
注目の作家が描くペットと人の話「きみにかわれるまえに」

地球に向いていない人はカレー沢薫を読もう!
カレー沢薫さんの存在に気付いたのは、どこかのWebに載っていたエッセイでした。そこにカレー沢さんは「自分は社会に向いてない」というようなことを書いており、その最後に「地球に向いていない」と綴っていました。「地球に向いていない」! 引きこもり・こじらせ系人種にとって、こんなにピッタリ自分の属性を表した言葉があるでしょうか。それ以来、ずっと注目してきた作家さんです。
今やカレー沢薫さんは数々の爆笑エッセイや漫画などで大活躍の人気作家さん。最近では「面白い」ジャンルを一手に引き受けている感があります。面白いライターをめざしている人は存続の危機!というくらい、何読んでもかなり面白い。特にネットのエッセイ関係では、「カレー沢前」「カレー沢後」という時代区分ができそうなくらい、ひとつの潮流を完成してしまった気がします。そんなカレー沢さんが書いたというので、きっとハートウォーミングに見せかけて笑わせるつもりでしょ? と思った「きみにかわれるまえに」。でも、全然予想と違いました。
ペット好きな方は「犬の十戒」(「私の一生はだいたい10年から15年です」といったペットを飼う際の心得を書いたもの)などを知っていると思いますが、その「戒」っぽいものに沿って、物語が展開されます。いつものようにたびたび笑わせにきてるんですが、それもありつつじーんと泣ける話なのでした。だからといって、よくペットを飼っている人が描いている「犬最高!」「猫最高!」という話ではなくて、ペットの逸話を通して人間の人生や本質というものに触れている気がします。そして、相手がペットであろうが、人間であろうが、関係というものの難しさを感じて、ちょっと胸の痛い展開も。
あと、このマンガもそうなんですが、なぜかカレー沢さん、「漫画ゴラク」関係で連載をしているんですよね。「漫画ゴラク」がわからないよい子はググってみてください……知らなくてもいいけど……登場人物にヤンキー率が高いのは、読者層を意識したものか!? と思ってクスっと笑ってしまいました。
ペットを飼ってるお金持ちに「ケッ」と思っている地球に向いていない人たちにも、かなりおすすめの一冊です。あと、カレー沢さんは自ら「カレー沢は俺が育てたキャンペーン」をファンにお願いしているようですから、後世「私が育てた」というために、お早めの購入をおすすめします。
『きみにかわれるまえに』(カレー沢薫著)は日本文芸社より発売中。740円(税別)
https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b510269.html
(文/吉田直子)
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