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みんなが嫌いなYouTuber:ロマン優光連載18

2014.11.14(金)


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第18回 みんなが嫌いなYouTuber

 みなさん、日々楽しく暮らしてますか? 自分は、イニーミニーマニーモーという大好きなアイドルが活動休止から事務所移籍して復活したのはいいけど動員がなくて大変な状況なのに、お金と時間がなくてライブに行けず苦しい思いで日々過ごしており、そんなやるせない気持ちを『魔人探偵脳噛ネウロ』の葛西善二郎が出てくるパートだけ読み直してやり過ごしてます。善二郎かっこいいよな!
 それはともかく、自分の周りからYouTuberのヒカキンさんに対する怒りの声を聞く機会が増えてきました。要約すると「なんで、あんなつまらないもんが人気があるんだ! 理解できない。」という感じですか。編集氏からもヒカキンさんに対するディス発言が届き、「まあ、みんながそういうならどれだけつまらないか試しに見てみよう」と色々と見てみてみました。確かに面白くなかったです。でも、結論から言えば面白くないからこそ人気があるのかと。
 ヒカキンさんのやってることはクラスの人気者程度のレベル。思いつきでなんかやって、たまに面白そうな顔芸もどきをする程度。確かに笑いとしてのレベルは低いです。でも、これでいいんですよ。高いレベルのお笑いなんてものを求めてる人なんて世の中そんなに居ないんですよ、多分。
 食にあまり興味がない人っているじゃないですか、美味しい店とか別に探したりせずに、チェーン店で全部すましてしまい特になんの不満もない人たち。その店のメニューの中での好き嫌いはあるけど、わざわざ美味しい店を探したりしない。美味しいものを食べたら食べたで美味しいと思うけど食べれないなら食べれないで別にかまわない人から、味に対する経験があまりに無さ過ぎてチェーン店以外の味を必要としてない人まで色んなパターンがあるとは思います。利便性が一番。そういう人は食について言及することがあまりないので(当たり前ですな、その人にとって食はあまり重要でないんですもの)、わかりにくいのだけど、かなりの数がいます。
 笑いに関してもそういうスタンスの人が大勢いると考えれば、ヒカキンさんの人気もわかります。味に対して欲望の少ない人がいるように、笑いに対して欲望が少ない人がいるんですよ。そういう人だって欲望が少ないだけでそれを必要とはしてるのです。YouTubeは見る分に関しては無料だし、ヒカキンさんやたら広告出てくるから掘ったりしなくていいし、ちょうどいいんじゃないすかね。お金のない小中学生のファンが多いのもわかります。昔はテレビがそういう部分をまかなってたんだと思いますが、今の若い子そんなテレビ見ないもんね。

このままだと文化が衰退する

 放送媒体とか紙媒体とかだと、放送作家やプロデューサー、編集者という人たちがいて、その人たちのセンスの良し悪しはおいといて、選別されたり手がいれられたりします。お笑いだったら、最低限のお笑いの歴史やフォーマットを踏まえたものでなければ出られないし、そうなるように矯正をされます。
 ネットで自分で発信するなら、そういった第三者の「編集」は加わることはないので生のままの状態で発信されます。その結果、ヒカキンさんぐらいの笑いでちょうどいい人がたくさんいるということではないでしょうか。ヒカキンさんがもう少し面白ければ、早い段階から既存の媒体からのアプローチがあり、その枠の中でつまらないという烙印を捺されて終わってしまい、今みたいな年収を稼げるようにならなかったでしょうから、ほどよい感じにつまらなくて幸運だったと思います。いったん数字を持ってしまえば既存メディアもどんなにつまらなくても受け入れてくれますからね。
 生活レベルでいうと誰も困らないし、これでいいんでしょうけど、文化的なことを考えてしまうと不安になりますよね。センスの良い有能な(あくまでセンスの良い有能な人だけです)プロデューサーや編集者、批評家というのがどれだけ文化というものに貢献してきたかというのが逆説的によくわかります。
 音楽でもお笑いでもなんでもそうだけど、誰にでもわかるものが良いものかというと別にそうではないんですよ。 誰にでもわかるものには高度な表現として誰にでもわかるようになってるものと、程度が低すぎてバカにだってわかるようなものの2通りあって、それを混同しちゃいけないんですよね。混同してるとバカにでもわかるものじゃなくて、バカしか喜べないものがはびこってきてしまうんです。わかりやすいことは良いことだけど、それだけが絶対の基準になるのはおかしなことです。
 〝食〟に大人になる過程で色々なものを食べて経験を積まないとわからない美味しさがあるように、色々な経験を経てからでないとわからない〝表現〟というものはあるのです。高等数学はわからないし生活に必要ないからいらないというのと同じで、わからないから必要ないとか価値がないとかいうのでは絶対にないですから。「わかりやすさだけ」を求めてると文化は衰退していくだけです。今、ヒカキンさんに夢中な子供たちの中には一生ヒカキンさんでいい人もいれば、色々な笑いの表現を知っていくなかでYouTubeにあげてしまった自分のヒカキンなりきり動画を生涯の不覚として身悶えることになる人もいるでしょう。願わくば、色んな笑いの表現を知り、色んな笑いを楽しめるようになる子供たちが多くならんことを。

【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っている。好きなアイドルは、イニーミニーマニーモー。

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