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サブカルチャー 2019.03.08(金)

新書でました:ロマン優光連載130

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第130回 新書でました

 このたび、コア新書から『90年代サブカルの呪い』という本を出しました。90年代サブカルといっても、悪趣味/鬼畜系サブカルについての言及がほとんどではあります。最近、これらについて感情的なバッシングを見る機会があり、またそれに対する感情的な反発もまた見る機会もあったりするのですが、実際のところ90年代サブカルがどうだったのか自分なりに検証してみた感じの本です。自分で言うのも変なんですが、90年代サブカルを感情的に叩きたい人たちのニーズにも、「90年代サブカル最高!」みたいな人たちのニーズにも応えることがない本にしあがったと思います。どちらからも嫌われる可能性がある本ということですな。
 どんなものにも良いところと悪いところはあるし、時代が進むにつれ感覚は変わるわけで、当時は気にしてなかったようなことでも後から考えるとトンデモないことが起こってたと感じることはあります。そういったものの問題点を感情的に叩いても、特に何も生まれないと思うのです。また、感情的に叩いている人たちの中にはイメージで叩いているだけで、事実に即してない場合があります。何かを批判したいなら、ちゃんと事実を把握した上で批判すべきであり、よくわからないままイメージで批判していると、その事例と関係のないものまで同じように叩かれてしまうことにもなりかねません。殺人者は殺人の罪を追及されるべきだし、詐欺師は詐欺の罪を追及されるべきなのです。詐欺師が殺人の罪で裁かれたりするのはおかしな話でしょう。下手をすると、足を踏んだ人に死刑を求刑するようなことが起こりかねない世の中です。オーバーキルは反発と憎しみを生むだけです。
 事実関係の間違い、解釈の間違いを指摘することは、そこでされている問題提起を否定しようとしているのではないですが、そこを否定されたかのように反応する人がいます。問題提起するなら、ちゃんと事実関係を把握してからしないといけないと思います。どんなに目的が正しかろうと、事実に立脚しない情報をばらまいたり、それに基づいて批判をしていたら、本来は無関係の人に冤罪がかけられるようなことだって起こりかねません。事実に則さない批判は、結局のところは信用をなくし、本来意義深いものだった問題提起すら否定されてしまいかねないのです。
 存在する問題点に目を向けることなく、ひたすら全肯定をする人というのも、事実に立脚してないという点では同じことです。自分の中の好き嫌いの感情を排除した上で検証していかなければ、何も前には進まないのです。

松江哲明の強要についても触れておこう

 松江監督と『童貞。をプロデュース』に関わる事件があったことは記憶に新しいことだと思います。あそこに見られる構造は、サブカル的なものに限ったわけではないのですが、マチズモを否定するような人と認識されている人が、意外にそのまんまマチズモの人だったという点に衝撃があったのだと思います。まあ、ウディ・アレンをはじめとして、マチズモに縁がなさそうな弱者っぽい男性が実際のところはマチズモに溢れているという例はいくらでもあるわけですが。
 あの件でも事実関係の検証をしないままに監督を一方的に擁護した人たちは信頼をいくらか失う結果になりました。その人たちは友人が非難されていることに義憤を感じて庇ってしまっただけで、悪意があったわけではないと思うのです。人間誰だって、身内は信用するし、守りたいと思うものですから。私は出演者の一人である梅澤氏と交流があったり、監督と面識はあるものの好感を特に持っていないため、絶対にバイアスがかかった見方をしてしまうと思ったので、即座に反応することはしないようにしていました。ああいう問題について、事実関係を把握できてない時に好き嫌いにひっぱられて発言することは、良くないことだと思ったからです。
 今でも松江監督が悪人だったとは思わないです。ただ、非対称性のある人間関係というものに対して色々と無自覚だっただけだとは思います。弁護士をちらつかせるようなやり方は完全に悪手だったとは思いますが。二人の関係性の中で起こったことに関しては、結局はわからないこともあるので外野が口を差し挟めない部分はあるとは思うのですが、関係性の中で向き合って解決しようとするのではなく、しれっと圧力をかけるようなやり方をしたことは、良くないことだったと思います。
 それはさておき、検証することなく感情のおもむくままに何かに言及することは、それが否定であれ肯定であれ、非常によろしくないことです。人間、完全に好き嫌いの感情から離れることはできないものですが、できるだけそれを抑え込んで検証しないと、色々と見えてこないと思うのです。それがどこまでできたかどうかはわかりませんが、『90年代サブカルの呪い』という本は、私が好きだった人たち嫌いだった人たちに関して、そういう風にして考えてみた本です。

(隔週金曜連載)

写真:コア新書_027「90年代サブカルの呪い」/ロマン優光(発売:コアマガジン)全国書店・ネット書店で発売中

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』/PUNKUBOI(Less Than TV)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/

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