モテについて:ロマン優光連載22
2015.01.09(金)
ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第22回 モテについて
人間というのは下世話にできているもので、たいていの人は恋愛の話が大好きです。友達の恋バナを聞くのはワクワクします。まあ、片思いで初デートにこぎつけ、いざ付き合うまでの過程の話を聞くのが楽しい、なんだったらなかなか上手くいかないぐらいの話を聞くのが楽しいのであって、付き合ってからのラブラブ生活の話などをされたら殺してやりたいとか思っちゃいますよね。些細な出来事で一喜一憂する片思いの切なさにドキドキしたいのであって、幸せ全開のやたらとハイテンションな話など知ったことではないのです。片思いだけではありません。愛し合っている二人の間を阻むような不測の事態が巻きおこったり、彼氏がいるのに好きな人ができてしまい苦悩したり、お互いに大好きなのにどうしてもうまく行かなくて別れなければいけなかったり…私はそういう切ない話を聞くのが好きなのであって、恋愛成就した後のハッピーライフみたいな話など求めてはいないのです。
恋愛の話は好きですけど、恋愛論みたいなのは好きではないです。その人の個人的な体験を読むのは別にいいのですが、「恋愛かくあるべし」みたいな話をされるとイラッときます。まあ、恋愛論なんて実際の恋愛に参考になることは少ないものですし、万人に当てはまるものではありません。積極的に出るべしといったところで 、人によっては加減がわからず相手にストーカーだと認識される恐れすらあります。「人前で何か表現活動をやったほうが、やってない時よりは少なくともモテる」という話にしても、人によっては、以前は単にどうでもいい人だと認識されていただけなのに、人前で表現活動を行った結果、その表現の本質的などうしようもなさからかえってみんなから嫌われることになる人もいるのです。このように恋愛論などあてになりません。人間なんてスペックがみんな違うんだから、あんたのやり方で上手くいく人もいるけど上手くいかない人は絶対にいるし、だいたい好きなタイプが違うんだったらやり方も違ってくるに決まってんだろう! さらに言うと、語り手のルックスと語ってる内容のコンビネーションが悪い時には自然と殺意に似た衝動が巻き起こってきてしまいます。いや、どんなルックスでも恋愛を語ってもいいのです。たとえ容姿に優れてない人の語る恋愛の話でも、内容によっては切なさに心を打たれることは多々あるのです。別に上手くいかずに終わる話でないといけないというわけではなく、恋愛が成就していてもいいのです。どういう人が私をイラだたせるのでしょう?
モテ自慢をかねた恋愛論を語る勘違い野郎
相手がなびいた原因として金や社会的地位といった部分の方がどう考えても大きいのに、その要因がまるでなかったかのように語り、あくまでも自分の人間的魅力でモテたかのように語る人は不快ですね。わざとなのか、勘違いしてるのかはわかりませんが、なんであれ不快には変わりありません。自分を大きくみせようとしてる人にしろ、自分を過大に評価してる人にしろどちらにしろ、嫌な人間にはかわりはありませんから。そんな人間の語る成功譚とそこから得られた教訓など、恋愛にしろ仕事にしろ、ろくでもないに決まってます。
セックスした人数を恋愛した数だと考えているような人の語る話もイヤな感じがします。セックスはセックス、恋愛は恋愛。セックスなんて恋愛が介在したりしなくてもできるものです。漁色家の体験談は面白いです。漫画家の佐藤まさあき先生の「『堕靡泥の星』の遺書―さらば愛しき女たち―」とか最高に面白かったです。しかし、自分の金や社会的地位を担保にして女性を口説いてるだけなのにも関わらず、それを隠匿したまま恋愛テクニック自慢みたいに語られたりしたら噴飯ものでしょう。正直に「どんな手をつかってでも女とセックスする方法―不細工なキモヲタの自分でもセックスできた―」みたいな本を書いてくれた方がましというものです。まあ、開き直られたら開き直られたで不快なので読まないとは思いますが。
私は女好きが悪いとは思っていません。火野正平や、人妻と駆け落ちした真剣師の小池重明のことは好きです。確かに社会人としては破綻しているかもしれませんけど、何か純粋なものがそこにあるように感じるのです。いや、別に純粋でなくてもいいんですよ。金や社会的地位を担保にして口説くなら、相手の体を求めてるだけの自分を素直に認めて、黙っとけばいいんです。それを恋愛とか綺麗事にして世間に訴えたら違うでしょうという話。だいたい、自分のモテ自慢をかねたような恋愛論をだすような人は不誠実かバカかどっちかなのです。本当のことを書かないなら、モテるためのヒントを求めて必死に読んでるような読者に不誠実です。自分の女性の口説き方、ようするに女性の騙し方をバカ正直に書くのはバカというものです。本当に賢い悪い男はそんなもん書きません。騙しのテクニックなんて披露したら、それ以降そんなもん使えなくなるじゃないですか。世間から賞賛されたいために騙しのテクニックを披露するような杜撰さが不快なのです。
恋愛論を語るときに容姿で云々されるような人は、実際のところ容姿で非難されているわけではないのです。その人から欺瞞や尊大の香りが伝わってくるけれども、明確な事実が判明しないからはっきり非難することもできない。そこから生まれる苛立ちが、子供が不快な人間に対して本当に不快な部分を論理的に指摘できなくて、ついついブスとかハゲとか言ってしまうように、 デブとか言わせてしまっているのだと思うのです。
【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っている。好きなアイドルは、イニーミニーマニーモー。
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オススメ書籍:『堕靡泥の星』の遺書 さらば愛しき女たち(松文館)/佐藤まさあき
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