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2021.07.30(金)
7本目・『ガメラ対バルゴン』:杉作J太郎のDVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画…連載11
杉作J太郎の
DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
7本目・『ガメラ対バルゴン』
自分がこの世に生まれてきていることは必然ではなく偶然である、と考えられる。もちろん必然であり偶然ではないという考え方も可能なのだが、ま、この原稿では人間は偶然生まれてきたことにしておく。
偶然に生を受け、生まれてきたあとに意識や知識を得、さまざまなものが蓄積し、どうやら人生は二度ないかもしれないと思ったあたりから絶対的に欲が強くなり、なんらかの事情で体力気力が弱まると我欲が増大する。理性、品性、知性、などさまざまなブレーキで我欲を抑えて人間は生きている。
この映画で藤山浩二が演じた悪人は我欲の強い男であった。
南の島のジャングルで大きな宝石を見つけた時から彼の我欲が爆走する。友人や仲間を殺して宝石を独占しようとする。欲が強くなりすぎるのは怖い。まともに物事が判断できなくなっているのだ。
その宝石、と彼が思っている物体。10センチぐらいだろうか。楕円形の物体。
それはどう見ても宝石ではない。
ま、ふつうに見てタマゴである。
そのタマゴを宝石だと思ってたいせつにするのだがそれがタマゴをあたためることとなり、さらに藤岡琢也の医師が藤山浩二のケガの治療として赤外線放射器を与える。その赤外線がタマゴをたまたま照射しつづけてしまう。かくして凶暴な大怪獣、バルゴンが神戸港に現れる。
イレギュラーな悲劇はそうした不幸な出来事が積み重なって起きる。めったにないことだが積み重なることはある。この映画の場合、怪獣誕生に決定的な役割を果たす藤岡琢也の医師が善意の人であることも悲劇だった。
我々は時々振り返ってみたほうがいいのだ。
その宝石は本当に宝石ですか？
『ガメラ対バルゴン』（1966年・大映）
出演/本郷功次郎、江波杏子、藤山浩二、夏木章、早川雄三、藤岡琢也、北原義郎、菅井一郎、見明凡太郎、若松和子、賀川ゆき絵、星ひかる、ジョー・オハラ
監督/田中重雄
脚本/高橋二三
撮影/高橋通夫
音楽/木下忠司
製作/永田雅一
＜隔週金曜日掲載＞
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写真：『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン デジタル・リマスター版』DVD
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【杉作J太郎：プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める（男の墓場改め）狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
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