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『仮面ライダーBLACK SUN』の監督・白石和彌が語る想い「ライダーを現実の悪と闘わせたかった」

2022.12.01(木)



白石和彌監督が手掛ける仮面ライダー生誕50周年記念作品『仮面ライダーBLACK SUN』がAmazon Prime Videoで全10話の一挙配信がはじまった。

1987年にテレビ放映された『仮面ライダーBLACK』を原作に、キャラクターや怪人などをアップデートさせて蘇らせつつ、ライダーの歴史でも類をみない異例な社会派大河として生まれ変わった。仮面ライダー叙事詩にかけた想いを独占取材。



西島秀俊さんが演じる南光太郎=仮面ライダーBLACK SUNと、悪の秘密結社ゴルゴムの死闘という対立構造こそオリジナルと一緒ですが、まったくの別物と言っていいですね。

特に最大の変更点は怪人の立ち位置です。『BLACK』にせよ、ほかの作品にせよ怪人はライダーに立ちはだかる悪役でしたが、今作では必ずしも悪人でないどころか市井に多くの怪人が存在するという世界観。普通の人間種から差別される怪人種の、人権運動が物語の中心になっています。

この作品の世界観は、どのように作り上げていったんでしょう。

白石 ライダーの企画を東映からもらった時に、かなり直感的に怪人差別についての話にしようと思ったんです。

というのも、ここ10年ハリウッドのアメコミ映画は、ポリティカルコレクトネスと密接に結びついていきましたよね。MCUや『ウォッチメン』といった作品を見ながら、時代と社会のなかで実在感を持って闘うヒーローを、自分も機会があれば作ってみたいと思っていました。

それに加えて、これは本当に偶然なんですけど、50周年作品ということで50年前の日本の近現代史との連続性を織り交ぜたいと考えると、1972年というのは連合赤軍による浅間山荘事件が起きた年でもあったんです。

この事件は僕の師匠である若松孝二監督が『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』で映画にした題材でもあって個人的にも強い関心があったんで、連合赤軍そのものではないけれど、ある種の挫折した学生運動の落とし前を2022年に決着させるという骨格が出来上がっていったんです。

BLACK SUNとその宿敵SHADOW MOON(中村倫也)は共に60年代のアメリカ公民権運動のような形で行われた「怪人人権運動」の闘士だったという性格付けを行っていきました。

公民権運動がら半世紀経ってもなおアメリカでは黒人が警官に殺され続け、2020年には「#BLACK LIVES MATTER」運動が盛り上がりましたが、それを下敷きにした「#KAIJIN LIVES MATTER」というスローガンも見えるデモが行われていました。

で、対抗勢力は怪人差別団体と衝突しますが、彼らの描かれ方は、実際に日本で外国人や生活保護受給者などを攻撃する団体を思い出す部分もあり、非常にリアルでした。

白石 日本における差別というと自分が真っ先に思い浮かべる光景は、ヘイトスピーチを行う団体が朝鮮学校の前に立って拡声器で「日本から出て行け」とデモをしているシーンでした。朝鮮学校に通っている生徒に、何の罪もあるわけないじゃないですか。

どうしてこんな酷いことができるんだろうと、心に焼き付いています。

ヘイト団体の人物をモデルにしたわけじゃないけれど、最も残酷な差別のかたちとしてどうしても反映してくる部分がありました。実は西島さんがバトルホッパーで最初に疾走するシーンというのは、新大久保で撮影したんです。たまたま通った時に、この雑踏の感じは理想的だなと思ったのもあるし、僕の日本社会に対する問題意識との橋渡しだとも言えるかもしれません。

現実との接続というと、今作は政治の世界が緻密に描かれるのも特徴的です。

今作で最大の悪と言っていいのが、ルー大柴さんが演じる堂波真一総理大臣。彼の祖父が人体実験によって怪人を生み出し、孫の総理大臣は怪人差別を温存しつづけ、彼らを搾取することで私腹を肥やし、さらには怪人の武力を使って海外派兵をも企んでいる。

ネットでは堂波総理は安倍首相がモデルなんじゃないかという声も大きいですが、そこは狙っていたんでしょうか。

白石 みんなルーさんが安倍さんと似ているって言っているけど、似てるからキャスティングしたつもりはまったくありません。

バラエティにたくさん出るようになってからは、ルー語の面白い人ってイメージが強くなったんだけど、シリアスですごくいい芝居をする役者だなと思ってて、単にずっと仕事がしたかったんですよ。

ルーさんに「安倍さんのように演じてくれ」とは言ってないけれど、憲政史上最長在位の首相で誰にとっても印象が強く残っているからこそ、日本の総理を演じるとなるとどうしても意識せざるをえないと思いますよ。

脚本や物語もそうで、やっぱり日本の社会問題を取り上げると、マイノリティの問題にせよ、9条とつながる問題にせよ、安倍政権や自民党の実際の問題と結びついてしまう。けれど、人そのものをモデルにしたかったわけじゃないんです。

とはいえ仮面ライダーという巨大なキャラクターを使って、現実でも紛糾する政治的な問題を扱うとなると苦労もあったんじゃないかと想像しますが。

白石 それはまったくなかったです。プロデューサーも、東映も僕らがやりたいビジョンを全力でサポートしてくれました。そのうえでだけれど、この作品が配信直後から賛否が真っ二つに分かれた受け止められ方をされてるのは最初から覚悟の上。

日本社会に根付いている価値観に対して、作品もライダーも挑んでいるわけだから。一人でも多くの人に楽しんでもらいたいけれど、とはいえ万人受けするような作り方をしようとは思わなかった。


生物としてのライダー ジャンキーとしての南

今作は仮面ライダーもあくまで怪人のなかの一体でしかないという描き方をしているのも引き込まれる導入でした。

白石 『仮面ライダーBLACK』のテレビ版でも少しだけ描かれているんだけど、それよりも石ノ森章太郎先生の『BLACK』が徹底的に変身ベルトをつけていない、バッタ男として仮面ライダーを描いてるんです。それがとても印象的で。石ノ森のイメージ膨らませた、あくまで生物としての仮面ライダー像を提示してみたかったんです。

そして怪物バッタ男から、本当の仮面ライダーになるっていうのを物語の盛り上がりとして取っておきたかったってのもありますね。第1話で変身させちゃうのは、早すぎるなって(笑)。

造形は樋口真嗣さんと作り上げていったんですよね。

白石 そうです。石ノ森先生は、そもそもなんでバッタを主人公にして作り始めたんだろうとか、仮面ライダーの原点に立ち返っていろいろ話しながら。改めて考えてみると、バッタってカブトムシなんかと違って人気な昆虫じゃないでしょ(笑)。

あくまでバッタ怪人という地点から、造形やアクションを考えていったんです。すごく気に入ってるのは、BLACK SUNのバッタ怪人は噛みつき攻撃ができるところ(笑)。マスクを被った変身体じゃできないバッタならではの攻撃ですから。

そんなBLACK SUNに魂を宿す西島さん演じる南光太郎という男は、どういう存在として作り上げていったんでしょう。

白石 仮面ライダーという作品だけど、ヒーローからは縁遠い男をまずは描きたかったんです。南は自分の闘いは50年前の闘争の敗北で終わったと思って、そこからは永い余生を送っている世捨て人で。そのうえ、昔の闘いで負った怪我の痛止めとして、とんでもない量のケタミンを打ち続けている。

ケタミンは麻酔であると同時に、トリップするドラッグでもありますから。言い方は悪いけどジャンキーなんですよ。社会のなかの悪を見て見ぬ振りをしていた南が、葵という少女との出会いを通じて、再び「許してはいけないものがある」という怒りを回復していくんです。

葵は中盤で住む家を失い、南の住む廃バスでともに生活をはじめますよね。あそこの雰囲気がとても良いです。これはたまたま偶然でしょうけど、少女と車というと『ドライブ・マイ・カー』のイメージも重なって(笑)。もっとも、こっちの車はドライブできないんですが。

白石 言われてみれば、『ドライブできない・マイ・カー』だね。あの廃バスの家は、自分でもとても気に入っていて。そもそもは、アメリカ映画に出てくるよう世捨て人の住むトレーラーハウスだったんだけど、トレーラーそのものを置いてしまうと嘘くさいなと。で、もう無くなってしまったけど渋谷のハチ公前に、緑の電車がオブジェとして置かれてたじゃないですか。あんな感じで、廃電車に住まわせたかったんです。でも、電車を運ぶのはとんでもなくお金がかかる。

で、妥協点としてバスになったんです。バスの座席ってデコボコしてるから、家具の配置なんかもユニークになって、結果的に電車よりよかったなって(笑)。

そうそう『ドライブ・マイ・カー』というと、仮面ライダーの見せ場中の見せ場である「変身!」のシーンを撮る前日に西島さんが全米映画批評家協会賞っていうアカデミー賞の前哨戦とも言われる映画賞で、主演男優賞を受賞したんですよ。世界のニシジマになってしまって演じてくれないんじゃ…とか思ったけど、ものすごい熱気で変身っ! やってくれましたよ。

初歩的なことをお聞きするんですけど、変身したBLACK SUNのなかに入っているのは西島さんじゃないわけですよね? スーツアクターの人が演じていると頭では分かっていても、あれ西島さんっぽいなと思わせるものがあって。

白石 もちろんスーツアクターだけど、ライダーの仮面の下に西島さんや中村さんの顔があると信じてもらえたんなら、それ以上に嬉しいことはないです。特撮のシーンって撮影がものすごく時間がかかるから、スーツアクターの出番の時に西島さんたちは同席しないんです。

だけど、一緒に南光太郎という人物を作り上げていくために、西島さんとスーツアクターの人はかなりの時間話し合って演技が連続してみえるよう打ち合わせたそうです。

 

 

白石和彌が惚れたクジラ怪人

以前の白石さんは連載で「BLACK SUNはR15くらいのレーティングにおさまるような描写にしてたんだけど映倫と違う、Amazonの審査でR18になっちゃった」っておっしゃってたけど、これはR18だな~と思いましたよ(笑)。首チョンパに、内臓…、ホラーやスプラッター映画以上にやりたい放題だったじゃないですか!

白石 俺がずれてんのかな(苦笑)。日本の映倫って、実はグロシーンにはある程度寛容で、R18になるのは大抵の場合性愛描写。グロでR18になるのは人間が首チョンパされたりするのを克明に描写したりする場合なんですよ。ゾンビや怪物が残酷に殺されるのは映倫的には大丈夫のはずです。『BLACK SUN』での人体欠損シーンは怪人なんで(笑)。

僕が考えるに、R18になったのは中学生の男の子がヘイト団体の人たちにリンチされたりする、未成年への暴力のほうが引っ掛かったんじゃないかな…。まあ、真相はわからないんですが。

とはいえグロも含めて特撮シーンの見ごたえはすごいものがありました。近年のウルトラマンシリーズで監督として中核を担っている田口清隆さんが特技監督で入るってのは豪華ですよね。

白石 田口さんがいなければ怪人たちの神・創世王とのバトルを描くことはできなかったですよ。オリジナル版では巨大な心臓という抽象的な形でしか描かれなかった創世王を、完全な形で登場させ、そのうえBLACK SUNとアクションを交えて戦わせたかった。

心臓だけで1メートルくらいはある巨人とBLACK SUNを戦わせることだけは樋口さんとの間で決まっていて、ミニチュアとCGを組みあわせて合成させれば撮れるんじゃと考えていたものの、田口さんら特撮の専門家に聞くと難しいという。で、最終的に座り姿で3、4メートルはある巨人を実際に動かして撮ろうと…。このシーンは、今までの監督人生で一番苦労したシーンと言ってもいい(笑)。

そんなに力技だったとは…。でも確かに作品全体を通じて、CGアクションというよりも、古き良き特撮がふんだんに使われてる印象でした。

白石 実際はめちゃくちゃCGを使っているんだけど、CGの部分がいかにもCGですとはならず、実写のなかで調和するバランスは当初から狙っていたんです。

ところで、BLACK SUNに登場する怪人たちはどのように選んでいったんでしょう?

白石 基本的にはオリジナル版を観て、自分が出したいと思ったキャラを素直に選んでます。といっても、ゴルゴム神官らは本筋に関わり物語上の必要不可欠だし、クモ怪人やコウモリ怪人は仮面ライダーのお約束だから、好みで出せた怪人は少ないんですが。

特に好みが反映されてるのは、クジラ怪人ですね。物語終盤から登場し47話「ライダー死す」というショッキングなエピソードを中心に、ゴルゴムを裏切りライダーに協力する心優しい怪人なんですよ。ここはぜひオリジナル版も観て欲しい!

オリジナルからの引用というと、最終話にものすごいヤツがありましたね。

白石 あれは最初から絶対にやろうと考えてたんですよ(笑)。本当は場所も含めて完コピを目指していたけれど、いまは立ち入り禁止になってたり、東映のスタッフですらどこで撮ったか不明だったりで、そこまでの実現はできませんでしたが…。BLACKを観ていた人が喜んで、BLACK SUNを観ていた人がオリジナルを観る、ぜひ新旧あわせて楽しんでほしいです。

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[初出:実話BUNKA超タブー2023年1月号]
[本文中の写真:©石森プロ・東映 ©「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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PROFILE:
白石和彌(しらいし・かずや)

1974年北海道生まれ。ノンフィクションを原作とした『凶悪』は、第37回日本アカデミー賞優秀作品賞・脚本賞ほか各映画賞を総嘗めし一躍脚光を浴びる。その他、『日本で一番悪い奴ら』(16年)『孤狼の血』(17年)などがある。『仮面ライダーBLACK SUN』配信中!

『仮面ライダーBLACK SUN』

監督:白石和彌/脚本:髙橋泉/音楽:松隈ケンタ/コンセプトビジュアル:樋口真嗣/特撮監督:田口清隆

出演:西島秀俊、中村倫也、平澤宏々路、木村舷碁、中村梅雀、吉田羊、プリティ太田、三浦貴大、濱田岳、ルー大柴

製作:東映株式会社「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT ©石森プロ・東映 ©「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

https://www.kamen-rider-official.com/blacksun/


 


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