
先生より新年のご挨拶:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載13

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
13時限目・先生より新年のご挨拶
あけましておめでとう。
なんにもおめでたくないよ、というひともいるだろうけど、この原稿を目にしてるということは生きているのは間違いないんだろう。
生きているということは何事にも代えられない重大なことだから、ま、それを一年のあたまに祝うの、俺はありだと思うね。
さて。前回の続きだけど。
貧乏だから絶え間なく仕事をしなければいけない。
それには俺もベートーベンも感謝するべきなんでね。
作品はたくさん残せる。
俺なんか依頼がなくても漫画描いたり小説書いたりしてるからね。というか、映画作ってるけどこれも誰かから依頼があったわけではない。依頼を待ってたりしたら生活ができなくなる。依頼もないのに物を作って、こんなんありますけどどうでしょうか、みたいなことをしていかないと生活ができないんだね。依頼をさばいているだけでは。あと、安い仕事。これなんかも俺は一言も文句言わずにやらせていただいてます。よく、安いなー、とか、1円も出ないのに、とか文句言うひとがいますが、たぶん生活が保障されてるんだよ、それは。
最低限の衣食住。これが保障されていたら俺もやらない仕事は出てくる。男の墓場プロダクションなんていうのも最低限の衣食住が保障されてたらやってないね。やってたとしてもいまの感じとは違うだろうね。自分に対して悪く言うのもきついけど、いまみたいなみっともない感じではやってないだろうね。
でもやはり現状貧乏だから。なんでもやらなきゃいけない。みっともないことも、人間の尊厳を売り渡すようなこともしていてその都度かなり落ち込んだりしてる。ただ、なんかやっといたらそれがいつか大切な局面で役に立つかもしれない。
飯島洋一さん主演の映画『戦争の犬たち』で表向きはガードマン会社だが実態は傭兵を派遣する会社に飯島さんや安岡力也さんが応募して。たこ八郎さんもいた。訓練中に人は死ぬわ、バズーカや迫撃砲の発射訓練もあったりするわでたこさんは怖くなってきてね、晩飯のときに隣の席の清水宏さんに相談するわけです。これ、本当にちゃんとした会社なのかな、と。自分は貧乏で、38歳にもなってまだ親から仕送りしてもらってる、と。そろそろなんとかしなければいけないと思ってるし、本当は親の面倒も見たいんだ、と、訴えるわけです。
そうすると隣の席の不気味なスキンヘッドの清水宏さんが。
松田優作さん主演のテレビ映画『探偵物語』、あれで主人公の仲間の映画が大好きな故買屋を演じていたスキンヘッドで眉毛も剃り落としてる目の鋭い男。あのひとが清水宏さんという俳優なんですが。
あのひとが。
ちなみに、あのひと、ふだんというか、基本的には頭髪も眉毛もあります。映画もテレビもたくさん出ておられるんですが『探偵物語』『戦争の犬たち』とはまったく顔が違う。完全に別人レベルです。だから時折、あのひと、ほかの映画やテレビで見たことない、みたいなことを言うひとがいるんですが、おいおい、小学生の社会科見学じゃないんだから自分が見たものを正しいと思うなよ、自分が見たもの聞いたことだけがすべてだと思うなよ、と俺は言っておくよ、場違いかもしれんけどここで。
ただ、清水宏って名前のひとはほかに何人かいる。日本中探したらもっとたくさんいるだろうけれども、映画関係者だけであとふたりいる。その清水宏さんたちとこの清水宏さんはもちろん別人で顔はまったく違う。
が、眉と頭髪のある清水宏さんと、それを剃り落とした清水宏さんは、顔の印象がまったく別人ではあるのだが、実際には同一人物であるから注意深く見ればどこか似てる。というか、同じなんだよ。だからよく見てください。
で、その清水宏さんにたこ八郎さんが相談をした。そのとき、清水宏さんが穏やかな、やさしい表情で言うんだね。
「いいじゃないですか先輩。この先、こういう訓練しておいて、損はないですから」
清水宏さんの演じていた男、すべて謎に包まれて何者なのか、バックボーンがあるのかないのか、なにもわからない役なんだけど。たぶん物凄く貧乏な男なんだとは思えるんだね。俺もそんな感じだとは思う。なんでもやっておこう、みたいな。ベートーベンもきっとそうだったんだろう。そうして作品がたくさん残っているんだね。
(つづく)
<隔週金曜連載>
【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:宇宙刑事ダイナミックガイドブック(杉作J太郎・編)(徳間書店ハイパームック)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13082203/
おすすめ本:東映スピード・アクション浪漫アルバム (杉作J太郎、 植地毅)(徳間書店)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13334829/
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