丸川珠代の「愚か者めが」発言が浮き彫りにした「悪夢の民主党政権」という幻想
2023.02.02(木)
自民党が民主党政権時の政策を復活
自民党の丸川珠代参院議員が2010年の「この愚か者めが」という野次について、反省の弁を述べる事態に追い込まれました。
ちなみに、野次の全文は「この愚か者めが。このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん」だそうです。いつの時代の人なのか謎な言葉遣いですが、前もって一字一句この野次を飛ばそうと決めていたんですかね。それとも普段からこういう言葉遣いなのでしょうか。謎です。
自民党的に当時この野次はお気に入りだったようで、「この愚か者めが」Tシャツも作成して、民主党バッシングに勤しんでおりました。
それはさておき、丸川議員のこの野次、もはや丸川議員の代名詞となっているため、何に対しての野次だったのか覚えていなかった人が大半なのではと思うのですが、当時の民主党政権による所得制限なしの子ども手当導入に対してだったんですね。
この手当は、自民党政権復活後に結局所得制限が設けられました。結果、2023年の日本においては、少子化がますます進む事態となっております。
少子化を重く見た自民党政権は、今回児童手当の所得制限を撤廃するよう動くこととなり、過去の批判との整合性が問われて、丸川議員が反省の弁を口にする事態となったわけです。
今回、十数年ごしに旧民主党政権の政策の正しさを証明することとなったわけですが、そもそも民主党政権って何が問題だったんですかね。故安倍晋三元首相の「悪夢の民主党政権」というフレーズがあまりにも独り歩きしたため、民主党政権がとにかくなんでもかんでも酷かったという印象になっていますが、実際のところどうなんでしょう。
民主党政権凋落の理由は消費増税
民主党政権時、最初に疑問符がついたのは、鳩山由紀夫内閣における「最低でも県外」でしょう。民主党は沖縄の米軍普天間基地の移設に関して、決定していた辺野古ではなく県外移設をマニフェストに総選挙を戦い、見事勝利。
しかし、県外移設は現実的ではなく、鹿児島県徳之島への移転なども検討するもうまくいかず、鳩山内閣は八方塞がり。小沢一郎党幹事長の金銭問題なども相まって、行き詰まった鳩山内閣は支持率も下がった結果退陣を表明せざるを得なくなりました。
政権交代の可能性がある時は、できもしない公約はするもんじゃないですね。
まあ、自民党も野党時代に「TPPへの交渉参加に反対」を掲げたものの、政権復帰したらあっという間に撤回しましたが。自民党の支持者は寛容で、思えば安倍さんは幸せ者でした。
鳩山内閣退陣後、発足したのは菅直人内閣。菅内閣は発足時高い支持率を叩き出し、鳩山内閣末期の支持率からV字回復を果たします。基地移設問題もチャラになり良かった良かった。と思ったら、参院選で菅首相が消費増税に触れたもんだから選挙直前に支持率が急落。
そこから民主党は増税狙い政権のイメージがついてしまい、常に批判にさらされるようになりました。東日本大震災という国難でも揚げ足を取られつつ、野田内閣にチェンジするも、消費増税に前向きな野田内閣により、自民党・公明党に消費増税を呑ませる代わりに自爆解散を果たし、政権交代となったわけです。
消費増税を行ったのは自民党政権
客観的に見て、民主党政権が政権から滑り落ちたのは、消費増税のせいと言っていいでしょう。それによって「民主党政権はダメだった」というイメージがつき、安倍さんの「悪夢の民主党政権」というフレーズをなんとなく受け入れる人が多いと思うのですが、でも考えてみてください。
民主党政権凋落の理由は消費増税です。でも、実際に消費増税を行ったのは自民党の安倍政権です。それに関しては、皆なんとなく受け入れてしまっているわけです。まあ実際問題、財務省の陰謀云々じゃなく、財務省とはそれなりに距離があった安倍政権ですら延期の末に消費増税したわけですから、消費増税は必要だったのでしょう。
「国債はいくらでも発行できる」といった類の夢物語を信じている陰謀論者の人はそう思ってないかもしれませんが、大抵の人は現在の10%の消費税を受け入れているでしょうし、政権を現実的に担っている与党政治家、野党でも政権を担わんとしている政治家で、消費税は減らせると思っている人なんていないでしょう。共産党とかれいわ新選組みたいに、絶対政権を担うことはなく、無責任に好き勝手言える政党を除けば。
「悪夢の民主党政権」のイメージの根源は消費増税なのに、消費増税は受け入れられている。これっておかしくありませんか。もちろん、東日本大震災で何もかも上手くやったわけじゃなく混乱もあったでしょうけど、100年に1度の国難レベルの災害に対して、混乱するなというのが無理な話。自民党政権であっても混乱していたでしょう。
新型コロナという国難では自民党政権も散々批判されました。批判自体は必要なものですし、全然あっていいとは思いますが、それはそれとして、自民党政権もコロナ対策頑張ってはいたでしょう。
民主党の政権運営が稚拙だった部分は否定しませんが、まあ自民党ノータッチの政権が久しぶりにできたんだから、暖かく見守っていい範疇だったんじゃないでしょうか。中国に媚びてるとかのネトウヨ的な批判は論外として。色々問題があると言うなら、安倍~岸田に至る自民党政権も色々問題はありますしね。
というわけで、民主党政権の政策的なことは「悪夢」と言うほどのものではないでしょう。
ただそのなかで民主党政権と、現在に至る立憲民主党など民主党を引き継ぐ界隈に問題があるとすれば、すぐに仲間割れを起こす雰囲気ではないでしょうか。民主党政権時は、小沢一郎さん派と反小沢さん派のギクシャクがゲンナリでしたし、その後の民主党系の政党のくっついたり離れたりもどうにかしてほしいものです。自民党はなんだかんだでまとまっていますからね。
まあまあ自民党マンセーなネトウヨの皆様は今後も「悪夢の民主党政権」と未来永劫唱え続けてもらえればいいとして、それ以外の「普通の日本人」の皆様は、丸川珠代議員の「この愚か者めが」野次への反省を機に、そろそろ「悪夢の民主党政権」という認識を変えてみてもいいのではないでしょうか。