
人間と動物の決定的な違いについて学ぼう:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載8

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
8時限目・人間と動物の決定的な違いについて学ぼう
はい。
動物は物欲がない、という話だったんだが、あれからちょっと考えていると、あるね、動物にも物欲が、ね。
食べ物を貯めている動物の存在を見たか聞いたか、あるね。
巣の中に隠しておく、とか。穴掘って埋めておいて、頃合いがよくなったら掘り出して食べる、なんていう大藪春彦の小説の主人公みたいな動物が、いるそうだね。
だから、物欲は、あるな。うん。
物欲というか、捕っておくわけだね。
やつらの言う、安心できるぶんを取っておく、捕っておく、獲っておく、漢字が難しいけどね。確保しておくわけです。
で、やつらの安心できる日数というのはどれぐらいなのかということは厳密にはわからないわけだが、まあ、せいぜい数日。一週間先までということはないんじゃないのかな。
ま、その一週間という概念がやつらにはないんだろうが。
俺たちもカレンダーというものがなかったら。これは違うんだな。
一週間先というのはかなり遠いからね。うん。
これはスケジュール帳というか、カレンダー、七曜制の落とし穴でね。
遠いはずの一週間後。今日が金曜なら来週の金曜日。これは遠いんだね、本当は。今夜、寝て、起きて、夜が来て、朝が来て、夜が来て、朝が来て、また夜が来て。これでもまだ全然一週間は経ってない。曜日とか日にちがなければにわかに考えることもできないという、ね。土、日、月、火、水、木、そして金曜という、ね、一週間後というのは遠いんだよ。
ところがカレンダーだと一番近いところにあるんだね、これが。
来週の金曜は真下。先週は真上。ものすごく近いところにあるんだね。ぱっと見には同じ視界に必ず入る場所と言っていいだろうね。昨日、明日と同じぐらい近いんだね。デザインによっては昨日、明日より近かったりする。
ビジュアル重視の、アイドルやアニメのカレンダーとか、風景とか。
ま、風景の場合はそこまでカレンダーの邪魔はしないんだろうが、アイドルやアニメの場合には絵が主役なんでね。カレンダーだから壁に貼ってあるというエクスキューズになればそれでいいんでね。カレンダー部分が絵の邪魔をしちゃあいけないんだな。カレンダー部分は小さな字で下か左右のへりにずらーっと並んでる。あれだと改行がないから一週間後は遠いな。あれが本当の感覚ではある。
なんだが、あの手のカレンダーでずーっと数字が並んでるとげんなりすることがあるね。
一か月ってこんなに長いのかよ、みたいな。かんべんしてほしい、みたいに考えたりすることが俺にもあったね。でも、それが本当の一か月だから。一か月という時間の長さだから。
一週間というのも本当はそうとう遠いのであってね。
でも、七曜制のカレンダー感覚だと一週間はおろか、一か月先も四段下なんでね、これも近く感じてしまう。そのぶんを計算に入れて生活をしなければならないという、ね。いまはいいけど、一か月後には物がなくなるんじゃないか、とか。
その仕組みで来年のことも十年後のことも視野に入っているのが人間でね。
ここはやはり動物と違うわけだな。
この話をしなければならなかった。
いい感じになってきたので、ま、続きは次回だね。
(隔週連載)
【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
おすすめ本:宇宙刑事ダイナミックガイドブック(杉作J太郎・編)(徳間書店ハイパームック)
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おすすめ本:東映スピード・アクション浪漫アルバム (杉作J太郎、 植地毅)(徳間書店)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13334829/
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