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グラビアギャラリー
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サブカルチャー 2017.10.20(金)

松本人志はつまらなくなったか:ロマン優光連載95

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第95回 松本人志はつまらなくなったか

 松本人志さんに対して「つまらない」ということが、最近というか、ここ何年か言われています。90年代のお笑い界を牽引した功労者の一人であり、その後の世間の笑いの感覚を変えたと評されてきたような松本さんが、そのような批判めいた意見にさらされることに何故なってしまったのでしょう? そして、なんで私がこんなことを考えなければならないのでしょう? それはもちろん編集氏から依頼があったからなわけです。「つまらない」と言われることに関しては、受け手の感性の問題といってしまえば、それまでの話なのですが、そんなことを言ってしまったら何の話もできないので、とにかく考えてみたいとおもいます。だから、ここで考えるのは「本当に松本人志はつまらないのか」ということではなく、「なぜ、つまらないと言われるのか」ということです。
 すごく一般的な話になるのですが、加齢により松本さんのお笑い的な反射神経が鈍くなったというのは間違いなく一つの原因にあげられるでしょう。これは松本さんの問題だけではなくて、多くの芸人さんにあてはまることだと思います。昔から多くの芸人さんが役者に転向したり、司会業メインにシフトしていくのには、お笑い芸人という立場にコンプレックスがあったという話ではなくて、反射神経や体力の衰えという原因があったのではないでしょうか。年を重ねることで、テレビのバラエティのようなトークの中でのアドリブを重視される場で、若い頃とは同じようなタイミングで反応できなくなっていくのは仕方のないことなのです。同じ言葉を使っても、タイミングが変わってしまえば面白さもまた変わってしまうものです。言葉もスムーズに出てこないし、言葉の選択も以前より幅が狭まってくる。
  一つの形式を積み重ねることで円熟味が増し、加齢と共に以前にはなかった面白さが年月と共に加わってくる場合もあります。いや、芸というものは本来がそういう風なものなのかもしれません。しかし、ダウンタウンの、松本さんの笑いというものは、そういう形式からいかに外れていくかということで成り立っていたものだと私は思ってました。私に限らず、90年代に松本さんの笑いに熱狂していた人の多くはそう感じていたのではないでしょうか? そういった視点から見てしまうと、松本さんが円熟味を増していくことで面白さを得るという方向はあり得ないことでしょう。常に形式の外にいることを期待されていた人物だからです。ダウンタウンとして司会の立場でいる時も、本来の司会としての仕事を務めているのは相方の浜田雅功さんであり、松本さんは隙があれば外部から自分のセンスをぶちこんでくるというようなスタンスをとっていて、予定調和の外にいるように見えていたものです。

お笑いは生もの

 コントにしろ、トークにしろ、かつてのダウンタウンの笑いというものは非常に斬新なものがありました。本当に新しいものとして受け取られていたし、現在のお笑いの雛型の一つになったのは間違いないと思います。現代のお笑いのうちの何割かは、松本さんの影響下にあり、そこを基本に各人がそれぞれ発展させていったものなわけですが、逆にいうとあれだけ新しかった松本さんの笑いに似たものがあちこちに転がっている状態になってしまったのです。そうなってしまうと、昔から松本さんの笑いに触れていた人ならともかく、今のお笑いの現状の中で松本さんに初めて触れる人にとっては、そのオリジナリティが分かりにくくなってしまいます。逆にそこから派生してきた後進の芸人さんのネタの方がそれぞれがニッチな方向に発展させてたり、より大衆向けに振っていたり、様々な受け手の嗜好に対して痒い所に手が届くようになっているわけで、そちらの方が人気を得やすいと思うのです。人気を得やすいといっても、それぞれの嗜好にあわせて色んな芸人さんがチョイスされていく細分化された人気であって、かってのダウンタウンのような広い範囲で大きな人気を得るということではないのですが。なんというか、ロックでいうところのビートルズみたいな立場になってしまっているのです。ビートルズ的なものの色んな断片が普通にあちこちに存在してしまっているため、最初からそれが存在していた世代には逆に彼らの凄さが伝わらないという現象、それに似たものが他のジャンルにも起こっていると思うのです。ダウンタウンに限らず、ツービートもそういう感じだと思います。
 音楽ですと音源というものを作品として残すことができ、それにしっかりと触れることで過去の人々の評価をすることができます。しかし、お笑いというのは、映像が残されていたとしても、あくまで記録にしかなってないように思うのです。それぐらい、お笑いというのは生ものというか、音楽以上にそれを掘り下げていくような強固な意志をもった人以外にとっては、同時代でないとわからなくなってしまうものではないでしょうか? よほどのマニアでない限り、ノスタルジックな気分を交えずに過去のお笑いの動画を見たりできないでしょう。過去の偉業がある人に対しては、人は下駄をはかせた状態で見るものですが、偉業を理解してもらえてない場合は逆に必要以上に低く評価されることもあるのではないでしょうか。松本さんがギャグを言うと、共演している芸人さんたちは当然のように笑います。今、松本さんと共演しているような芸人さんはリアルタイムでダウンタウンの洗礼を受けている年代の人が多く、中には役割として笑ってる人もいる可能性もあるかもしれませんが、若い頃にダウンタウンの笑いによって形成された回路によって普通に笑っている人も多いと思うのです。しかし、現状の地上波での松本さんのことしか頭にない人の中には、周囲の芸人さんが気を使って笑ってるように考えてしまう人もいるでしょう。今の松本さんは大きな権力を持っているわけで、周りが後難を恐れて笑わざるをえない状態にあるのではないかと考えてしまう人もいるでしょう。そういう、かんばしくない印象が、松本さんをよりつまらなく感じさせている可能性も強いです。

 一番目の理由は「かつて松本人志の笑いが好きだった人」の、二番目の理由は「過去の松本人志を知らない人」の、松本さんをつまらないと感じる可能性がある要素として考えたものです。他には、マッチョになって威圧感が全面的に出てきたので面白くないというのも考えられます。昔から知ってる人にとっても、今しか知らない人にとっても影響がある問題だと思います。変な話なんですけど、松本さんをつまらないとネットに書き込んでいる人の大半が、別に松本さんの今の仕事を熱心にフォローしているような人ではないと思います。大半が地上波に出てる松本さんをチラ見しただけで、熱心なお笑い好きの人の中の「松本さんがつまらない」と感じてる人がネットに書きこんだ文章を読んで、なんとなく賛同しているだけの人が多いと思うのです。なぜ、そんなことが起こるかというと、松本さんに対して良い印象を持ってない人たちが、ネガティブな評価を見て乗っかっていくからだと思います。なんというか、熱心なお笑いマニアでもなんでもないような人、たいしてお笑いに興味がない人が、テレビをチラ見したくらいで「つまらない」と言えるほど今の松本人志という人がつまらないとは思えないのです。過去と比較した場合、以前よりはつまらなくなったというのなら、実際そうではないかと思います。それは仕方ないことです。しかし、全面的に「つまらない」と言い切れるほど、つまらないわけではないと思うのです。松本さんの衰えを感じているお笑い好きの人の意見に、昔から松本さんが嫌いだった人、よくは知らないけど悪い印象を持ってる若い世代の人、最近の社会的な事柄に対する発言について反感を持っているような人が乗っかっていってるだけだと思うのです。それによって必要以上に「つまらない」と言われている感じになっているのではないでしょうか。
 松本さんの印象を悪くさせている大きな原因の一つとして『ワイドナショー』があげられると思いますが、それについては別の機会に。

(隔週金曜連載)

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。

おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』/PUNKUBOI(Less Than TV)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/

連載バックナンバーはこちら
https://mensbucchi.com/rensai-bn/20160322204147 (コピペして検索窓に)


 


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