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サブカルチャー 2019.05.10(金)

シャーロット・ランプリング主演『ともしび』(日本初公開中)その(1):杉作J太狼XE「美しさ勉強講座」連載100

 

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太狼XE先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」

100時限目・シャーロット・ランプリング主演『ともしび』(日本初公開中)その(1)

 松山市の映画館、シネマルナティックでシャーロット・ランプリングの主演映画『ともしび』を見た。

 2017年の作品だが日本公開は今年。公開されるまでに二年かかったが公開されてよかったと言えばよかった。

 当たり前の話だが地球上のあらゆる国や地域で映画は造られている。ものすごい数なわけでそのすべてが日本で公開されるわけではもちろんない。

 ビデオスルー。最近ではDVDスルーと呼ぶべきか。再生されるメディアは流行で次々変わるがなんにせよ映画館で上映されずにパッケージして流通する作品をビデオスルーと呼ぶ。ディスカウントショップやホームセンターに行くとDVD売り場には懐かしい大昔の映画にまぎれてこうした作品がたくさん並んでいる。こうした場所でよく見られるのはアクション、SF、スリラーである。セクシーな作品も多い。要するにかつて20世紀の終わりに俺たちボンクラ軍団が夢中になったりならなかったりしたジャンルの映画で国内で言えば1970年から1980年までの10年間、東映の映画はそれだった。暴力とセックスと恐怖という場所に構えたキャッチャーミットに向かってスタッフ、キャスト、一丸となってそこに作品を投げ込んでいった。東映のその頃の作品ももしかしたら地球上のどこかのホームセンターにずらり並んでいたりするのだろうか。もちろん正規の版権物として。そんなに儲けにはならないかもしれないが、その需要は間違いなくありそうに思うし、既に、ある。アメリカだっただろうか、カナダだっただろうか。いずれにせよアメリカ大陸のどこかで流通する東映作品のオーディオコメンタリーをたしか二本、収録したことがある。

 俺が思うのはもっと小さな国や地域でいいんだね。

 名前も知らない、生きてるあいだには行くことがないであろうよく場所さえわかりにくい国や地域。そうした場所にも映画館やビデオ売り場はきっとあって、映画館は少なくて、よっぽどの作品でなければかからないから、ビデオスルーとなり、早い夕食を外で食べた帰り道、夕食といっしょに飲んだお酒でほてったからだが海風に吹かれて気持ちよく、ふらっと入ったホームセンターで目にとまったショッキングなDVDパッケージ。見たところで列記されたキャスト、スタッフ、製作された国に思い当たることもなかったのではあるが、酔った弾みとたまには映画でも見たいという気持ちからレジに持っていったらレジの親父が、ふーん、みたいな顔をして言った。

「これ、俺も見たけどおもしろいよ」

 家に帰ったら恋人から小包が届いていた。最近、忙しくてあまり会ってない恋人だった。忙しいのは自分でない。彼女だ。もうすぐ誕生日だったのでもしかしたらと包みを開けたら二年ぐらい前にプレゼントした腕時計と、

(さよなら)

 と書かれた紙片だった。

 窓の外はもう真っ暗で、近くの家からテレビの音が聞こえていた。

 遠くで犬が吠えている。

 しばらくそうして立っていたのだ。

 言葉がなかった。

 台所に向かい冷蔵庫を開けたらなにもなかった。冷蔵庫の上に冷えてないビールが一本乗っていた。

 そのビールを飲みながらDVDを見た。

 犯罪を犯した若い男女が主演のアクション映画で、カーチェイス、カークラッシュが延々展開された。パッケージにあったほど派手なシーンはなかったがしつこく展開されるカーチェイスを見ているとこころがからっぽになっていくようだった。悪い気持ちはしなかった。むしろ、それがいい。

 途中からむりやり物語に入ってくる大男がよかった。若い女に逃げられたのだ。残酷でロマンチックで凶暴な男だった。初めて見るこの俳優は本当にこんな人間ではなかろうかと思えた。いや、そんなことはない。彼はきっと俳優なのである。役で汚れた服を着て、顔を汗と脂で黒く光らせてはいるが、ふだんはそこそこの俳優として生活しているのだ。

 俺はどうか。

 俺もそうなのではないか。

 いまの俺は役であり、もうすぐ映画が終わったらまったく違った俺に戻るのではないか。

 映画が終わるころには眠りにおちていた。夜風だけが部屋に忍び込んでいた。パッケージに記された小さな文字の中に、その俳優の名前があったがそれが一致することはないだろう。ちなみに室田日出男である。

(この項、つづく)

<隔週金曜日掲載>

図版◎映画「ともしび」ポスター
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