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生活・知恵 2016.09.10(土)

専業主婦・二児の母から一転、AV女優へ。書籍『ゲスママ』の著者・神田つばき氏に聞いた「40代女の欲望」

 

 30代で離婚し、シングルマザーとなった女性が、子供と共に生きていくためにAV女優となった―という物語であれば、当世、さしてめずらしくはない。語弊を恐れずに言えば、ごくありふれているとさえ言える。

 しかし、離婚した二児の母が、「経済的な理由」からではなく、自身の「欲望の実現」のためにアダルトの世界に入った、しかも40歳を目前にして―としたら、いささか話は変わってくるだろう。

 9月10日に発売された神田つばき氏の自伝『ゲスママ』は、38歳で子宮けい癌に罹患し、子宮を全摘したことを契機にセックスレスであった夫と離婚、その後、働くシングルマザーとして銀行に勤務する傍ら自らアダルト業界へと飛び込み、AV出演、男性向け成人雑誌の原稿執筆を行い、果てはプライベートにおける極北の性愛行為をカメラに収め、自身でメーカーを立ち上げてその映像を売り歩いた―という神田氏の、端から見れば正気の沙汰とは思えない、性の冒険譚となっている。

 一般的に、40歳という年齢は女性にとって一つの節目だろう。いわゆる中年期に差し掛かり、「女」として現役であることを自ら躊躇し、またそうあることを遠慮すべきであるという空気が周囲に漂い始めるのもこの頃である。しかし、一方で欲望そのものが消えてなくなるわけではない。いや、むしろ20代や30代の頃よりも強く「女」としての欲望が沸々と湧き起こるのが40代であるという声もある。神田氏がまさにそうであった。『ゲスママ』に綴られた性の冒険のほとんどは、神田氏が40代であった頃の出来事である。

 古来、暗黒大陸とされてきた女の欲望、とりわけ苛烈を極める「40代女の欲望」について、神田つばき氏に聞いた。

「アレもコレも感じる!」「まだまだ女なんだ!」と自分の肉体を再発見するのが40代

—著書『ゲスママ』によると、神田さんは38歳で離婚され、その後、自らの意志によって緊縛モデルとなり、またAVにも出演されています。そうした性の冒険が始まったのが38歳という年齢であったことについて、なにか特別な意味はあるのでしょうか。

神田 たまたま38歳で子宮けい癌が見つかり、すぐに全摘手術したんですね。結婚生活、子育て、自分なりに我慢もしてきたのに、「子宮取られちゃうの!? 私、女じゃなくなっちゃうの?」と、ショックでしたし、何か火が付いちゃったんです。「これで女を終わりにするなんて、いやかも……!」って。
 女の人って、自分の人生を劇的に変えるような出来事がないかな、といつも夢見ているものです。それはもう少女のころから、白雪姫とかシンデレラとか読んで育ちますから。
 30歳ならまだ、そんな夢物語が現実になってもおかしくない気がするけれど、40歳のシンデレラって想像しづらいんですよ。だから30代後半の女性の自分を変えたい願望ってものすごい熱量を持っているんです。
 その熱源に子宮けい癌がトリガーになって、おとなしかった私が暴発しちゃった!……そんな感じです(笑)

―女性の欲望は、20代、30代、40代、50代と変化していくものなのでしょうか? 変化していくものだとして、どのように変化していくのでしょう?

神田 性欲も性感も、20代はまだ発展途上なんですよ。最初はほんの一瞬イクだけだったのが、だんだん中も感じるようになる、奥も感じるようになる、人によっては「どこを刺激されてもイク」ようになる(笑)。
 憧れも不安も強い20代、「もっと感じられるはずだ」と気づく30代、実際に「アレもコレも感じる!」「まだまだ女なんだ!」と自分の肉体を再発見する40代、閉経で性欲もおだやかになり、相手のこともいたわってエッチできるようになる50代……ですね。
 40歳前後の頃は、朝、目が覚めた瞬間から、「やりたい……」って思ってました。私、どうかしてるのかもって悩みましたよ(笑)

―たとえば結婚して子供がいるという女性の場合、「妻」であり「母」であり「女」であるという複数の顔を持って生きることになり、全部を充実させたいと思っても、とても難しいと思うのです。「妻」でありながら「女」である、「母」でありながら「女」であることの難しさについて、どのようにお考えでしょうか?

神田 同じ家の中にいながら、昼は妻として母として、夜は女として……っていう演じ分けができなくなっていますよね。昭和中期まではそういう文化だったんですよ。夜になると、普通の奥さんでもシフォンのネグリジェを着て、「子供は寝なさい」と。そこから大人の時間ですね。いつものパートナーでも、視覚的にハッとさせるような仕掛けが大事なのに、現代はそういう努力をしなくなって、夫も妻も外で不倫するようになってしまいました。

―著書『ゲスママ』において神田さんは、「性愛」というもっともプライベートな部分について、赤裸々過ぎるのでは、と読み手が当惑してしまうほどに、はっきりと綴られています。本書を書こうと思った動機、あるいは本書に込めた思いについて、お聞かせ頂けますでしょうか?

神田 最近、「女性を物扱いしてしまった」という事件がありましたけれど、女性もいろんなことを思い、悩み、傷つき、考えているわけです。それがわかっていない男性が多すぎます。
 でも、それを男性が具体的に知る機会って、実は少ないです。好きな人には嫌われたくないから、女性も赤裸々なことを話さないんですよね。
 性に臆病な女性は性欲がないというわけじゃないし、性に積極的な女性は何をされてもOKというわけじゃない。なぜ彼女はそうなったのか、という物語が女性一人ひとりにあるのです。
 想像力は愛情の基本です。彼女の物語を理解しようという気持ちをもって、女性を大切にしてほしいな、と……そんな願いから、自分の場合を書きました。

(文・構成/西野陽菜)

(著者プロフ)

神田つばき
1959年、東京都生まれ、獨協大学仏語学科卒業。38歳で離婚、派遣社員として銀行に勤務。39歳で「緊縛美研究会」にモデルとして参加、41歳からフリーライター、AV女優として活動。2006年、女性が企画したSMやフェティシズム映像をAV制作するメーカー「ユーストレス」設立。2010年から、エ口スをテーマとする女性作家のコンペティション「東京女子エロ画祭」主宰。AV審査団体初の女性理事、日本官能文学芸術協会理事、NPO法人女性の健康とメノポーズ協会認定「女性の健康とワークバランス推進員」。

おすすめ書籍:ゲスママ/神田つばき(コアマガジン)
http://books.rakuten.co.jp/rb/14438444/


 


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