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グラビアギャラリー
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社会・経済 2014.07.26(土)

後編:刑事だけが神様じゃない! 三億円事件と2人の名脇役捜査官たち

 

>>>前編より

“スッポンの芹さん”と呼ばれた検視官

 昭和43年の三億円事件発生直後、府中市の現場には続々と捜査員たちが駆けつけていた。その中に、現場を道路の隅々まで観察し、詳しくノートに書きとめている男がいた。男の名は芹沢常行。執拗に真実を追究する姿から「スッポンの芹さん」と呼ばれた検視官である。
 昭和35年、日本で検視官制度が施行され、3人の警察官が検視官として任命された。そのうちの1人が芹沢だった。検視官とは変死体を調べ、自殺・他殺・病死などをを判断し、犯罪の有無を決定する捜査官。物言わぬ「死体の声」を聞く専門捜査官である。
 芹沢は警視庁に勤務する間に、3000体の死体の検分を行った。その中には、60年代の安保闘争のデモ中に亡くなった樺美智子(かんばみちこ)さん。死刑判決の基準として取り上げられることの多い「永山基準」の根拠となった、永山則夫によって射殺されたガードマン、などが含まれる。
 また、演説中に刺殺された浅沼稲次郎・社会党委員長、暴力団員に刺殺されたプロレスラーの力道山などの司法解剖にも立ち会っている。昭和史を揺るがす事件の遺体には、ほぼすべて関わったといっても過言ではない。

三億円事件の捜査に足りなかったもの

 検視制度ができるまで、現場の刑事たちは、死亡者に持病があると、そのまま「病死」と判断するケースも多かった。しかし芹沢は、たとえ持病があっても、心臓発作で亡くなれば胸を押さえた死体になる、といった細かい点を見逃さなかった。医学的見地から検視の手法を確立していったのである。
 検視によって犯罪が認められると、法医学部の教授により死体は司法解剖され、より詳しく死因が調べられる。検視官は司法解剖に立ち会うが、ほとんどの場合、本当に立ち会うだけということが多い。しかし芹沢は、教授に対し「もう少しここを切って見せてくれ」指示することさえあった。
 芹沢が追求し、作り上げていった検視技術により、言葉を伝えることができない死者たちは、裁判官や警察官に「真実を語る」ことができるようになったのだ。
 三億円事件の現場に犯行直後に駆けつけ、詳しく状況を書きとめた芹沢。しかし検視官である芹沢が、窃盗事件である三億円事件の捜査に関わることはなかった。芹沢の「スッポン」のような徹底した捜査が生かされれば、三億円事件は未解決のまま終わることはなかったのではないか、という声は多い。

 三億円事件の捜査に、その能力を生かすことのできなかった塚本宇兵と芹沢常行。彼らが力を発揮すれば、三億円事件の行方が大きく変わっていたかもしれない。平塚八兵衛ら名刑事の上げた実績が、素晴らしいものであることは間違いない。しかし取調べで得た自白は、嘘をつくこともある生きた人間から得た証拠だ。そのため、時に冤罪も生んできた。指紋や死体は喋らない代わりに、嘘もつかない。真実を見つけるためには、名刑事と名科学捜査官の連携こそが大切と言えるだろう。

(文・編集部)

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