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サブカルチャー 2016.05.14(土)

ベッキーの復帰劇:ロマン優光連載57

 

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第57回 ベッキーの復帰劇

 金スマにおけるベッキー復帰劇。結論から言うと、ベッキーの覚悟と中居正広の度量と力量の程がうかがわれるハードな「エンターテイメント」だった。

 そもそもベッキーは誰に謝罪しなければならないのだろう? まず、自分の行動で傷つけてしまった不倫相手(川谷と書くと川谷拓三さんのことを思い出して、なんかタクボンのことを悪く言ってるような気分になるので名前はあまり書きたくない。)の妻に対して。そして、この件で迷惑をかけてしまったクライアントや仕事の仲間。心配をかけてしまった家族やリアルな友人。それぞれ謝る理由を違うが、謝らなければならないのはこれぐらいではないのだろうか。本来はテレビの番組内で世間という無関係な不特定多数に向けて謝罪しなければならない理由があるわけではない。
 しかし、芸能人というのは人気商売。たとえどんなにアンチがいようとも興行の動員や音源の売り上げ等で直接収入が得られる「実演」がメインの人と違い、スポンサーやCMのクライアントに気に入られることで仕事を取ってきていたベッキーのようなタイプのテレビタレントにとっては好感度というのは非常に大きな問題だ。今回のことで声高にベッキーを批判してくる人たちが多く存在するように見えている以上、それに対する対処として謝罪をしなければならない。それが本当に正しいことなのかどうかは別として。

中居くんの話術が素晴らしかった

 金スマという番組は、過去のやしきたかじん後妻、清原などが扱われた回の印象から「露骨に事実を伏せたり、ねじ曲げてでも、特集の主役を持ち上げて不自然な感動話に持って行く番組」という印象が個人的には強い。だから、そういう展開を予測していたのだけど、それは裏切られることになった。中居くんによるベッキーに対する問いかけは思いの他に厳しく映るものだった。過剰な演出が抑えられた空間で中居くんが淡々とベッキーに問いかけを繰り返し、引きつり気味の表情のベッキーが返していく様は緊張感があり、そんな中で要所要所でさりげないフォローを入れたり、方向性をコントロールしていく中居くんの話術の研ぎ澄まされた感じは凄まじいものがあった。放送作家の手が入っていたのかもしれないが、それを差し引いても良い仕事だったと思う。
 謝罪、謝罪と言ってもただ謝ればいいというわけではない。不適切な謝罪をしたために、かえって反感を買うことになることもある。ここでベッキーが大袈裟に号泣しながら曖昧な謝罪をし、周りが泣きながら慰めるみたいな普段の金スマ臭い演出だったら、大惨事だっただろう。かといって、厳しく責め立てればいいというわけではない。制裁の色が濃すぎると見てる方は引いてしまうし、責める側にあたる人間が嫌な奴に見えてしまい非常に損をしてしまう。SMAP独立騒動の時のスマスマがいい例だ。あれは本気の制裁だったわけだけど。
 的確にベッキーの問題点を指摘しながら追い込みすぎず、彼女を追及をしているようでいて男性の不実さが浮かび上がるように巧妙に道筋をコントロールし、要所でベッキーに対する優しさを匂わすことで自身のイメージを守る(いや、イメージアップすらはかっていたかも)ことにも成功する。自身が制裁としての謝罪会見で屈辱を味わわされ、未だに大変な状況にあるであろう中居正広という男が、全く得しないばかりか、自分が悪く見えるリスクの方が高い中で、見事にベッキーの復帰の道筋を作り上げた姿は人間としての度量を感じさせるのに充分だった。
 ベッキーにしてみれば公開リンチの場に出て行くのは本当につらいものがあったことだろう。たとえ、それが自分のためにやってくれてることだとわかっていても、言葉は刺されば痛いし、人前で責められる屈辱は計り知れないものがある。それを乗り切るためには、よほどの覚悟と信頼関係が必要だったことだろう。かって大日本プロレスで見た、二階から落ちてくる葛西純とそれを机の上で縛られて待つ伊東竜二の姿のような。
 そして、二人は成功した。ベッキーのことを執拗に「嘘臭い。あざとい」と叩き続ける人間はいるだろうが、そういう人間はどうしたって叩いてくるもんだからほっとけばいい。見てない人はどっちみち興味ないんだから、これまたほっとけばいいのだ。この復帰劇でベッキーに対して同情的な見方をする人の数は圧倒的に増えただろう。そもそも、多くの人にとって、直接知り合いでもない他人の不倫話なんて本当はどうでもいいわけだから、気分次第で評価なんかコロコロ変わる。同情が大勢になれば、復帰後の仕事もやりやすいはず。現場でベッキーが与えられた仕事がこなせるがどうかはまた別の話だが。

 編集氏からの要望で気乗りしないまま見た金スマのベッキー復帰劇。気分の悪い公開リンチか、お涙頂戴のくだらない茶番劇しか想定してなかった自分を待ってたのは、プロの仕事だった。くだらない騒動の中で、そのくだらなさに抗うようなプロの仕事を見れて少し良かったかなと思う。

<隔週金曜連載>(※今回は都合により土曜公開)

写真:2009年9月3日に開催された第6回 The Beauty Week Awardの一コマ(イメージ)

【ロマン優光:プロフィール】

ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。少女閣下のインターナショナルの里咲りさに夢中らしい。

おすすめ書籍:「日本人の99.9%はバカ」/ロマン優光(コア新書)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/

おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』/PUNKUBOI(Less Than TV)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/

連載バックナンバーはこちら
http://mensbucchi.com/rensai-bn/20160322204147 (コピペして検索窓に)


 


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