
人気を集める「オンボロラーメン屋」はうまいのか?

みんな気になるボロい店
最近のテレビ番組では、ミシュランに選ばれるような純粋にうまいラーメン屋よりも、今にも潰れそうなオンボロラーメン屋が重宝される。
『坂上&指原のつぶれない店』(TBSテレビ系)『絶メシロード』(テレビ東京系)あたりは、完全に見世物小屋のノリで、今にも潰れそうな飲食店にスポットを当て続けている。やってることは悪趣味だが、これも視聴率が取れるから。つまりは、国民の興味を反映した結果なのである。
我々がオンボロラーメン屋に魅せられる理由はなんだろう。
下には下がいると安心したいから。それも真実だろうが、それだけではない。「もしかしたら、けっこううまかったらどうしよう」そんな可能性を秘めているから、気になるのだ。
本稿では雑誌『実話BUNKA超タブー』3月号の老舗ラーメン屋巡り記事から、東京都内にある、とりわけパンチの効いた2店を紹介する。
ガソリン臭い有楽町駅のガード下
場所はJR有楽町駅のガード下。並びにはオシャレな居酒屋や飲食店があり、新橋や大阪・鶴橋のガード下のようなダークな雰囲気は一見ない。しかし「ねぎし」と「とりいちず」の間に、明らかに浮いているユルい看板が。
そこには、「しょうゆのかわらぬ味 東京 谷ラーメン」と、書かれている。
シンプルで簡潔。これなら誰にでも伝わりそうだ。そう、ここがラーメン愛好者の間では有名な谷ラーメンである。
昭和42年から続く谷ラーメン。
ラーメン評論家の田中一明は、自身のツイッターにて、こう評している。
「創業半世紀超えは、有楽町界隈でも立派な老舗の部類。ガラのうま味がじんわり沁み出したスープに太麺の組合せ。ここ、太麺なのがツボなんだよなあ」…ベタ褒めである。
ラーメン渡なべの経営者・渡辺樹庵のツイッターでは、「ノスタルジーです。薄~いスープですが、これが良いんだよなぁ、、、と思いながらも、同時に、これを良しとしたら、ここまでのラーメンの進化はなかったんだよなぁ、なんて思ってみたり」とやや辛口。
ラーメン雑誌にもちゃんと載ったりと、テキトーに作ってる店ではなさそうだ。
白地に赤文字は珍しくないが、なぜこの谷ラーメンの看板はヤバさが際立っているのだろう。そんなことを思いつつ、おそるおそる店に近づくと、ガソリンのような臭いが…。
店の周りにはスプレーで描かれたストリート感満載の落書きも目立つ。つまりパッと見の治安は悪そう。ちなみに、昔からここに店を構えているわけではなく、5年前くらいにわざわざここに移転してきたらしい。なぜなのか(なお旧店舗もガード下)。
ボロくても券売機はある。購入して中に入ろうとすると…開かない! 死ぬほど固い。扉の端が、段ボールとガムテープで補強されている。風を入れないようにだろう。そのせいもあるのか、まったく扉が開かない。もしかして従業員用の入り口で、本当の入り口は別にあるのか? 途方に暮れていたら、中から「いらっしゃいませー!」の声が。
それを聞いて、思いっきり扉を開けて入店。
中には客1人。なぜかお座敷もある。居酒屋感覚で訪れてもいいかもしれない。
ほどなくしてラーメンの到着。……ビジュアルは微妙だ。炊き出しに出されそうな見た目だ。
でも味は悪くはない。
麺は縮れた太麺で、歯応えはある。スープはあっさり醤油。化学調味料は使ってそう。昭和のサラリーマンが愛した味だそうだが、急いでいて金をかけたくない時には、最適だろうな。まあその辺のラーメン屋よりかはうまいと思うよ。閉店の噂があるのは残念だ。
墓場みたいな階段を上がった先には…
お次は、平和軒という店。最寄りがJR大崎駅で、立正大学という学校の目の前にある。
ちょうど学生の帰宅時間だったっぽいが(昼の2時くらい)、この平和軒には誰も入らない。
その理由はなんとなくわかる。この衝撃的な外装のせいだろう。
これは墓場みたいな短い石の階段を登ると見える平和軒の写真だ。
看板の「中華料理 平和軒」の文字が溶けてしまっている。
無論、看板のところだけ写真がブレているわけではない。
昭和41年オープンで、前述の谷ラーメンより1年早い創業。さらにルーツを辿ると昭和2年に目黒駅周辺で屋台を引いてた頃まで遡るくらい歴史のあるラーメン屋で、知る人ぞ知る名店なのだ。
中に入るとガラガラ。厨房から「いらっしゃいませ!」というテンパった声。ここが本当に名店なのだろうか…。
壁には、ラーメンが550円に値上げしたことを詫びる貼り紙が貼ってある。
最近、本田圭佑は730円のラーメンに「2000円払う」と豪語していたが、この平和軒のラーメンを食べると何と言うだろう。「…妥当では?」とは言ってほしくない。
水はセルフ。入れると薄い茶色。ステンレスのカビが溶けたものかと疑ったが、飲むと水ではなく麦茶だったので、茶色でも問題なかった。
心配しすぎてゴメン。
20分くらい待っただろうか。ずっと2時間ドラマがテレビから流れていたが、えらくつまらなかった。
「大変お待たせしました」という詫びとともにラーメンが到着。
スープは油多めでギトギトしていてびっくりしたが、そういうもんだと割り切ると、そんなに悪くはない。化学調味料もたっぷり入ってそうな味だ。チャーシューは控えめな肩ロース肉。麺は意外にも自家製麺で、チェーン店のような適当さはない。
なんだ、うまいじゃん。
結論。
オンボロラーメン屋はまずくはなかった。むしろ、味を追究している姿勢は感じられた。
これなら、日高屋やスガキヤといった大型ラーメンチェーン店のほうがまずさでは上だ。個人のラーメン屋は店主次第で突然なくなることもある。気になる人は今のうちに行っておくのが吉だろう。
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