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サブカルチャー 2021.03.12(金)

最近のサブカル愛好家:ロマン優光連載182

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第182回 最近のサブカル愛好家

 21世紀に入り、既に20年も経とうというのに、既に形骸化したサブカルという言葉に過剰な思い入れをもって、未だに「お前のサブカルは間違ってる!」と変なおじさんに攻撃されることがあるのですが、あれはなんなんでしょう。
 90年代からゼロ年代に「サブカル」にどっぷりはまっていたようなおじさんが「サブカルとサブカルチャーとは違うとか適当なことを言いやがって! 許せない!」「アニメやアイドルやプロレスがいつからサブカルになったんだ! 許さん!」みたいなことを言ってくるわけですよ。そういう人は自分の大好きな特定の映画、音楽がそれにまつわる文化などを指して、それがサブカルチャーであると主張してくるわけですが、それはサブカルチャーの中のあなたが好きな領域というだけで、本人の趣味の問題でしかないわけですよ。そもそも、最初からサブカルチャーが何なのかとか理解できてなかったような人たちなのかもしれません。

 元々は小集団の独自の文化、メインカルチャーに対するマイナーなカルチャー、カウンターカルチャーが政治性を漂白されたもの等を指す言葉であったはずのサブカルチャーという言葉。本来であれば、暴走族文化のようなストリート・カルチャーもオタク文化も等しくサブカルチャーなのですが、一般に「サブカル」と言った場合、両者ともに含まれないのが普通ですよね。本来の意味を離れて、恣意的な選別が行われているわけですよ。「サブカル」という言葉はサブカルチャーの略語として生まれたわけですが、実際はサブカルチャー全般の中の特定の領域(及び、それの愛好家)を指す言葉として機能していたわけです。また、時代・世代・界隈によって指し示す範囲も違ってきたり、細かいことを考えていくと本当はもっと色々とあるんですが、そこまで深掘りしなくても、これぐらい考えるくらいで「サブカル」とサブカルチャーが違うというのは簡単にわかることです。「サブカル」とサブカルチャーが同義だという「サブカル」愛好家による主張は、知的検証によって生まれたものではなく、狂信者による信仰の吐露のようなものでしかないのです。
 80年代以降の日本のサブカルチャー/「サブカル」の歴史を省みると、「何か」について、ハイカルチャー的な方法論(現代思想など)を借りてきて批評したり、その人の独自の概念で批評することで新しく定義付けること、そういう定義付けを楽しむこと、そうやって生まれた定義を元にそれらを楽しんだり、そういった定義を元に作品を作ったり、そういう定義付けをしてる人に対してファン活動をしたりするようなことが大きな流れになっています。その「何か」に代入するのは何だっていいんですよ。 映画、音楽、漫画、アニメ、小説、ゲーム、アイドル、プロレスなどの大衆文化の特定の領域でもいいし、石ころとかでもいいし、それこそハイカルチャーの領域で美術として語られているようなものだっていい。対象それ自体より、名付けられてないものを定義付けて名前を与えたり、与えられている既存の意味を書き換えたりする行為が重要なんですよ(ちなみに、自分の考える吉田豪の一番のサブカル的な功績は「ゴミ扱いされていた古いタレント本やプロレス本を、スーザン・ソンタグのいうところのキャンプ的な見方を導入することで、新しく意味を与えることに最も成功したこと」なんですよね。先駆者もいたし、同時期に同じアイディアを持ってた人は何人かいたと思いますが最も成功したのは吉田さんすね。あと、別に吉田さんがソンタグを読んでいたとかそういう話ではないので)。
 語りかたと対象の相性がいいと、そのジャンル自体が「サブカル」であるかのように取り扱われたりもするのだけど、ジャンル自体が「サブカル」になるわけではなく、どんなジャンルでもジャンル内にサブカルチャーとして扱われるものが生まれてくるというだけの話。音楽は音楽、映画は映画、漫画は漫画です。根本敬の漫画はサブカルチャーとして扱われるけど、植田まさしの漫画はそうではないですよね。まあ、誰かの手によって新たな解釈がされることで、植田まさし作品がサブカル愛好家必須の漫画になる可能性もあるかもしれませんが。
 だからね、作品名や作家名をあげてサブカル的な解釈がしやすいとか、したくなるとかを検証して「○○はサブカル」みたいなことを言うんならわかるけど、ジャンル名を○○の中に入れて「○○はサブカルだ!」「○○はサブカルでない!」みたいなことを本気で言ってるのは非常に乱暴で雑で恥ずかしい行為なんですよ。
「あんなのはサブカルじゃない! いつからサブカルになった!」みたいに言われがちなアニメ、プロレス、アイドルですが、2001年に扶桑社から出ている『サブカルチャー世界遺産』においても既にアニメ、アイドル、プロレスについて触れられています。プロレス、アイドルについては80年代には既に村松友視、『よい子の歌謡曲』といったサブカル的な批評というアプローチが存在していましたし、アニメに関してもサブカルチャー的な評価を受けてる作品とか80年代から普通にありましたよ、押井守監督の『ビューティフル・ドリーマー』とか。こういった事実を無視し(あるいは無知で)「いつから○○がサブカルチャーになったのだ! 歴史修正主義!」とわめきたてるような人たちは、単に自分の好き嫌いでものを言っているだけだし、自分の好きなものをサブカルチャーとかサブカルという言葉で権威づけたいだけの歴史修正主義なのではないかのようにも思えます。
 卵から孵ったばかりの小鳥が始めて目にした動くものを親だとインプリンティングされてしまうように、ああいう人は若い頃に好きになったものがたまたまサブカルと言われていたために、サブカルチャーとかそういったものを深く考えることなく、そのジャンル自体をサブカルであると短絡に受け取ってしまったのかもしれません。
 サブカルチャーという領域は時代と共に変わっていくし、サブカルという言葉の使い方も時代・によって変わったかもしれない。だからといって、好きな作品の価値が下がったり、その作品に対する想いがさげすまれたりするわけではないのに。「サブカル」なんて言葉がなくなっても、本来の意味でのサブカルチャーは色々と新しく生まれてくるだろうし、名付けられてないものに名前を付けたり、既存のものの意味を書き換えていくような方法論も別に無くなったりはしないわけですよ、たとえそれが「サブカル」という名で呼ばれなくなったとしても。それでいいんじゃないですかね。

(隔週金曜連載)

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