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    ●『ロマン優光の好かれない力』連載中 ゆたぼん問題で、誰が一番悪いか

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サブカルチャー 2017.10.06(金)

保毛尾田保毛男問題:ロマン優光連載94

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第94回 保毛尾田保毛男問題

 先月の末に放送されたフジテレビの『とんねるずのみなさんのおかげでした』の30周年記念スペシャル番組に28年ぶりに登場した保毛尾田保毛男というキャラクターが世間の論議をよびました。
 石橋貴明さんが扮する保毛尾田保毛男は80年代の一般層の考えるゲイのイメージをカリカチュアライズしたキャラクターであり、当時はたいへん人気のあるキャラクターでした。しかし、時代によるLGBTに対する理解や意識の変化や人権感覚の変化によって、現代では普通に考えてアウトなキャラクターだと思われます。
 表面的な問題でいえば、時代による意識の変化に対して非常に鈍感なフジテレビの感覚のマズさがあげられると思います。さすがにアンテナが低すぎませんか。「差別するつもりはなかった」というのは本音でしょう。あのキャラクターの存在で傷ついてきたゲイの人たちがいるということが全然わかってなかったのでしょうから、差別するもなにもなかったでしょう。しかし、さすがにメディアの人間としてリテラシーが低すぎるのでは。私は、全ての人間が心の底から全く何に対しても差別意識のない人権意識の高い高潔な人間でいられるとは思わないし、そうあるべきだとは思いませんけど、少なくとも他人に不快感を与えないように公の場でそういった意識を出すべきではないという常識は必要だと思いますし、メディアであれば、差別意識の云々ではなく、特定の表現で傷つけられたと感じる当事者が存在することを認識して色々と発信するべきだとは思います。とはいえ、こういったポリティカル・コレクトネスといわれるような概念が日本で浸透してきたのは、この数年のことなので、メディアの中に、こういった意識の変化が認識できてないところがあるのは仕方ないことかもしれません。なにしろ、今は過渡期なのですから。日本のテレビメディアが、人権団体の抗議をさけるために言葉狩りのようなことをして表面だけ体裁を整えて、問題の本質に触れないまま、「何が本当に問題なのか? 何が本当に相手を不快にさせているのか?」ということがわからずにきた結果が如実に現れた話ではあると思います。

差別を糾弾する差別的な人々

 こういった事柄が話題になると「行き過ぎたポリコレが息苦しい」という話はよく出ます。それは本当にそうなのでしょうか? 欧米におけるポリティカル・コレクトネスのあり方は、ここまで縛ってしまうとさすがにやりすぎなのではと、個人的に感じてしまう部分があります。そういった部分の反動がトランプ支持に繋がっていったのではないかという話はよく出ます。しかし、日本では行き過ぎたポリコレもなにも、ポリティカル・コレクトネスの概念が社会に浸透、定着してるわけでは全然ないわけです。逆に、昔だったら人前でそういうことを言うべきではないと常識で考えられていたようなこと、そういうことを人前で表明することは下劣な行為であると考えられていたようなことが、なし崩し的にネットという媒介を通して過剰に発言され、それが日常にフィードバックされているような状態なわけで、ポリコレ云々以前の状況であると思うのです。その一方で、欧米のポリティカル・コレクトネスに触発された人が増加したり、マイノリティの声をあげる力が高まってきてたりしているわけで、その差が激しく開いてるのですよね。「建前」という是々非々のある日本の慣習の良い部分が失われてしまった一方で、それに代わるものが何もないという状況というか。
 こういった論争みたいなものはインターネット上で起こりがちなのですが、この件もそういう時に起こりがちな「自分の意見に反する陣営に属してる特定の異常な言動をする人物を見つけ、全体でそうであるかのように解釈して攻撃する。」という問題に飲み込まれてしまった部分はあったのではないかと思います。相手に理解して欲しい、理解してもらって改めて欲しいというのが本題なのに、過剰な言葉で状況に即していない必要以上の糾弾をする少数の人たちと、それに対して「奴らは言論統制をしようとしているファシストだ!」と言い出すような人たちだけが悪目立ちして、本当に大事な話がどこかにいっているような気がするのです。ネットで話題になるということは、基本的にそういうことではあるのですが。
 何かに対する差別を問題視している人が他の事象に対して差別意識を発揮している場合があります。特に差別意識はなくても、無意識のうちにうちにやってしまってることも。無意識のうちに他者に対して差別的な言動をしてしまう可能性が自分自身の中にあるということを自覚して、自分を絶対的な正義と過信することなく、意図的に差別意識をもとに攻撃しているような案件以外には極端な言葉や態度で糾弾しないことが大切だと思います。そういう態度をとられると、たいていの人間は、相手の主張に耳を傾けるより、相手の威圧的な態度に拒否感を覚えるものだから。それによって反感を集めることは得策ではないと思います。相手によって、使い分けることは必要なのでは。意識的に自分の差別意識を肯定して不快な発言をしている人たちの中には、言葉使いを丁寧にすることで、攻撃的でないように見せかけているという手法を使っている人もいます。世間というのは、話の本質よりも表面上の態度で判断する人が多いのです。そういう相手に対して、激しい態度で糾弾したところで、同じ姿勢の人たちの溜飲を下げることにはなっても、何の変化も起こらないのではないでしょうか。だからこそ、上手いやり方で闘っていくことが必要なのだと思います。
 この件で改めて考えさせられたのが、「お笑い」というものと差別の関係性です。差異を取り上げて笑いにするというのが笑いの1つの大きな要素である以上、笑いと差別は関係性が強いものです。また、それとは別に、ビートたけしの「人間の持っている醜い欲望、抑制されなければならない心、いわば本音の部分」をあえて見せることで「人間は醜い。たいしたものじゃない。みんなクズだよ。」と提示するブラック・ユーモアに溢れた笑いが、「それは本来醜くて滑稽でいけないことなんだよ」という大切な認識が欠けた状態で、「本音を垂れ流せばいい」みたいな浅はかな解釈で世間に広がっていったのではないかということに対しても考えてしまいます。それについては別の機会に書いてみたいと思います。

写真:フジテレビ (画像提供:www.shihei.com/free01/)

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