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    実話BUNKAタブー2021年3月号

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生活・知恵 2019.03.22(金)

「むしろ見せていく方向で」ある女性の乳がんエッセイ

 

一例としての軽やかな「私」の記録「#tbk_yuko」

  もはや、日本人の2人に1人はがんにかかる時代。親戚や肉親にがんにかかったことのある人が一人もいない、なんて人はいないでしょう。そんな身近な病気にかかわらず、やはり「がん」と聞くと、なんとなくショックな気がしてしまうのが私たちです。
 そんながんに対する向き合い方を教えてくれるのが、アーティストのYukoNexus6さんのフォト&エッセイ「#tbk_yuko」です。本書は2013年に乳がんにかかったYukoさんが、当時SNSでつぶやいていた闘病の記録を中心に編纂されたもの。フォトグラファーの太地悠平さんによる、本人の手術前・手術後の写真も掲載されています。当初は、左乳房全摘手術を受けることになったYukoさんがプライベートな記念に写真を撮っておこうと思っていただけで、出版の予定はなかったとか。でも、それだからこそ、伸び伸びと被写体となっているYukoさんと、正直な闘病の記録が、胸に響いてきます。
 Yukoさんは病院の検査も面白がり、がん保険に「サンキュー」と言い、切除後の身体を「私の愛しい乳がんボディ」と名付け、とても軽やかに病気と向き合っているように思えます。それは、実はYukoさんが15年来の双極性障害を患っていたからでもあり、「鬱に比べればやることが多くて楽に思えた」からだと告白しています。だから、その前向きさをみんなに「どんどんやろうよ!」と押し付けるのではなく、「自分は軽症だったからこう思えた」「もっと大変な人もいる」「鬱との付き合い方をわかっていたから。人によっては、がんの治療で鬱になってしまう人もいると思う」と、必ず注記することを忘れていません。そのやさしさが、読後感を爽やかにしています。
 もちろん、もっと重症の患者さんもいるでしょうし、がんという病気を軽く見てはいけないと思います。でも、私自身はこの本を読んでなんとなく、「こういう向き合い方もあるんだな」と、ちょっとほっとさせてもらえるところがありました。また、鬱に関する描写も結構あるのですが、Yukoさんの記述はどこか淡々と客観的に自分を見ていて、むしろ救われる気持ちになりました。
 本書にも書いてありますし、出版記念のトークショウで本人も話されていましたが、Yukoさんは若い頃、スーパー銭湯で片胸を全摘したおばあさんを見たことがあったそうです。ですから、がんを宣告された時、逆に「それ以上ひどいことにはならないから大丈夫」と思えたそうです。
 日本人はいろいろなことを「なかったこと」にすることが得意です。それはそれで美徳でもあると思いますが、「あったこと」をはっきりとさらすことで、救われる魂もあるのではないでしょうか。本書を読んで、そんな感想を持ちました。

(文・吉田直子)

『#tbk_yuko』は2,800円(税抜)で、ぶなのもりより発売中
入手先ご案内はこちら(版元ドットコム):
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907873059


 


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