ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第167回　旅館の料理多すぎ炎上

　お盆休みも後半に入ったけど、まだゴミ出し以外は一歩も住居の敷地外に出てません。長めの休みをそんな感じで過ごしてるところに、編集氏から「旅館の夕食が多すぎ炎上でー」という連絡が。ううっ、触りたくない……。しかし、仕事だ。

「子育てとメディアリテラシーをテーマにしたオンラインサロンやアウトドア事業をやっている男性が、「Go To」を利用して温泉旅館に家族で泊った際に、そこの夕食の料理の量が食べきれないくらい多いと感じてTwitterにそれを書いた」という、それだけ聞いたら何故炎上したのかわからないくらいどうでもいい話です。それがなんで炎上してしまったか？

　まず、文章の内容が不快で適当。旅館の客層のメインはシニア層だと検証もなしに決めつけ、それを根拠にシニア層では食べきれないから大量に料理の廃棄が出るに違いない→廃棄前提でやってるという結論に達しているところが、まず突っ込まれるところです。雑すぎるし、旅館に失礼です。
　また、モザイクなしで料理の写真をあげているのですが、この旅館に泊まったことがある人なら簡単に特定できます。また、旅館のホームページに載ってる夕食メニューの写真とほぼ同じ（季節によって細かいメニューは替わってるかもしれない）です。こんなの簡単に特定できるじゃないですか。メディアリテラシー専門の人なら、これぐらいの情報があれば、今のネットであれば簡単に特定できるし、あっというまに情報が拡散するのがわかってないのは変です。前の段落の内容と合わせて考えると、名指しで旅館に対して根拠のない悪口を言ってるようにもとられます。
　旅館のホームページを見ましたが、まず宿をとるときに食事の内容の確認をしなかったのでしょうか？　ホームページ見れば夕食の量なんて簡単にわかります。それで量が多いと思うなら、素泊まりのコースもあるので外で食事をとるなりすればいいし、近隣に飲食店がないなら、旅館と交渉して量を減らしてもらえばよかっただけなのでは？　やれることをやらずにクレームをつけているクレーマーのようにも見えてしまいます。
　あと、この旅館の夕食の量が一般的に見て多すぎるかどうかも疑問というのもあります。品数が多いため皿数が多いので一見量が多いように見えますが、一品一品は量が少なく、男性の写真には写っていないご飯・天ぷら・吸い物を足したとしても、普通に食べられる人は多いのではないでしょうか。温泉旅館の夕食の量として普通かどうかという話以前に、普通の食事量だととる人も多いのでは。自分は少食ではないと主張していましたが、40代前半の男性としては少食なのではないでしょうか。そこも客観性にかけて変です。
　男性の写真には説明なしに二人前の夕食が写されていて、二人前の量が一人前の量であるかのようにもとれるようになっています。単に雑なだけだと思いますが、他の部分で悪意を疑われているために意図的な情報操作ととってる人もいます。
　現在では消されたようですが、この温泉旅館に関するツイートのスレッドに、他のペンションを名指しで絶賛するツイートがぶら下がっていて、一方を下げて一方を持ち上げる不快な感じのマーケティングにとられてしまったのもありますね。これも無邪気にお勧めしただけだと思いますが、名前を出されたペンションも変な話で名前を出された上に炎上マーケティングを依頼した疑いを持たれたのですから、いい迷惑です。
　また、男性が何で自分が批判されているか理解できてないのも、より叩かれる原因にはなっています。配慮のない失礼な文章、ネットリテラシーのなさ、浅はかな思考、振るまいの雑さを批判されているのに対して、男性は旅館の料理のあり方というものに対する問題提起をしただけという趣旨の反論をしているわけですが、全然話が噛み合ってないわけです。これも、わざと論点をズラしているのではなくて、本気で何で怒りをかっているのかわかってないだけだと思います。文脈を読み取る力が弱いのではないでしょうか。

サロン主の勝利宣言

　これだけだと、旅館に泊まり慣れていないのにちゃんと下調べや準備をしないまま自分に不向きなところに泊まって、リテラシーなく旅館を特定させるようなことをして不満を無配慮に言い、適当にエアコンサルタントをやりだして悦に入ってた無自覚で思慮の浅い男性というだけなのですが、ここまで叩かれることになったのは他に理由があります。
　その理由とは、男性が他者を侮辱することで意図的に炎上を繰り返している某有名インフルエンサーの人のオンラインサロンに属していることをプロフィールに書いていたこと。そして、そのインフルエンサーがしゃしゃり出てきたところにあります。
　他人を罵倒したり侮辱するような言動を意図的に繰り返して炎上マーケティングをしてきたサロン主。当然、嫌っている人も多いです。あそこに属してる奴ならわざと不快なことをやってるのに違いないと思われたことにより、男性の思慮が浅く迂闊なだけの言動が悪意ある意図的な言動だと解釈されていき、それが炎上が大きくなったキッカケになったのは間違いないと思います。
　その上にサロン主が首を突っ込んできて、炎上マーケティング大成功と煽ったり、批判者をミジンコよばわりして罵倒したりしだすのですから、火に油を注ぐどころか、火事現場にガソリン缶をボンボン投げ込んでいくかのようなもんです。サロン主が依頼を受けて炎上マーケティングをやったというのは悪質な冗談でしかないと思うし、真面目に受けとる必要はないと思うのですが、信じる人が出てくることで温泉旅館側がそのような事実はないと公式に声明を出さざるを得なかったわけで、旅館側にしてみれば迷惑極まりない話です。この炎上のおかげで旅館の予約が半年先まで埋まったとサロン主が豪語したわけですが、そんな事実もなく。さすがに、これは冗談ではすまないと思うのですが。
　サロン主が大暴れしている一方、発端の男性が友人の弁護士に相談して誹謗中傷には法的措置をとるみたいなことを言い出していたのも趣があります。せっかく、サロン主が意図的にやった炎上のように振る舞って勝利宣言しようとしてるのに、本人がそんなこと言ってるのでは、気のきいたエアコンサル発言で感心されたかったのがリテラシーと思慮のなさで意図せずに炎上してしまって弱ってしまってるというのを告白しているようなもんだと解釈されても仕方がないでしょう。男性が本当にすべきなのは旅館に対して素直に謝罪することなんですが、それをしたくないなら一番いいのはサロン主にのっかることだと思うんですよね。あの界隈で生きていきたいんだったら、現状ではそれしかないですよ。サロン主が頑張って話をかき混ぜつつ「大成功！　我々の強さを思いしったか！」みたいな話にしてるんだから、発端の人間が足を引っ張るようなことをしたらダメなんでは。何年か前に男性が子育てblogみたいなやつで炎上した件も調べてみたんですが、この人は単に無配慮で思慮が浅いだけで炎上マーケティングを狙ってやっていくような人ではないんですよね。炎上をビジネスチャンスに替えるみたいな考えを支持してるのでしょうが、サロン主がやってきたような意図的に炎上を作り出して名を売り人を呼び込む手法を理解できてないのかなとも思います。
　男性のnoteを見に行く人が一時的に増えるようなことがあったとしても、こういう事態を起こす人にメディアリテラシーに関わる仕事を頼む人が増えるとは考えにくいです。サロン主にしても得したかというと、支持層には健在ぶりをアピールできたかもしれませんが、特に新規を自分のコンテンツに引き込むことができたかどうかは疑わしく、「いつものあれね、相手しちゃだめ」という冷ややかな視線が増しているのが確認されます。旅館やペンションは迷惑かけられただけです。誰も特に得はしてないんじゃないですかね。実質的な旨味が減ることで、炎上マーケティング的な手法が淘汰されていけばいいのに。

　この件が大炎上した原因がもう1つあるとするなら、長い休みなのにコロナ禍で遊びに行ったりできずにイライラしながら暇を持てあましていた人が大勢いたということではないでしょうか。楽しいことを他にやれてれば、こんな話に興味を示さなかった人は多いと思います。

イラスト：「旅館料理」作者: imacveryさん　イラストAC提供
（※イメージ画像です。本文中の旅行先ではありません）

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