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サブカルチャー

2019年のアイドルシーン:ロマン優光連載151

2019.12.27(金)


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第151回 2019年のアイドルシーン

 2019年のアイドルシーンの総括めいたことを編集氏に頼まれたのだが、連載一回目からたびたび言ってるように、ここまで広がった現在のアイドルシーンの全体像をちゃんと把握できるわけもなく、地上には地上の、地下には地下のそれぞれの状況があり、一口に地下と言ってもニッチ化が進んでいる現状では界隈によっても全然違うわけで、誰かが見聞きしたものはその場の真実であっても、そこから導きだした結論が全てに単純に当てはまるわけではない。
 そんな状況の中で臆面もなくシーン全体の総括をできると思っている人は相当にズレてるし、分析能力に欠けているわけで。そういった人間の言うことに限って、事実かどうかはさておき単純化されてて解りやすいので拡がりやすかったりはするのだが。ちゃんとした人は、やっぱり自分の観測できる「枠」の中で話をしていくもので、それが全てであるかのように情熱的に語るような人間の言うことは、少し引いて聞いとくぐらいでちょうどいいと思う。ある程度以上の評価があるグループに限っても全てのライブを見ることは物理的に不可能であるし、今年発売された全ての音源を聴くことも物理的に不可能だ。こういう状況では個人が自分の見聞きした範囲で自分ベスト的なものを選ぶしかないし、その自分ベストがあくまで自分ベストでしかないという自覚が必要である。
 そういうわけで、これから自分が書くことは、東京のローカルシーンのニッチな部分で見聞きした個人的なフィールドワークから感じたことでしかなく、あくまで個人的なものだ。

 自分はめちゃくちゃあちこちのグループを見に行くわけでもないし、特定のグループだけを見に行くタイプでもなく、特定多数のグループのライブを見に行くタイプなのだが、今年はこの3年くらい通っていた現場の多くにメンバー脱退による体質の変化が起こった年だった。みんなのこどもちゃん、SAKA-SAMA 、会心ノ一撃(正確には会心の曲の一部を受け継いだ新グループ・スコールと活動再開予定の会心ノ一撃に分裂)といったグループだ。
 3年という月日は短いようで長い。その間に停滞した活動に心が折れる場合もあるし、病気になることもある。学生から社会人になることで、やる気はあるのに活動に参加できなくなり辞めざるを得なくなる場合もある。その間にそれだけで食えるようになっていればいいのだろうが、ニッチな方向性を持ったグループでは評価はあっても、そのレベルに売れることは難しい。そういった方向性のグループは運営・メンバー共に「やりたいからやる」という気持ちでやっていく、インディーズバンドみたいなスタンスでやっていくしかないのだが、バンドでたまに見られる「半端に売れてきたために、今までは問題はなかったが、ライブ活動のスタンスが変わってきてしまい、生計を立ててる仕事との折り合いがつかず、辞めざるを得ない」ということも起こる可能性もある。
 今年結成されて解散したグループにエレベーターサティスファクションがある。癖の強い良いグループだった。ラウド系との対バンが多かったのだが、音楽的には校庭カメラガールに近い部分のあるエレクトロ寄りの音楽性で、その界隈に音楽的にはまっている感じはしなかった。二年くらい前ならTRUSH-UP主催の「遅れてゴメンネ」のような癖のある新人グループを集めて開催されるシリーズイベントがあって、見に来る界隈が拡がり各グループが相乗効果で盛り上がっていくということがあったのだが、そういうコンセプチュアルな変なイベントは現在は見受けられない。色んなところに面白くて変な個性のグループニッチな音楽性のグループはいるのだが、そういったグループが好きそうな人に見つからないまま、各界隈で地味な活動を続けていく感じで終わってしまう。アイドルの数が多すぎる、界隈の分散が激しすぎることで、よほど勘が良くあちこち見に行ってる特殊なオタク以外には認知されず、ファンになるであろう層に行きあたらないまま終わってしまうということは、あちこちで起こっているのではないだろうか。二年前であれば解散するにしろ、エレベーターサティスファクションはもっと知名度のある状態で解散していたかもしれないとは思う。
 地下のニッチなところにいるとオタクの総数はそう変わらないイメージはある。しかし、見かけなくなる顔はあるし、それが違う界隈に通っているわけでもなくアイドル現場自体から遠ざかっている場合も多い。総数が変わらない気がするのは、より売れているところからニッチな方向にオタクが流れてきているからなのだが、その人たちは新しくアイドルオタクになった人ではなくて、以前からアイドルオタクだった人である。移動しただけで、アイドルオタクの数が増えたわけではない。それと同じ現象が各階層で起こっているとするならば、オタクの総数は減っているということになる。もとから支持数の上限がある程度限られてるニッチな界隈ではわかりにくいが、上にいけばいくほどオタクの総数が減っていってるのがわかりやすいのではないだろうか。
 今後、間違いなくオタクの総数は減る。なぜなら、若くなればなるほど人口が少ないからだ。40代50代をピークにどんどん人口は減り続けている。各世代の何割かは確実に地下アイドルオタクになると仮定しても、分母が違えば実数が違ってくる。おじさんオタクがオタ卒した穴を新規でオタクになる若い層で埋めることは不可能だ。アイドルブームのように言われだして10年近くたつが、それぐらいの間には飽きてしまう人もいるのが当たり前だ。以前からアイドルを好きだった層に加えて、中年以上の人間が大量に新規に参入することで、今のアイドルブームは成立していたのは確実にあるし、地下などはそれが如実に表れていたのだが、そういった層が一定の割合でオタ卒していけば、より若い層が新規にオタクになっても追いつかないのである。
 キャリアの長いおじさんオタクが正統派アイドルの不遇を訴えたり、ラウド系やサブカル系のはびこる現状を嘆いたりするのはたまに見かける。これは単なる音楽性の問題ではない。アイドルというもののイメージの話も含まれている。音楽性の話だけすれば、サブカル系に関しては音楽的にはそういうものと親和性が高いことをやってるグループが結構いるはずなのだ。しかし、そういうことをいうタイプの人はイメージでそこら辺を毛嫌いしているために触れることはない。正統派アイドルを絶対の正義だと考えること、それは演者側のことを考えていない意見かもしれない。演者側の女の子の考える可愛いや成りたいと、おじさんオタクが求める昔ながらの可愛いの間に齟齬があるのは当たり前で、おじさんの求めてるものを女の子がやりたいかといったら、それは絶対に違うだろう。ももクロ以降のアイドルブームですら10年近くたっている。その間にだって女の子たちがどんどん変わっていってるのを物販にいくたびに実感する。

 そういったタイプのおじさんオタクの求めるアイドル像とは、本人が意識してなくても突き詰めれば「処女性を持つ何も知らない(おじさんに都合のいい)女の子」だったりするのだろうが、そういうものはそろそろ表現として無理があるのではないだろうか。例えば、SAKA-SAMAの持っていた「男性を必要としない自己完結的な女の子のモラトリアム」といったものは今後も出てくるとは思うのだが、おじさんの幻想の中の女の子はどんどん表現されなくなるだろう。演者側の女の子はそんなものを求めていないからだ。時代が変われば、女の子も変わる。アイドルを楽しむということは、目の前の女の子とその女の子の表現が全てであり、その時々の女の子の表現する「可愛さ」を楽しむことでしかないのだと、個人的には思う。そういうおじさんも、ちょっと肩の力を抜いて先入観を捨てて知らないとこにおもむけば、自分の好みに合うものに出会えるのではないかと思います。

 個人的な19年ベストライブアクトは佐倉雅。ベスト楽曲を三つあげるなら、エレベーターサティスファクション「無神経Nightwalker」、ノルウェージャンフォレストガール「夕焼け※October8」、回せ!グルーヴ開発部「回せ!」。アイドルでなくなった推しは、まひるん、ほのか、びーたろう、ささお、にとちゃん。解散したはずのスーパー転校生がなんだかんだライブやっててよかったという一年でありました。スコールに関しては会心ノ一撃のメンバーと曲を一部受け継ぎながらも新しいものになっていて、「かって連載されていた心理描写の多いSF漫画と設定と登場人物が一部被っているものの続編というわけではなく、ジャンルもバトル漫画に変わった」みたいな感じで良いと思います。なかなか見つけづらいけど、面白いアイドルはどこかに必ずいる。オタクは減っていってるし、全体的にブームは終わりかけてるけど、かってのバンドブーム後のバンドみたいな感じで、丸っきりシーンがなくなってしまうことはない。芸能界のスターになりたいとかではなく、やりたいからやっている系の地下アイドルがいる限り、なんだかんだで続いていく。そんな感想です。

(隔週金曜連載)

写真:エレベーターサティスファクション (11月9日解散)

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