この映画はジャンルとして「オカルト」プラス「任侠」である。どちらもあると思われてはいるがあるんだかないんだかハッキリしないもの、結局は人それぞれの問題、だ。
　物語として大きなベースとしたのはサム・ペキンパーの「ゲッタウェイ」である。
　ちなみにすでに紹介した同時上映作品「任侠秘録人間狩り」はサム・ペキンパーの「ワイルドバンチ」である。
　当時の私はサム・ペキンパーにかなり傾倒していた。とくに傾倒していたのは「加速」と「停滞」である。「加速」と「停滞」の混合がいわゆるメリハリとなりリズムとなる。
　印象的なスローモーション撮影や超クールな編集、愛憎の強い独特の異性感などペキンパーの映画は個性豊かで素晴らしいがそこは私の担当するところではない。
「加速」と「停滞」は構成的な部分で、ストーリィとしては「ゲッタウェイ」と「ワイルドバンチ」である。
　えー、どこがー？
　見た人も出演していた人も言うかもしれない。
　そうです。別にセリフや展開をトレースしているわけではない。話も一見全然違う。
「ワイルドバンチ」のほうはなんとなく似ていると思った人もいるかもしれない。大きな物語が同じだ。煮詰まった、行き場のない、終わった男たちが勝ち目のない殴り込みを敢行する。
「怪奇！幽霊スナック殴り込み」は物語のベースが同じだ。刑務所に入っている夫のために妻が政府機関関係者に肉体を提供する。夫のためとはいえ男としてはきつい、ありえない。ありえないがそうするしかなかったのだ。それがその瞬間には愛だったのだ。女として心を鬼にして自立するべきだったのか？
「ゲッタウェイ」で妻を演じたのはアリ・マックグロウ。夫はスティーブ・マックイーン。
「怪奇！幽霊スナック殴り込み」で妻を演じたのはタナダユキ。夫はみうらじゅん。
　物語の初動の設定をいただいたがそこから後はかなり違う。「怪奇！幽霊スナック殴り込み」の妻は政府関係者の要請で暗黒社会の大物の愛人となる。潜入して情報を探るわけだ。その潜入がばれてしまい妻に危機が訪れる。暗黒社会の大物役は鈴木一功、大物の補佐役がリリー・フランキーである。
　ま、このあたりから先は完全オリジナル。幽霊が三人出てきて妻の味方になる。妻はスナック経営をしていて「ママ」と呼ばれている。夫と刑務所で仲良くなった任侠の男も合流する。演じたのは剱伎衆かむゐの島口哲朗。「キル・ビル」出演、スタッフワーク直後の作品であった。素晴らしい出演者を迎えて作品製作のテンションはいやがおうにも盛り上がった。（この項、つづく）

『怪奇！幽霊スナック殴り込み』（2006年・男の墓場プロダクション）
出演/タナダユキ、リリー・フランキー、島口哲朗、鈴木一功、横山剣、大槻ケンヂ、漁港、古澤裕介、DJオショウ、田口敬、内藤研、石熊勝巳、モンロー、井上則人、せきまさ、希和、奥平イラ、田原章雄、DJタキシット、ナイス橋本、高谷洋平、山田ゴメス、ごっしー、篠本634、高木JET晋一郎、有村昆、岩岡としえ、黒ゴマ♂、山田広野、大森昌宏、伴ジャクソン、藤崎望、福田高士、桐原史子、佐々木洋、上本輝雄（男の墓場ニューフェイス）、能地祐子、浅川満寛、手塚能理子、山田五郎、安斎肇、川勝正幸、みうらじゅん
監督・脚本/杉作J太郎
音楽/柳家小春
効果音/ファンク入道
主題歌/クレイジーケンバンド『まっぴらロック』

＜隔週金曜日掲載＞

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杉作J太狼XE監督作品　映画「チョコレートデリンジャー」twitterアカウント
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