
君はベートーベンを知っているか:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載10

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
10時限目・君はベートーベンを知っているか
人間というのはいつまで生きるか、というのを考えるときに、ふと思い出すのはベートーベンのことなんだね。
ま、ベートーベンのことを思い出すとは言ってもベートーベンと会ったこともなければ詳しく調べたわけでも勉強したわけでもレコードを聴きこんだわけでもないのでね、ベートーベンに関する、あるひとつの話を思い出すわけなんだが。
ベートーベンという人は、生きているあいだはまったく不遇であった、と。
この話を思い出すんだね。
ベートーベンと言えば世界中の、いや、世界中というとこれはわからないけれども、ま、西洋の楽器とか音階とかがまったく存在しなかった東洋の島国にまで伝わっていて、これだけみんなが知っているという。名前も知っていれば顔も曲も知っているという。『運命』なんていうともはや曲というよりもSE、効果音だね。とかいうとベートーベンに対して失礼になってしまうけれども。音としての基礎。ま、かなりの世界的な有名人であるわけですよ。平たく言えば世界的な音楽家だね。
ところがベートーベンという人は生きてるあいだはまったく不遇だったと言われているわけだね。
でもいまは世界規模で知られている。
ベートーベンはいつまで生きたんだろう、いつまで生きてることになるんだろうという気が俺なんかはしてしまうんだね。
不遇なだけで終わったのではかわいそうだよ。
いま、世界中で聴かれていて、日本だけじゃないのかもしれないけど大みそかには第九のコンサートとかがあって。愛されている。それを含めてベートーベンの人生というふうに考えるわけにはいかないか、というか、本人は絶命しているわけだから脳でキャッチはできないんだが、それでも名前が通用して、曲がなにかを伝えているうちは生きてることになるんじゃないだろうか、と思いたいんだね。
ベートーベンの不遇な人生
生きてるあいだはベートーベンだなんて言っても「誰、それ?」みたいなね。
「どうもこんにちは、ベートーベンなんですが」
って、たとえば飲み屋とか合コンみたいなところとかでね。
「なんか音楽やってるんだって?」
「ああ、実はそうなんですよ」
「どんな音楽やってんの?」
なんて言われて。
「あ、ああ、ちょっと、音楽みたいな、ピアノとか、ま、やってます!」
なんて言って。
「ああ、どんな感じの?」
「いや、どんなって」
「雰囲気とか」
「ああ、好きなひとのことを思って作ったりしてます」
なんて言ったら聞いてた女が、
「えー、だれだれ? きもいんだけどー」
「いえ、きもくないです、きれいなメロディなんですよ」
たまにむっとしたりしつつもね、
「へえ、じゃあやってみてよ、ちょっと口で」
「口でですか?」
「そう、出だしとか、どんな感じかわかるでしょ」
「カンベンしてくださいよ」
「えー、聴きたーい」
ってこれは女、ね。
じゃあやりますかっていうんで、
「ババババーン」
って、ま、これをやるとは思いませんが、口でやってみたところで、メロディを聞く以前にもうバカにしているわけだから。ネームバリューとか売れてる売れてないで。たいした反応はなかったと思う。近くの席で喧嘩が始まったりなんかしてね、おーなんだなんだってなってるうちに口ずさみ終わったりしてね、ほとんど誰も聞いてなかったのに、
「あーよかったよかった」
「あんた、やるねえ」
みたいなことだったんじゃないかな、と思うね。ま、実際はそうじゃないかもしれないが、世界中にごまんとある類の話ではある。
で、その合コンには。
ここから少し長くなるので以下、次号だね。
(隔週連載)
【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:宇宙刑事ダイナミックガイドブック(杉作J太郎・編)(徳間書店ハイパームック)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13082203/
おすすめ本:東映スピード・アクション浪漫アルバム (杉作J太郎、 植地毅)(徳間書店)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13334829/
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