
研究者も驚く清涼飲料水の表示ルール

清涼飲料水は「甘い水」といわれる通り、原価率も低く商売的にはオイシイものが多い。しかし、昨今のお茶ブームに見られる糖分離れ、大げさな広告で改善を求められるケース(脂肪にドーン!、やトクホウ!とトクホを誤認させる例など)、またトクホ自身の問題など、業界的には暗部を多々抱える。その中でも最近、食品研究者らすらびっくりしている話がある。
メジャーメーカードリンクの甘い罠? ホンモノと味が違う!?
「驚いてしまいましたよ…、まさかメイン果汁自体が違うものとは」とある食品研究施設群の人たち、いわば食品のプロたちがこう話していた。
本職がその表示の仕方でショックを受けるくらいとは、どんなものだろう。我々一般ユーザーは案外そのからくりには気付かない。メーカーも、特に狙っているものではないものと信じたいが。
その飲料、特に名を秘すが自販機でも売っているような「ブラジル・アマゾンが原産のとある栄養価の高い実アサイー(※写真参照)をイメージしたドリンク」らしい。パッケージにはそれらの栄養の豊富さや、その実の画像を押し出しているのだが、色は水の色をしている。
このドリンクの含有果汁は1%なのだが、それはその「アサイー」ではなく「マスカット果汁とぶどう果汁」(!)。肝心の「栄養価の高い実」は「エキス」で入っており、含有量もこれら2果汁よりも少なめだ(原料表示は多いモノ順なのでわかる)。 ドリンクの名前なのに!
飲んでみると前面に感じる味はやはりぶどう・マスカットで、マスカットドリンクを飲まされている気分となる。例のアサイーは入っていないわけではないのだが、そのアサイーには「超」を示す言葉まで付けられて、ここまで前面に出される割には…? 「水」の名も売りにしているので、メーカーサイドではあくまで水であるという言い訳は立つのだが。
ネットでの評価も二分「飲みやすい」「こんなの違う」
メーカーの肩を持つわけではないが一応フォローをしておくと、その「アサイー」自体は果汁をイメージしがちだが、実はヤシの仲間でワカバキャベツヤシとも呼ばれ、元の味は濃いものではない。そのため他のモノを混ぜて味を出すのは、先行した専業の飲料メーカーでもやっていることだ。また本場ブラジル産のそれはそんなに飲みやすいものではない。清涼飲料水でドロドロした水を売るわけにはいかないし、栄養・成分を再現していれば、そんなに大問題はないだろう。これは、日本人が飲みやすいよう加工したドリンクなのだ。
ただ他社の「ブラジル・アマゾン原産のアサイー」飲料を知る人にとっては、あの濃厚なイメージが皆無な味ので面くらうし、メインでないものをメインとする表示には問題があるのでは? という疑問は残る。ネットでもメジャー販売サイトではとても飲みやすいので賛美されているが、マイナー口コミサイトでは「アレがぶどうの味だと思われてしまうのは心外」などと非難するコメントが多数を占めるところもある。
オレンジが入ってなくてもオレンジドリンクは名乗れる?
先のドリンクのような、グレーな表示の仕方は合法なのかを調べてみた。
消費者庁の「表示対策」よくある質問コーナーによれば、たとえば「オレンジを使用しておらず香料等で味を整えている場合で、商品名を『オレンジドリンク』として容器にオレンジの写真を使用していた場合、『無果汁』であることを商品名とオレンジの写真と同一視野に入る場所に、背景と対照的な色で、14ポイント以上の文字で入れておく必要がある」(大意)というQ&Aがあり、無果汁商品(もしくは僅かな果汁をを含んでいる商品)に果実図案があっても使用割合を明瞭に表示すれば実質的にはお咎めがない。
ここから推定する限り、業界的にはあまり問題はない表示の仕方のようだ。割合の明記においても果汁の扱いになっていなければ別だろう。
もちろん、他にも業界的な自主規制、自粛すべきガイドラインなどは別にあるのだろうが、この国からのガイドラインは「昭和48年」公正取引委員会告示で、消費者庁のWebサイトでは表示されており現役である。人工的な味が好まれ、メーカーの力が圧倒的に強かった当時ならば仕方ないとはいえるが、40年も経過した今では、当時と食品事情も異なる。あまりにもメーカー寄りに見えるこのガイドライン、そろそろ改訂してもいいのではないだろうか。
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