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サブカルチャー 2018.10.19(金)

地下アイドルとは何なんだろう:ロマン優光連載120

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第120回 地下アイドルとは何なんだろう

 ライブや音源製作を中心に活動するロックバンドの世界は「芸能界」ではない。どんなにライブで動員があって、音源が売れていようと、芸能界のお仕事をして芸能人として認知されない限りは、バンドマンは「芸能人」ではない。すごく、大雑把に言うと、芸能事務所に所属したり、あるいは事務所が芸能事務所としての機能を持つことで、「芸能界」の仕事(現状ではテレビの音楽番組以外の番組に出演することと言ってもいいかもしれない)をするようになった人は芸能人と言ってもいいだろうが、基本的にはバンドの世界は「芸能界」ではない。おなじような感じで演劇界は「芸能界」とは違うだろうし、ロックバンドに限らずミュージシャンは必ずしも芸能人ではない。
 地下アイドルの世界も同じだ。地下アイドルの世界は芸事や表現の場であっても「芸能界」ではない。ライブハウスでのライブ活動をどんなにがんばっても、テレビで活躍するトップアイドルのようになれる可能性はゼロではないが、ほとんどないと思う。小池美由のような特異な才能を見いだされた例外的なケースを除けば、地下での活動から一足飛びに「芸能界」のエリアに到達した人はいないだろう。ローカルアイドル、地下アイドルとして活動した後に、そこで得たスキルを活かすことで地上のアイドルグループに加入することができる場合もあるだろうから、地下アイドルとしての活動が「芸能界」と完全に無縁というわけではないだろうが、地上のアイドルグループに所属したところで、そこから「誰もが知っているようなアイドル」になるための長い闘いは続く。とにかく言えることは、地下アイドルとしてのライブ活動は直接的に芸能の世界、テレビの世界と繋がってはいないということだ。
 大手の芸能事務所が運営するアイドルグループの中にも実質活動規模や領域が地下アイドルといって差し支えないグループもある。しかし、大手事務所たちの子たちは先の見えないライブ活動をしながらも、事務所が別のジャンルでチャンスを与えてくれることを希望に雌伏の時を過ごすことができる。芸能事務所に属することはそういうことだ。たとえ、その可能性が低いとしても、そういった道筋が限りなくゼロに近い地下アイドル運営事務所に属するよりは希望があるだろう。

それでもアイドルをやりたいからやる

 地下アイドルの報酬が安すぎるという話がある。本来、それについては地下アイドルの闇とかいう話とはまた別の問題だ。ギャラが安いというのは地上のアイドルだって同じことだ。オリコン一位をとったアイドルの当時の給料が一桁万円、しかも中盤くらいだったという話がある。芸能事務所に属する芸能人の多くは個人事業主として事務所と契約している。所謂雇用関係ではなく、非常に単純にいうなら委託関係であり出来高制だ。先行投資額を回収し利益があがるまではギャラは抑えられる。地下アイドルの世界もそこは同じだ。 約束していた話と待遇が違う、法外な罰金をちらつかせて圧力を加えるなどのパワハラ、セクハラといった問題とは違う話であるのは 、注意すべき点であると思う。
 現行の地下アイドル運営の多くが抱えている問題の一つとして、地下アイドルの世界は「芸能界」ではないのに、まるで「芸能界」であるかのように装って、未成年者や世間知らずな若者を実質騙しているところにある。様々な運営による悪質な行為が明らかになっている現状の中で、特に問題がないようなグループもいっしょくたに考えられ、悪貨に良貨が駆逐されるというか、糞味噌一緒に流される可能性のある状況だ。地下アイドルの世界が存続していくために必要なことは、女の子たちや親に全て正直に説明した上で「それでもやりますか?」というやり方しかないだろう。お互いに納得し、意識を共有した上でやっていくしかない。
 地下アイドルの場が、売れようが売れまいが「それでもアイドルをやりたいからやる人」のために残っていて欲しいという想いがある。「色んな地上のアイドルのオーディションに落ちたけど、それでもアイドルをやりたい女の子」「何か面白いことやりたくて、それには地下アイドルが一番てっとりばやい場所だった女の子」「ライブで見た地下アイドルに憧れて、あの子みたいになりたいと思った女の子」「アイドルという形式で何か面白いことをしたい運営」「理想のアイドルをつくりたい運営」といった人々が、お互いに条件について納得した上で「それでもやりたいからやる」という場であるべきなのだと思う。
 小劇場の劇団やインディーズのバンドのように、地下アイドルも、運営もアイドルも生活費をアイドル以外のもので確保しながら活動し、活動によって得た利益は経費を含めて納得できる配分を行う。そういう方法が、これから始める人たち、現状でほとんど上向きの様子が見られない人たちにとってはいいことなのだと思う。メンバーが学生であれば、活動が学業に過度な負担をかけるようなことは当然してはダメだろう。地下アイドルの今までの一般的な問題(パワハラ、セクハラなどは本当に問題外でしかない、ただの犯罪行為なので、別に考えるべきだろう)は小劇団やインディーズのバンドと違って、年少者が現状を理解しないまま、説明されないまま、やらされていることにあったと思う。そこを変えないことには社会の流れの中で消えていくことになるだろう。
 そうやって続けていくうちに売れていくのが理想だ。しかし、たとえ結果として売れなかったとしても本人たちの気持ちやファンの想いは否定されるものではない。好きだから、どうしてもやりたい。好きだから、たとえ世間がどう判断しようと見ていきたい。そういう気持ちは誰からも否定される筋合いがないものだ。最終的に売れることだけが別に正解というわけではないのだから。そして、アイドルとしての活動を終わった時に、できるだけ多くの女の子が「色々大変なことがあったけれど、楽しかった。私は地下アイドルが好きだ」と言って振り返れるようになってほしい。
凪原と中村ちゃんのツイートを見ながら、そう思った。
(派生するテーマも色々あるのだけど、本稿では触れきれなかったので、別の機会があれば書いていきたいと思います)

(隔週金曜連載)

図版出典:サシアゲル

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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

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