
他人がうらやましいです:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載20

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
20時限目・他人がうらやましいです
《すぐに周囲のひとをうらやましくなります。自分がみじめでしかたありません。いっそ誰もいないところに引っ越したいです。どうすればいいでしょうか》
一生縁がないはずだった遠い他人の生活、暮らし、食べたものなどが次々ぽんぽん自分の中に飛び込んでくる時代。それが現代のネット時代、SNS時代なんだね。
一生知り合うはずのなかったひととネットを通じて親しくなり、オフ会とかで同席し、現実社会でも親しくなっていく。ま、これ自体はすばらしいことではあると思わないでもない。
たとえば中学とか高校に行っていて、クラスが荒れてたりして、いじめられたりなんかもして、いじめられてないにしても居心地が悪い、なんてことはあると思うね。
それでも中学生や高校生は社会が狭いからね、その中で生きていかなければならない。我慢して生きているうちに根性がねじまがってしまった、なんてことはこの地球上に何億もある話だろう。
でもネットというものによってこの世は狭くないということを知ることができるわけだね。
ところがこれがいいことだけではなくてだね、今回の質問のようなことが起きてしまう。たとえば誰かがアップした夕食の写真が旨そうなステーキやとんかつだったとして、自分が食べた夕食がカップラーメンひとつだったとして。ま、好きでカップラーメンを食べてるひともいるわけだし、誰がなにを食べようと胃袋も別なら生まれたときも死ぬときも別だし、旨そうに見えるステーキが写真ではわからなかったが実は猛烈な腐臭を漂わせていてつまるところが腐っているかもしれない。いや、ま、そんなことはないにしても、本当に人それぞれなんでね。
バス停でバスを待っていて、そこからタクシーを拾って乗っていくひともたまにいるが、ま、それに似ているかもしれない。が、これも本当に人それぞれなんでね。ものすごく急いでいるのかもしれない。多少、イラッと来るかもしれないですがね、そういうときには思い出してほしい。バスに乗る金さえなくて歩いたりママチャリに乗ってる人間もいるということを。
つまり俺だね。
でもそんな俺も自動車は持ってるし、その自動車で日本全国を走っている。今年の春は桜前線を追いかけている。が、そんなに金がないので一般道を走っているからものすごく時間がかかる。ま、移動の多いホームレスみたいな気がするね。身寄りもないっちゃあないし。金は常にカツカツ。
それができるのも仕事がそんなにないからだ。
じゃあ仕事がたくさんあるひとがうらやましいかというとそれはまったくない。
今回の結論であるが、要するに誰かのことが気になる、うらやましいというのは他の誰かと似たような生活環境にあるからなんだね。
人それぞれなんだよ、くどいようだけど。
それぞれの、人とは別の、よくいえばオリジナルな、悪く言えばめちゃくちゃな生活をしていればほかの誰かの生き方と比べてみようなんていうことはなくなる。
みんなと同じもの見て、はやりの服を着て、はやりの音楽聞いて、はやりの映画見て、どこにでも売ってるもの食べてたら、ま、比べたくなるだろうね。流行をキャッチすることはいちばんダメなことなんだけどそれを忘れてるんだろうな。
ネット見てて、誰かの晩飯見て腹がたちはじめたら生活にオリジナルが欠落してる証明だろうね。
(つづく)
<隔週金曜連載>
【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:Jさん&豪さんの世相を斬る!(残侠風雲編)@ロフトプラスワン(ロフトブックス)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13832873/
おすすめ本:「ボンクラ映画魂(完全版)燃える男優列伝」(杉作J太郎(徳間書店)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13815632/
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