのか、先生はちゃんとしてるけどインタビュー記事のライターが雑なのか、他にもなんかあるのか、その間には色々な可能性が存在していますが、そこは製作課程がわからない限りはなんとも言えないですもんね。なんであれ、それぞれに関わっているライターや編集者の力量は関係あるような気がします。

 それはさておき、きたがわ先生は商品写真やファンアートなどをトレースして自作として発表していた悪質な行為(絶対ダメなやつ、というか著作権侵害)が発覚して謝罪したばかり(なぜか謝罪文はすぐ消された)。そんなところに今回のインタビュー記事ですから、ダメージは大きいでしょうね。悪質なトレースの件は真摯に対応してほしいものです。
 そういえば15年くらい前、先生の作品『ホットマン2』にどう考えても自分をモデルにしたとしか思えないパンクス・キャラが登場したことが。友人である漫画評論家の大西祥平氏が主宰する自主出版レーベル・ひよこ書房から出版してもらった自分のエッセイ集『音楽家残酷物語』(非常に判読が難しい手書き原稿をスキャンしたもの、その翻訳、掟ポルシェ氏による解説などが掲載されている)というものがあるのですが、そこに載っているプンクボイ(自分がやっているソロ・ユニット)のライブ写真(大西くんが撮影したもの)とほぼ同じシーンが漫画中のキャラのライブシーンであったのですが、あれもトレース? 台詞でも掟さんが解説中に書いていた造語(そこでしか見たことない)が使われていたので、先生があの本を読まれたことは間違いないと思います。 きたがわ先生の漫画にプンクボイみたいな人がいきなり登場するという、あまりにも突飛な出来事にみんなで笑ってしまったんですけどね。しかし、なんで少部数の自費出版の特殊な内容の自分の本が、きたがわ先生の手元に届いたのか。本当に謎です。きたがわ先生はいつも自分に謎を振り撒いてくれる不思議な存在です。

(隔週金曜連載)

【おすすめ書籍】プロが語る胸アツ「神」漫画 1970−2020(きたがわ翔・著/インターナショナル新書)集英社インターナショナル刊
https://books.rakuten.co.jp/rb/16850677/

★ロマン優光のソロパンクユニット プンクボイのCD「stakefinger」★
https://books.rakuten.co.jp/rb/15176097/

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再注目。『90年代サブカルの呪い』

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紙書籍の在庫があるネット書店はコア新書公式ページから
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『SNSは権力に忠実なバカだらけ』

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http://books.rakuten.co.jp/rb/14537396/
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『日本人の99.9%はバカ』

https://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_010.html

★「実話BUNKAタブー」では、『ロマン優光の好かれない力』引き続き連載中! 11月16日より発売中の1月号テーマは「女ラーメン店主の梅澤愛優香は本当に悪者なのだろうか?」ご購入はお早めに! 次号2月号も12月16日発売! コンビニや書店・ネット書店で! 

★ロマン優光、太郎次郎社エディタスのWebマガジン「Edit-us」での連載終了。気になる人は「Edit-us」で検索してみてください。単行本が2022年6月発売予定。もう予約可能!
https://books.rakuten.co.jp/rb/16982369/

【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』/PUNKUBOI(Less Than TV)
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