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    連載中『ロマン優光の好かれない力』は「樋口毅宏の発売中止本を読んでみた

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サブカルチャー 2021.02.26(金)

『あの頃。』みてみた:ロマン優光連載181

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第181回 『あの頃。』みてみた

 自分がリアルタイムでわりと近くで見聞きしていたことや、身の回りにいた人たちの人生が映画になって、それを観ることになるのは初めての経験で非常に不思議な気分だ。
 そうはいっても、当然ながらそれは現実そのままではない。映画にするにあたって脚色はなされている(もっと言うならば、原作であるエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』の時点で劔くんによる事実の取捨と脚色が既になされているわけだが)。映画の中のコズミンと劔くんとイトウくんの本人再現度は高く、特にコズミンは素晴らしい。外見で言えば仲野太賀氏と実際のコズミンは似ても似つかないのに、後半に行けば行くほど「コズミンってこうだよな」と思わされた。一方でロビさんや中内さんは本人とはやや違うタイプに人物造形がなされている。ロビさんからは、当時すでにバンド・赤犬のメンバーとして名が知られていた(イトウくんはまだ赤犬のメンバーではなかった)というような部分は削られてるし、色々ともっと面白くかっこよいタイプ。実際の中内さんは、色々と陰で画策しながら、メンバーに降りかかる面白い受難を自分は横から吉田豪のような笑顔でニヤニヤしながら見てるようなとこのある人物でもあり、優しい中内さんも本当だけど、本気でワルい人でもあった。あと、実際のRくんカップルはもっと変わった人たちだった。あと、恋愛研究会。のメンバーでも登場していない人も多い。登場人物が増えすぎるとわかりにくくなるのが理由だと思うが、吉野さんという人の場合は、色々とひどすぎて、この人がらみのエピソードを入れると話が台無しになるからに違いない。きっとそう。
 ハロプロあべの支部~恋愛研究会。の流れを考えてみるに、ハロプロを好きな人たちが純粋に集まっていたのが、ハロプロというコンテンツを使って面白いことやるという風に変わっていき、恋愛研究会。結成後はハロヲタとして知り合った人を中心に80年代のTVのバカなバラエティや深夜ラジオのりの面白いイベントをしかけていく集団になっていた。矢口脱退、石川卒業後、2005年以降はメンバーのハロプロ熱が冷めたのか、イベント内容的にもハロプロ離れが進んでいて、恋愛研究会。のイベントにはハロヲタ以外のお客さんも大勢きていた。自分が彼らとよく会うようになったのは、その頃からである。
 そもそもが、赤犬を中心にした大阪芸大人脈、難波ベアーズ・関西ゼロ年代周辺のバンド人脈が含まれていた集団であり、中内さん(自分が会った時はサブカルっぽいものを扱う店の店員さんだった)や西野さんを含めて、面白いことをやりたい造り手側にいる人たちが多く参加している集団だった。赤犬のメンバーの幼馴染みである普通の会社員だった、そういうバンドをやりながらバイトで生活してるような人たちを定職についてないと下に見るような価値観のコズミンがそこに加わっていたのが面白いところだ。

 映画『あの頃。』というのはどういう物語として描かれているのか? 基本になるストーリーを考えてみよう。
 夢や野心を持っていた劔青年が厳しい現実の前に心が弱り、心が弱った人にありがちなことだがアイドルにはまってしまう。やがてヲタ仲間と出会い、仲間たちとの楽しい時間を通して元気を取り戻す。元気が戻ることで、夢や野心が戻り、色々なバックボーンを持った仲間たちの力をかりながら世間に打ってでて、やがて仲間たちと離れて夢をかなえていく。
 そういう劔青年の成長物語を縦軸に、コズミンというしょうもなくも愛すべき男、変わることのない男の物語が語られる。かって濃密な時間を共に過ごした変わっていく人たちと変わらない男。
 純粋なヲタ活を通した友情の物語というだけであれば、その部分のコントラストがここまで明確に描けなかっただろう。単にアイドルに飽きてヲタ活を辞めていくというストーリーでは寂しすぎる。劔青年が表現者として表に立ちたい人であり、その夢に向かって進んでいくというわかりやすい物語があるから明るさを失わないし、普遍性が生まれたのだと思う。そこには恋愛研究会。という奇妙な運動体の存在は不可欠だが、やっぱりヲタクとしても、グループとしても特殊な部分が大きな団体でもある。そういうわかりにくいものをスパッと切り、わかる人にだけわかるように匂わせを残す(オシリペンペンズのモタコくんの名前が出てくるシーン等)という風にしたのはみごとだと思う。ハロプロ・ハロヲタに関してもそうで、わかりやすいところを絶妙に切り取っている。だから、あの頃のハロヲタの映画でも、あの頃の関西のバンド・サブカルシーンの映画でもなく、誰もが経験したかもしれない「あの頃」の映画になることに成功したのだろう。
 純粋に青春映画としていい映画だと思う。だけど、コズミンのことで泣いてしまったのは何か負けたみたいで本当に腹立たしい。そして、何とも切ない。

 今年も中内さんから年賀状が届きました。

(隔週金曜連載)

写真:映画『あの頃。』ポスタービジュアル 監督:今泉力哉 配給:ファントム・フィルム(C)『あの頃。』製作委員会 2月19日公開、全国で上映中
https://phantom-film.com/anokoro/

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

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