
恐怖の黒いダイヤ・ナマコの真実

ヤ●ザを招き寄せる高級すぎる黒いダイヤ
あなたはナマコの恐ろしさをご存知だろうか?
「え、ナマコ? ナマコ酢のコリコリしたアレだろ? なにが恐ろしいんだよ。美味しいだけじゃないか」とおっしゃる皆様。ナマコはさほど知られてはいませんが実は、非常に恐ろしい生き物なのです。
とはいえ、別に噛み付いてくるとか、毒を持っているというわけではありません。その恐ろしさを知るためには、まず、ナマコは中国ではツバメの巣やフカヒレ、アワビに並ぶ「四大海味」のひとつだということを知る必要があります。そう、ナマコは我々が想像する以上に超絶デラックスな高級食材。「黒いダイヤ」と呼ばれるほどの存在なのです。
祖父がナマコ漁に携わっていたというMさんは言います。
「ナマコがさ、乾燥させて、中国に売るとすごい儲かるってなったのね。じいちゃんが、『これからはナマコの時代だ。ウニだのアワビだのって言ってんのは派手だけど、あんなもんよりナマコの方が金になんだ』って言ってたもの。でもさ、そうやって『儲かるぞ~』ってなったら、漁師とか海女だけじゃなくてさ、密猟の人たちが出てきちゃったみたいなのよ。ヤ●ザ屋さんとかがね。ナマコって獲るのすごい簡単だからね。海底まで潜れたら、誰でも獲れちゃうからさ」
そう、密猟です。しかも、個人レベルではなく、悪い組織が大々的に携わるほどの。 でも実は、乾燥なまこは江戸時代から続く歴史ある高級輸出品。なぜ今になってというと、その背景には、中国の経済成長に伴うナマコの輸出量拡大と価格高騰が。特に2000年から2008年の北京オリンピックあたりまでは「ナマコバブル」と呼んで差し支えないほどの凄まじい価格高騰ぶりを見せていたといいます。
欲にまみれた漁民たちが沈んだナマコバブル
「だからさ、漁師も笑いが止まらないくらいに儲かってたのよ。小さいころはいっぱいナマコを食べさせられてたよね。栄養たっぷりだっていってねぇ。でもさ、中学生くらいになったころには、『ナマコは俺らが食うくらいだったら中国に売った方がいい』ってじいちゃんが言ってたね。ナマコ食うくらいだったら、肉でも食えってね」
だが、その状況が一変したのは、ここ数年前のこと。2011年には、約半年で4割ほどにまで値段が下がりました。暴落です。
そう、まるでナマコバブルの崩壊…。
「下落の原因はさ、福島原発の影響だとかさ、中国経済の停滞だとかって言われてるよね。じいちゃんがさ、死んじゃった後で良かったよ。うちは父ちゃんも家業つがずにサラリーマンだし、ほんと、大事になんなくて良かった。でもさ、周りじゃアレだよ。けっこう、首くくる寸前までいったみたいな話も聴くからね。やっぱさ、たっぷり投資した直後だったりしたらさ、マズいよね。しかも、そこんとこの息子が密猟の手引きをしたとかで捕まった直後だったりとかして、精神的にもやられてたんだろうね。まぁ、今はまた、ちょっとマシになってきたみたいな話を聞くけど、どうなんだろうねぇ」
密猟業者をおびき寄せてしまうだけでなく、善良なる漁師たちの人生を絶望にたたき落とした「黒いダイヤ」。
その暗黒の輝きに魅せられ翻弄される人々のお話は、なんとも恐ろしいと思いませんか?
(文・編集部)
写真:赤ナマコのナマコ酢/sabamiso(Flickr CC-BY)