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    実話BUNKAタブー2020年1月号

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サブカルチャー 2018.04.06(金)

ビートたけし騒動について考えてみた:ロマン優光連載106

 


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第106回 ビートたけし騒動について考えてみた

 ビートたけし独立に絡む一連の騒動。日々情報が錯綜している状態であり、現時点では、たけし軍団の声明文にしろ、オフィス北野・森社長の反論にしろ、わかったようなわからないような、すっきりしないものでしかない。軍団側からの再反論が出るのか、森社長の反論がさらに続くのか、北野家側からの主張が出てくるのか、このまま事実関係があやふやなままに手打ちになるのかはわからないが、この情報戦で得をした人間は誰もいないように見える。
 たとえ軍団側の主張が正しく森社長に重大な非があったとしても、それは「ビートたけしが愛人に洗脳されている」という一部報道の否定にはなるわけではない。「森社長は背任行為を働いていたし、愛人が裏で糸を引いているのも事実」という想定は十分成り立つのだ。
 ここで私がしているのは真実がどうであるかという話ではない。世間にどういう印象を与えてしまったかという話だ。個人的な考えとしては、真実を100%公開するには、双方が表に出すことができない話を抱えすぎているため、「これが真実です」というものが出てきて収束するという流れはないような気がしている。
 端から見れば、たけし軍団というのは、この件において最も信頼できない語り手である。なぜなら、彼らのたけしに対する忠誠は絶対のものだからだ。それは美徳であるのだけど、師匠のためならどんな泥でもすする、師匠の言葉は絶対であるような人たちが、師匠を守るためにする発言が100%の真実であるかどうかは疑念を持って見られるのは仕方がないことだ。
 森社長についてもそうだ。彼が本当にそのような背任行為を働くような人物だとしたら、自分を守るために嘘をつくことだろう。しかし、彼が実はそういう人物ではなく、かつてのイメージ通りにビートたけしに尽くしてきた人間だとするならば、たけしに不利になるような大きな事実があった場合に、たとえそれが自分に有利になるような事実であったとしても、たけしのためにそれを表に出すことはないだろう。どっちにしても、100%の真実を出してくることはないように感じられる。
 たけしサイドの口からも、森社長サイドの口からも語られることがないだろう部分については、リテラの記事が触れていたわけだが、リテラというのは『噂の真相』の残党によって運営されているという噂がある。そのリテラの記事も、かっての『噂の真相』の記事を踏まえた上で書かれたもので、普段のネット情報の二次使用みたいなまとめ記事に比べれば信憑性が高そうに見える。しかし、『噂の真相』という雑誌は「これは噂ですよ!」というていで、メジャーなメディアがしがらみから報道できないような真実を暴露していくようなゲリラ的な手法を使った雑誌だったのだが、本当に噂レベルの悪質な与太話を載せている雑誌でもあったわけで、当然それが真実とは言い切れない。他のメディアによる報道にしても、現状で何が出てきたとしても、それぞれが登場人物の誰かに忖度している疑いが拭えない状況だ。藪の中である。
 何が真実であるかはっきりとしない状態の中で残るのは印象でしかない。しかも人間がよく覚えているのは悪い印象の方である。「森社長は銭ゲバの背徳漢」「軍団は自分たちの無能を棚にあげ背広組に金銭的に嫉妬しただけの与太者集団」「愛人とされている女性は金銭目的でたけしに近づいて操っている」「たけしは愛人に骨抜きにされ、自分は矢面にたたずに軍団を使って情報操作をしようとしている卑怯者」等々。厳密に考えれば相互に矛盾しているようなそれぞれの印象が深く考察されないまま残っていき、このままでは悪評だけが世の中に印象づけられる結果にしかならないおそれがある。軍団の声明文が「たけしは愛人に洗脳されている」という報道に対しての反論であり火消しだったとしたなら、失敗したと言えるだろう。あのような形で事態を大きくしてしまうことで、逆に印象づけてしまったのだから。
 今回のことで一番印象的に損をしてしまったのは水道橋博士ではないだろうか。フライデー事件に参加できなかったことが、彼にとって大きな悔いになっていたのは間違いのないことだろう。今回はそれを取り返しにいくかのごとく、たけしを守るために果敢に動いているのは窺える。しかし、それがあまりにも過剰なので、ヒロイズムにも酔っているようにも見えなくはないし、師匠を利用して金を稼ごうとしているように勘繰る向きも出てくる。何をやってもゲスは勘繰るものだけど、博士は基本的に不器用で悪印象を抱かれやすい人だ。今回も、Twitter上で今回のことに絡めて、吉田豪やタイタン社長・太田光代を揶揄するように見えるツイートをしたり、爆笑問題・太田光とナインティナイン・岡村隆史との間に起こした騒動について「今回の件に比べたらママゴト」と評したりしているわけだが、これらのことをわざわざ言う意味がわからない。師匠の大変な時に、それに絡めて他人への嫌みやいやがらせのように取られるようなことや言い訳めいたことを言うのは、「ちょっと人格的にどうか?」と疑われかねないわけで、普通に考えて得策ではない。「ただのギャグ」だと本人は言うかもしれないし、それは本当で何の悪意もないのかもしれない。ただ、それは心の中の出来事であって真実は本人しかわからないことであり、たとえ本人に取材して、そういう答えが返ってきても、そうは取ってくれない人も多いだろう。「師匠の大事な時に、それを利用して意趣返しをするとは、本当に師匠を大事に思っているかも疑わしい」と思われかねない。水道橋博士の師匠・ビートたけしに対する想いは疑う余地もない。それが揶揄されるようなことを自ら招いているのは悲しい話である。
 軍団は芸人・ビートたけしを愛し、森社長は世界のキタノを愛していた。そこは動かない真実だとは思う。

(隔週金曜連載)

写真:ビートたけし(2017年12月28日日刊スポーツ大賞にて)

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