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声優・妄想・トランプ:ロマン優光連載188

2021.06.05(土)


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第188回 声優・妄想・トランプ

 最近、ある声優さんが長年に渡りネット上で誹謗中傷してくる人物にTwitter上で抗議の声をあげたという記事がスポーツ新聞のweb版に掲載されていたのを見かけたので、どんなことを言われていたのか気になって、声優さんの相手のホームに飛び、呟きをあれこれ見たのだが、集団ストーカーのような関係妄想に満ち溢れたツイートばかりで、おそらくは精神的な病を抱えている人なのだろう。
 声優さんの抗議の内容は正論である。匿名の陰にかくれ、長年に渡って事実と異なることをあげて誹謗中傷していたこと。声優さんの周辺の人々にそういうリプを送りつけてること。それが卑劣な行為であるということ。それは本当にそのとおりだ。しかし、彼のTwitter上での主張を正直な心情の吐露だとして考えるなら、彼が認識している事実は全く違うだろう。理不尽に自分を監視して嫌がらせをしてくる集団に対して正当な戦いを挑んでいるというのが、彼の認識だ。どんなに正論を言って、見えている現実が違う以上、彼には届かないであろうし、案の定、相手は妄想をより強固にし、いっそう敵意を募らせていっている様子であった。いや、何を言ってもそうなったのかもしれない。こういう複雑な要素が絡んでいる事例を、通常のSNS上の誹謗中傷の案件であるかのように報道したスポーツ新聞はたいがいだなと思う。
 関係妄想を伴うような病を抱えた人が、SNS上で実際は無関係である他者に対して妄想に基づいて攻撃を加えている例はときたま見受けられる。SNS上でどんなに抗議したり、説得しようとしても、相手が受け入れることはないだろうし、嘘をついていると思われ逆効果になる場合が多いだろう。第三者が正義感やイタズラ心で参入して相手を叩こうものなら、自分が何らかの集団に迫害されているという妄想が補完されていくだけにしかならない。ただ、あまりにも現実離れした主張であるがために、不快であったり、精神的な苦痛は味わうものの、風評被害のようなことにつながる場合は少ないだろう。
 SNS運営にアカウント凍結のような対処をしてもらうというのが現実的なのだが、それも即対処してもらえるかというとなかなか難しい。対処してもらっても、妄想の根本的な治療がされてなければ、また同じことを繰り返す可能性が高い。家族や周囲の人が異常に気づいて、治療する方向にもっていってくれるのを祈るしかないが、一人ぐらしで、あまり他人と関わらないような生活をしている人だと、それものぞめない。どっちにしろ、大きな問題を現実で起こして行政の目に触れるまでは、そのままである可能性が高い。被害を受ける側ができるのは、基本的には耐えることしかない。相手も病で苦しんでいる気の毒な人であるわけだが、理不尽に精神的な苦痛を与えられているわけで、どういうふうに感情をもっていけばいいのか。非常に悩ましい問題だと思う。

 そういった妄想を抱えたものどうしがSNS上で結び付くことで、互いの妄想をより強固にするような例もある。Jアノンと揶揄されたような日本のトランプ支持者の中には、そういった人たちではないかという例も多くみられた。陰謀論というのは無関係なものどうしに強引に関係性を持たせていくという点で、そういった人たちも関係妄想に親和性が高い。個人の妄想から陰謀論が生まれてきたり、意図的にそういったものを取り入れて陰謀論を形成している場合もある。
 ある種の精神的疾患を抱えた人たちが特定の思想をもつ人々が主張する陰謀論に取り込まれたり、逆に特定の思想を支持する精神的な疾患を抱えた人が陰謀論的な発言をするような例は、その思想を問わずみられるもだが、Qアノン~Jアノンに関しては、彼らが支持しているものが、そういった人々が発しがちな妄想を意図的に取り込んで色々と切り貼りして作られたものなので、特に親和性が高かったのだろう。
 陰謀論を流布する大元にあたるような人物は、何らかの意図(政治的・宗教的な煽動、陰謀論を信じこみやすい人相手のオカルト・ビジネス)をもって事実でないと知りつつ陰謀論をとなえる人間が大半ではあるが、自分がとなえる陰謀論を本気で信じている人もいる。そういう人の陰謀論は独自の奇抜なガジェットが登場するものが多く、珍品として好事家のおもちゃとしての人気が出たとしても、陰謀論としては不人気なのでは。病者の関係妄想と陰謀論は似ているが、前者はどこまでいっても「私」の話で、後者は「世界」についての話である。個人の妄想でしかないのか、多くの人に受け入れられたり取り込まれたりするかの差はそこにあるのだろう。なんというか、変な話だけど社会性の差である。多くの人の「私」の物語に組み込めるようになってるのが陰謀論だ。どんなに異常な妄想めいた言説で構成されていても、Qアノンたちを支えた言説はさまざまな「私」の物語に組み込めるようにちゃんと調律されているからこそ、流行ったのだろう。

 現実ではないことをもとに相手を攻撃しているアカウントというのはSNS上には沢山いるわけだが、それを本気で信じているのか、嘘だとわかっててやってるのか判断がつかない人物も中には存在する。まあ、完全な妄想であれ、意図的にしくまれた陰謀論めいた嘘であれ、そこにネガティブな存在として登場させられ叩かれるのは、なんであれ勘弁してもらいたいものだろう。

(隔週金曜連載)※編集部注:金曜に更新されていますが不具合でフィードが流れていないので更新日付を土曜に修正しました

Photo:Marc Nozell from Merrimack, New Hampshire, USA - QAnon vendor, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=81524438による

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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

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