
松方弘樹から男を学ぶ・その1:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載41

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
41時限目・松方弘樹から男を学ぶ・その1
松方弘樹さんが亡くなった。
『脱獄広島殺人囚』『暴動島根刑務所』『強盗放火殺人囚』この三本の刑務所映画は『仁義なき戦い』の大ヒットで訪れた実録やくざ映画ブームの真っただ中に製作された。
人間、折れたらおしまいである。
生活も仕事も恋愛も闘病もプロ野球ペナントレースも競馬の馬も闘鶏の鶏もとにかく折れたらおしまいだ。
最近は折れるもなにもすべて外野から観戦してなにごとにも参加しない評論家体質の人間も多いが彼ら彼女らは折れることがない。そんな人から見たら松方弘樹さんはどう見えるのだろう。懲りないおじさんだろうか。タフなおじさんだろうか。まあいい。無視して進めよう。
元来、役者と演ずる役柄の関係は近からず遠からず。それが望ましいとされるが俺たちの城、東映は違った。
チンピラ役の川谷拓三さんや安藤昇役の安藤昇さんをはじめシンクロしてなんぼ。その役者の骨の髄から人生の酸いも甘いもが滲みだして映画となり味になる。役者だけではない。脚本家も監督も。女を描くには女を抱き、男を描くには男で生きて男で死ぬ。徹底しているようでもあるが近道でも遠回りでもない。その道しかないのだ。
そして松方さんは松方さんだった。
なにを演じてもそこに松方さんの味が出た。
松方さんは折れなかった。
なにを演じても折れなかった。
冒頭の刑務所シリーズ。このシリーズを上回るバイタリティ溢れる映画を俺は知らない。知らないというか超ダントツだ。刑務所に放り込まれても放り込まれても松方さんはゼロコンマ1秒も反省しなかった。反省どころか凹まなかった。ああ、つかまった、もう終わりだ、とはならなかった。脱獄脱獄また脱獄。死ぬ思いで脱獄しても溺れている子供を助けて警察に表彰状もらいにいってつかまったりしていた。そしてまた脱獄。
ほめられたことではないだろうが、映画はそれでいいのだから。世の中にはいろんな映画があってそれぞれいろんな人たちがいろんな思惑で見ている。デートで女性の手を握るために見る映画もあるだろう。あっていい。『広島仁義人質奪回作戦』や『ダーティハリー』でないことは間違いない。
松方さんの映画はつらいときに見た。
いい時代が来ていてDVDやビデオでいつでも見ることができる。
もう折れてしまいそうなとき。仕事。生活。もろもろ。諸事全般。折れてしまいそうなときに松方さんの刑務所映画で乗り越えてきた。
『仁義と抗争』、『暴力金脈』、『お祭り野郎』、『テキヤの石松』。1970年代の松方さんの映画は全部元気が出る。絶対に折れないからだ。
不屈の闘志というのともすこし違う。すこしだが決定的に違う。『野性の証明』の撮影中には失神、失禁している。この件だけは話してもらうために四回か五回、しつこく問い返した。不屈というのとは違う。人間味たっぷりである。五木ひろしさんとは同時期に住み込みで歌手の修業もしている。そして挫折している。とても一回では書ききれない。次回に続けたい。が、なんでもかんでもは記せない。男同士の仁義というのはある。
松方さんの訃報を聞いたとき、俺は夕陽で赤く染まる部屋で映画『チョコレートデリンジャー』の編集作業をしていた。涙がこぼれた。初対面の俺の頬を松方さんはにやりと笑いながら指で突っついた。そして最近(下半身の)元気がないと言ったらなに言ってるんだ、まだまだこれからがいちばんいいときだと股間をタッチしてくれた。俺はもうしばらくなにもないんだよなー、と笑っていた。
この原稿がアップされる翌日、ロマン優光と四国松山で男の生き方を提示します。俺もロマンも男として生きて男として死ぬそのために、たいせつなたくさんのものは捨てているので。覚悟はしています。松山の人はもちろん、中四国方面のかたはぜひ。
この項、つづく。
<隔週金曜連載>
撮影場所◎阿佐ヶ谷
お知らせ
「ジャスティス映画学園 Vol.10」
2017年1月28日(土)20:30より
会場 シネマルナティック(愛媛県松山市湊町3-1-9マツゲキビル2F)
料金 2000円
出演 杉作J太郎/ロマン優光/アパッチ/男の墓場プロダクションの坂本
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【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:「不良番長 浪漫アルバム」(徳間書店)※2017年2月25日発売予定
http://books.rakuten.co.jp/rb/14632710/
おすすめ本:Jさん&豪さんの世相を斬る!(残侠風雲編)@ロフトプラスワン(ロフトブックス)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13832873/
連載バックナンバーはこちら→
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