
『ワンピース』の伏線回収と騒ぐオタクがキモすぎる【後編】

【本記事は後編記事。前編記事はこちら】
止まらないワンピース批判
国民的人気漫画『ワンピース』に異変が起きている。単行本90巻、現在も続く「ワノ国編」に入ってから読者の不満が止まらないのだ。
その実情を探る本記事では前編記事に引き続き、『ワンピース』が批判を受けるのも仕方がない……そう思わせられるポイントを探っていきたい。
扉絵にも伏線があるが…
『ワンピース』には、各話の「扉絵」を用いた伏線も多い。
574話で衝撃の死を遂げたエース。その伏線になっていたとされるのが、520話の扉絵。
トランプに興じる麦わらの一味。ルフィの右手にはスペードのエース、左手にはドクロのジョーカーが握られている。522話でエースの公開処刑が明かされたことを考えても、この扉絵は「元スペード海賊団船長・エース」の「死」を暗示していたと見て間違いないだろう。なかなか秀逸な伏線の例だ。
一方で、わざわざ張る意味がない伏線や、とても伏線回収とは呼べない稚拙な帳尻合わせも。
421話の扉絵、ビリヤードをするロビン。ボールには「3」「5」「8」の数字。これは革命軍の「サボ」「コアラ」「ハック」の語呂合わせで、のちにロビンが革命軍と行動をともにすることを示唆しているのだとか。
サボはともかく、コアラやハックはさほど重要なキャラではないし、ロビンと革命軍との繋がりも取り立てて深くは描かれていない。扉絵と見れば、すぐに伏線を探す考察厨のこじつけでは?
覚醒によってニカ化したルフィの心臓の音「ドンドットット」。空島編、エネルを倒したあとの宴で響く太鼓のリズムも「ドンドットット」。
ワノ国に現れたズニーシャの「解放のドラム」という台詞からも、重要な繋がりを匂わせているのは確かだ。
ただ、土着民の祭りの太鼓の音など、古今東西「ドンドットット」だろう。実際、空島でキャンプファイヤーを楽しんで場面でも、同じ擬音が使われている。もともと構想にあった伏線なら、もっと特殊なリズムにしていたはず。これも後付け確定だ。
空島の宴やキャンプファイヤーでのルフィのシルエットと、月に照らされて浮かんだニカのシルエットとの類似を「見事な伏線回収!」とする向きもあるようだが、よく見て欲しい。ルフィ以外のキャラクターも、同じようなシルエットをしているから。
人は見たいように見て、信じたいように信じるものだが、なんでもかんでも伏線回収とするのは、偏執的な狂気を感じる。
シンクロのなにが喜ばしい?
尾田栄一郎が用いる伏線手法に「前後半のシンクロ」がある。
ワンピースのストーリーは、「2年の特訓期間」を境にして、大きく前後半に分かれている。「2年」の直後、後半がはじまる単行本60巻の表紙が、第1巻のものとまったく同じ構図で描かれている点からも、作者が意図的に仕立てているのが分かる。
この前半と後半で、展開や設定、登場キャラ、台詞などが、たびたび類似しているのだ。
後半の「ドレスローザ編」は、前半の「アラバスタ編」をトレースするように進行し、同じく「ゾウ編と空島編」「ホールケーキアイランド編とスリラーバーク編」「サンジ奪還編とロビン奪還編」にも、偶然とは思えないシンクロが見られる。現在佳境を迎えている「ワノ国編」とシンクロするのは、前半の山場「ウォーターセブン編」のようだ。
シンクロが発見されるたび、伏線好き読者は歓喜しているが、いったいなにが喜ばしいのか? 前後半がシンクロしていることに、なんの意味が? そんなものは、単に描写を使い回した自己模倣、「セルフパクリ」ではないか。
ほぼすべての設定がパクリ同然
もともとワンピースには、現実世界の史実や寓話などをモデルとした設定が多い。フランス革命然り、ジャックと豆の木然り、桃太郎然り。今話題の「ジョイボーイ」も、世界の民話やファンタジーを集めた『想像と幻想の不思議な世界』という書籍にある、その名も「ジョイボーイ」が元ネタとされている。
モチーフやオマージュと言えば聞こえはいいが、要は自己模倣と同じ「パクリ」だ。ときおりならば苦肉の策として許容したいが、ワンピースはほぼすべての設定が元ネタありきと言ってもいいほど。
伏線という謎を大量にバラまいて読者の興味を繋げるのも、その回収によって構成が巧みであるように思わせるのも、全編が自己模倣やパクリで埋め尽くされているのも、すべては作者・尾田栄一郎の独創性が致命的に欠如しているがゆえ。そんな作品が5億部も売れているというのだから、トレースやパクリで安易に儲けようとする漫画家が後を絶たないのも無理はない。
それにしても、安易に伏線を張りまくった落とし前は、2025年までにつけられるのだろうか? 「エネルが月で見つけた壁画の意味」「自称白ひげの息子エドワード・ウィーブルの正体」「トキが破いたおでんの手紙の続き」「ジュエリー・ボニーとくまとの関係」「ローが首謀したロッキーポート事件」など、未解決の謎はグレイターミナルのゴミ山ほどあり、とてもあと3年ほどで回収しきれるとは思えない。
まぁ、独創性は欠如していても、強引な辻褄合わせはお得意な尾田大先生のこと。「実はゴムゴムの実じゃありませんでした〜。にかっ!」的な逃げ道は、周到に用意されていることでしょう! 実は『ワンピース』自体も、次回作の伏線だったりして?
【本記事は後編記事。前編記事はこちら】
初出/『実話BUNKA超タブー』2022年6月号
写真/『ワンピース』100巻書影
[PR]