「実話BUNKA超タブー」が9月2日から独立創刊!
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    実話BUNKAタブー2019年11月号

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サブカルチャー 2019.09.06(金)

なぜ志らくは嫌われるのか:ロマン優光連載143

 


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第143回 なぜ志らくは嫌われるのか

 立川志らくさんが、9月30日から始まるTBSの『グッとラック!』という新ワイドショーで司会をつとめるといいます。志らくさんと言えば、様々な事象について、テレビのコメンテイターとして、あるいは自身のTwitterで独自の意見を発表しては小さい炎上をたびたび起こしていることで知られる人物。炎上狙いで視聴率をあげていこうという局側の戦略があるのではないかという意見が出ています。ポスト坂上忍的なものを期待されているのではないかという話です。自分もそんな気がします。とはいえ、志らくさんの炎上と司会者としての坂上さんの炎上は質感として違うものです。
 芸能界的には忘れられた存在であった坂上さんの再評価が始まったのは、吉田豪さんによるインタビューがきっかけでした。芸能界という異常な世界で無頼な大人たちに囲まれながら、微妙にデビッド・ボウイにかぶれたりしながら成長した坂上さんの最後の無頼派タレントみたいな人物像は、今までのパブリック・イメージとの落差もあり注目を集めました。単純に言えば異常で面白かったからです。
 ワイドショーでの、坂上さんが本来持つ無頼な性質とはかけ離れた小市民的で古臭い「常識」を振りかざす姿は、そういう新しい坂上忍像の中の「偉そうで毒舌」という部分のみに制作側がニーズを求めた結果として生まれた姿だと思います。ようは、坂上さんは番組側の意向に沿った意見を言い、求められているキャラクターを演じているのです。番組で坂上さんが何かの文句を言っていたとしても、たいていは本当は別に興味もないし何も思ってないぐらいのものでしょう。お仕事がんばってるんですよ。子役時代から培った演技力を生かしつつ、そこに天然自然に持ち合わせる雑さと傲岸不遜な雰囲気が加わることで、炎上司会者としての地位を獲得しているわけです。
 志らくさんの炎上というのは、そういう「仕事として誰かの意向に沿った発言をしている」というわけではありません。様々な事象に対して、意図的に「独断と偏見」に基づいて自分の思うところを述べた結果として炎上しているのです。最近の炎上には、特定の思想に傾倒しすぎた結果トンチンカンすぎることを言い出して反対陣営に叩かれて炎上するというのがありますが、志らくさんはそういう感じでもありません。川崎児童殺傷事件や『平和の少女像』に関する発言で最近は左寄り・リベラルの人に叩かれているイメージがありますが、別に右とかでもなく、『笑点』が政権批判ネタで批判された時には『笑点』擁護してましたし、特定の政治的・学術的・宗教的な思想や信条に基づいて発言しているわけではないのです。その時々に思ったことを言ってるだけなのです。
 それが何故炎上しがちなのかというと、よく知らないものに対して雑なことを言うところや、変に人と違ったことを言おうとするところ、わざと尊大ぶるところが、他人をイラっとさせるからだと思います。まあ、志らくさんに対して文脈が読めないままに理不尽な批判をしている人が多く、志らくさんがそういう人たちを批判するのは間違っていないのですが、志らくさんが嫌いで文句を言っている人の全てがそういう人というわけでもなく、その雑すぎる発言内容や、他人と違う雑な発言を偉そうに言う自意識のあり方を嫌っている人もいるわけです。そういうところが嫌われるのはわかりやすいとして、なぜ、志らくさんはそういう振る舞いをしてしまうのかが問題なわけですが、そこにはちゃんとした理由があります。それは志らくさんが重度の「談志になりたい病」にかかっているからです。
 志らくさんの全ての行動を支配している恐るべき「談志になりたい病」。志らくさんという人は、立川談志という人をテレビで見たことがある程度の認識の人でも「あッ! この人談志になりたがってるッ!」とわかるくらい、わかりやすく談志になりたがっている人です。70年代末からタイムスリップしてきた落語立川流以降の歴史を知らない、志らくさんが「談志の弟子」だという事実を知らない人が見たとしても「あいつ、談志になりたがってるんじゃ…」と思うのは間違いないくらいわかりやすい「談志になりたがりマン」なのが志らくさんなのです。あえて、独断と偏見に基づいた発言をしてみせるのも、変なとこで他人と違うことを言いたがるのも、なんか知らないけど偉そうなのも、立川談志という存在を意識しすぎた結果、「談志になりたい病」をこじらせてしまったからにちがいありません。
「こういう時に談志ならどうするのか」「談志ならこうするはず」みたいなことを朝も昼も夜も考え続け、「僕の考えた最強の談志」に近づこうと頑張っているうちに、人前に出る間は何時いかなる時も自然に談志っぽく振る舞うようになった志らくさん。しかし、どれだけ談志のように振る舞おうとも、悲しいかな、志らくさんは立川談志ではありません。談志とは業績も可愛さも違っていれば、時代も違う。談志なら、実績や人気、そして可愛いげゆえに許されていた態度が、志らくさんが似たことをしても「偉そう」で不快にしか思われない。昔、談志が冤罪被害者に対して、本当はやってるという内容のことを放言して抗議されるということがありましたが、人権意識の低い時代だったから立川談志のキャリアは続いたわけですが、今そんなことを言ったあかつきにはN国入りするぐらいしか道がなくなるでしょう。それはともかく、今だったら炎上しやすいだろう立川談志を意識して振る舞っているのと、談志じゃないくせに談志みたいにしてるのがイラっとするから、志らくさんは炎上するんだと思います。
 坂上さんが異常な人が良識人のように演技しているタイプの司会者だとすれば、志らくさんは普通の人が異常を目指してがんばるタイプの司会者になるのかもしれません。そういえば、昔(立川ボーイズがあったころ)、友人が「志らくはあんなにつまらないのに、自分のことを天才だとか言ってるから頭おかしい」と言い出して、さすがにそれはお前の方がおかしいぞと思ったことを思い出します。多分、志らくさんは頑張って天才を自称してみせたりしていたはずなのに、そんなことを言っては気の毒だと思いました。
 まあ、坂上さんにしろ、志らくさんにしろ、特に具体的に何をしたとかないうちから人々の怒りを買ってしまう宮根さんには敵わないような気がします。やっぱり、自然体が一番ですね。

(隔週金曜連載)

写真・2019_02_10第92回キネマ旬報ベスト・テン

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