
友達のアイドルたちがコロナでやめていく中で:「南にこの新人声優物語」連載6

◆アイドルから声優へ! 月イチ連載!
南にこの新人声優物語
連載第6回 友達のアイドルたちがコロナでやめていく中で
こんにちは! 新人声優の南にこです!
みなさん、お元気ですか!?
本当は今回、このコラムで新型コロナウィルス関連のことは書きたくありませんでした。もっと楽しいことを書きたいと考えていました。でもやっぱり、今起きていることは、もう大げさじゃなく人間の歴史上でも凄いことですし、そのことによって人生が変わってしまった人たちも多く多くいて、そして私のお友達たち――アイドルの子たち――にもいて、だから、この今のリアルを書いておきたいと思い直して、キーボードを打っています。
アイドルをやめると病んでしまうと書いたこと
緊急事態宣言も解除され、ちょっとづつですが、日常が戻りつつあります。でもなかなか戻らない日常もあります。それは、私が昨年まで6年6ヶ月間いた世界――「地下アイドル」「ライブアイドル」の世界です。
この場で具体的な名前は出せないですけど、私のお友達のアイドルの子たちで、この間のコロナによる影響で、アイドルを卒業――辞めていく子たちが、少なからずいます。それも自分から望んでのことでなく、仕方なく……悔しさや悲しさを抱えながら……けど決断をして、辞めていく子たちです。
私は昨年の秋にアイドルを卒業させてもらったとき、このコラムの連載第1回に<『アイドル卒業のほんとの意味。そして卒業するアイドルが病んでしまいがちなリアル。』>というタイトルでコラムを書かせていただきました。
https://bucchinews.com/geinou/6591.html
そこで、私はこう書いています。
《そしてアイドルを卒業すると、「大丈夫? これから何するの? 大丈夫?」と多くの方から言われてしまう。繰り返しますけど、言われる方は本当に善意からだし、全然悪くはないです。でも現実のアイドルの立場からすると、「アイドルやめて、何するの?」は、うん、やっぱりどうしても、キツい言葉に思えてしまう、そう受け止めちゃったりしてしまうんです。これ、本音です。深い部分の本音。》
これは私みたいにとても幸せな形でアイドルを卒業させてもらった者ですら、こういう感じになってしまう……ということです。この連載第1回では、さらにこうも書いています。
《(アイドルを卒業すると「病みがち」といわれるけど)「病む」ことだって人生経験として捉えてしまえるのかなとも思います。病むのはよくないし、病みたくはないですけど、でも挫折や足踏みを過剰に恐れることもないですよね。》
我ながら、前向きな言葉だなぁと思います。間違ってはいないとも思います。ただでも、今この言葉を、このコロナの状況で「アイドルを辞めざるをえなくなった子たち」に真正面から言えるのかと問われれば――私はためらってしまいます。実際、ためらいます。
アイドルを辞めるということは、自分から望んで決断してもつらくて病みがちなことなのに、「やめたくないけど、やめるしかない」なんてどれだけキツいことなのか。言葉もありません……。
ライブがないと生活ができない
コロナの状況下ではライブハウスが感染被害の温床として大きなニュースになりました。ライブハウスは全面的に自粛をせざるを得ませんでした。テレビや新聞などの報道では、「ライブハウス=ロックバンド」のように多く解説されていましたが、私が実際にアイドル活動をしていた実感から言わせてもらえれば、もうここ数年は「ライブハウス=アイドル」というくらいに、アイドルのライブやイベントが主流になりつつあったと思います。かつて「ロックの聖地」だったようなライブハウスさんでも、いつの間にか「昼の公演はほとんどアイドル」「夜のライブも半分近くアイドル」みたいに移行していったんですよね。そもそも「地下アイドル」という名称も〝主な活動の場が地下にあるライブハウスだから」が語源のひとつ〟とされています。「ライブアイドル」に至ってはもうほんとそのまんまですしね。
でも「地下アイドル」がライブハウスの主流になっていくのって、わりとハッピーな形で進んでいったんじゃないかと思うんです。ロックバンドさんだとチケットの売上げと、あとドリンク=お酒の売上げが勝負らしいのですが、アイドルの場合、ライブ後の「物販」「チェキ撮影」などがビジネスとして確立しつつあって、例えばですが、ライブにノーギャラで出ても、「物販」で数字をしっかり出せれば、アイドル運営側はお金になります。ライブハウス側はしっかり入場料収入を得れます。「地下アイドル」「ライブアイドル」が全国に生まれ、多く活動できたのは、ざっくりいえばですが、こういう「箱(ライブハウス)と運営(アイドル)のウィンウィンな関係」があったから……という面も大きかったはずです。ライブハウスを舞台として、ライブをしっかりやって、ファンの方たちとしっかり交流すれば、アイドルは続けていける――こんな構図があったからだと思うんです。
でもそのライブハウスが、全国のライブハウスが、自粛せざるを得なくなってしまった。
私の友達のアイドルの子はいいました。
「ライブできないとね、生活できないよね、1ヶ月とか何もないと生活できないし、あと何ヶ月こういう状態が続くかもわからない、辞めるしかないんだよね」
本当に、本当に、悲しいです。悲しいとしか言えない自分自身が情けなく思ってしまうほど悲しい。
でも、でも、でも、強がりを言わせてもらえば、悲しさって想いはそれが強ければ強いほど、宝物にもなるんじゃないのかとも思うんです。
悲しさの大きさが、そのことをどれだけ真剣にやってきたかのひとつの証だとすれば、今、アイドルを辞めざるをえなくなった子たちの悲しみは、いつの日にかは、その子にとっての「大きな大きな宝物」になるんじゃないのかなって。
どうか、悲しさに負けてしまわずに、今は、悲しみを思いっきり抱きしめてください。
ただ、ただ、少しづつですが、前向きな状況も生まれてきています。
私の出身母体である『あいどるかふぇ 2ねん8くみ千葉校』は、衛生面に最大の配慮をしながら、カフェ内でのステージを再開させました。
そして、「にっぱちグループ」のひとつである仙台の『LIVE HOUSE 88(eighty eight)』も営業再開を目指して頑張っておられます。
私も、ひとりの新人声優として、今やれることを精一杯やっていきます。
悲しみを思いっきり抱きしめながら、悲しみに溺れないように
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(4週ごとに月曜日掲載)
イラスト:りべりず 南にこ(イメージアイコン)
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★2ねん8くみ仙台校 HP
http://www.2-8cafe.com/
【南にこ:プロフィール】
2015年、『あいどるかふぇ 2ねん8くみ千葉校』に入店。その後、『千葉校』から発展した選抜ユニット『Asterisk』リーダーとなり、アイドルグループ『SEVEN4』メンバーも兼任する。さらに日本&タイ混合アイドル『Siam☆Dream「サイアム☆ドリーム」』に抜擢され、タイ・デビューも果たす。
現在はアイドルを卒業し新人声優として活動中。
記事バックナンバー:
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