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サブカルチャー 2017.07.07(金)

Dr.まひるんイベントルポ:ロマン優光連載87

 


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第87回 Dr.まひるんイベントルポ

 自分は気圧の変化に弱く、この時期は元気がなくなりがちでして、精神疾患の疑いが強いタレントをワイドショーで晒しものにしてるような光景が目に入るだけで「テレビみたいなメディアで病人晒して喜ぶなよ……。後ろ盾がなくて抗議されないからやってるんだろ。身内に業界関係者が多い人にはあまりやらないもんな。」と不快な気分でいっぱいになり、どんよりとしてしまいます。

 こういう時には自分の趣味に関わることだけ考えてるのが一番。そういうわけで、2017.7.5に渋谷ロフト9で行われた「Dr.まひるんの『アイドルのTwitterについて考えてみた』討論会!」
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/67821 )というトークイベントに行ってきました。

 SAKA-SAMAというライブアイドルグループのメンバー・Dr.まひるんの書いた『アイドルのTwitterについて考えてみた』
http://ameblo.jp/saka-sama-saka-sama/entry-12280583118.html )が契機となって、ライターの大坪ケムタさんが主催して行われたイベントですが、非常に面白いイベントでした。

 世間的には無名の、しかもライブアイドルシーンの中でも特に知名度が高いというわけではない、ニッチな活動をしている出演者ばかりですが、そこで語られていたことや、そこで感じたトークイベントでの在り方というものは興味深いものであり、色々考えさせられたので、それをいくつか書いていきたいと思います。

 Twitterにアイドルが自撮りをあげるという行為。あれはファン・サービスという面と新規のファンを取り込むための宣伝活動という面の二つの意味があると思うのですが、イベント中でも何人かに指摘されていたように「自撮りでフォローしてくるような人はライブに来ることはめったにない」わけです。ただで可愛い女の子の画像を集めて、ただでネットで絡んで喜んでる人がそういう人の大半なのですから。そうやってフォロワーを増やしていく行為に意味があるとしたら、フォロワーの数が少ないことでナメられるのを避けるという以上の意味はないのです。
 これはアイドルだけに言えることではなくて、プロアマ問わずTwitterで何らかの宣伝活動や発信をしていきたい人全体に当てはまることですが、その作品や活動、情報の質を、フォロワー数で判断してくるような人は実際多いのです。これだけの人にしか支持されてないから価値がない、これだけの数の人に支持されているから価値がある、そんなふうに考えてしまう人たちです。ある程度以上の広範囲に届けたいとするならば、そういった人たちにも興味を持ってもらわなければならないので、フォロワー数というのが必要になってくるのです。だから、出演アイドルにとっても自撮りだけ大好きおじさんたちを巻き込んでいくことも将来的には無意味ではないとは思います。
 では、そういったある種アリバイ作りめいたフォロワー作りではなく、実のあるフォロワーを作っていくにはどうしたらいいのでしょう? 橋本環奈さんがネット上にあがった一枚の写真をきっかけにブレイクしたことで、アイドルに関しては画像の重要さが改めて強くうたわれるようになっていますが、ライブ活動を主軸を置いていく人にとってはそうでもないかなという気がします。橋本さん自身はブレイクしたわけですが、それはあくまでタレント・女優という個人としてのものであって、橋本さんの所属していたRev.from DVLは特にブレイクすることなく解散しています。
 そもそも、画像をきっかけに跳ねることができるレベルの飛び抜けたルックスの人なんかは全アイドルの中でも限られている、いや地上のメジャーグループの中にもほとんどいないわけで、そういった人たちの多くは最初から大手の事務所に属していて、媒体への露出が保証されているような立場にあるわけです。だからこそ橋本環奈さんがすごかったわけです。そこまでのルックスの良さを持ってない人たち、さらにグループ的にもニッチな方向性で活動していってる人たちはどうすればいいかというと、ツイッターでライブの良さを伝えること、ツイートを面白くすることしかないのではないのでしょうか。
 すごく原則的な話になりますが、良い曲で良いライブをすることがまず第一です。それを広げるためには動画アップもありますが、面白いライブレポが書けるオタクの存在も重要です。そういうオタクをつけるためには、ライブが面白いこと、やっぱり本人のツイートも面白いことが大切です。ここで忘れてはいけないのは「良いライブ」「面白い」というのは色々な種類があるということです。面白いというのは必ずしも、笑えるということではありません。一口にロックバンドといってもV系のバンドとロキノン系のバンドとハードコアパンクのバンドでは活動の中で目指すものが全然違うように、現在の細分化したアイドルシーンの中には多種多様な方向性が存在するわけで、「良いライブ」も「面白さ」もそれぞれなわけです。自分の面白いと思える面白さをやって、その中で精度を高めていくべきで、面白いとされてるものをなぞればいいわけでは決してないのです。だから、Dr.まひるんの自撮りをあまり撮らない方向性は、彼女の活動の方向性としては正しいのではないでしょうか。
 イベントは議題にそって各人が自分の意見を述べていく討論会色の強い一部と、議題をきっかけに自分の持ちネタを披露していく人が多いバラエティー色の強い二部の二部構成。一部はデビュー一年未満の人が多く、二部はある程度キャリアを積んだ人が多かったです。アイドルという立場からの各人の個人的な思考がうかがえる一部の方が個人的には面白かったです。Dr.まひるんのぶれない頑固さと、一色萌さん、小嶋りんさんというxoxo(Kiss&Hug) EXTREME勢二人の自分の経験に立脚した地に足のついた喋り、発言回数は少ないながらも一回一回強い印象の言葉を残していった長谷川美途さん(HAMIDASYSTEM)が良かったです。久保田奈津希さんのサブ司会のようなスタンスの仕事ぶりも面白かったです。あと、須崎萌花さん(RYUKYU IDOL)を見て、改めて「これだけの逸材を生かせなかったなんて、はまのんって本当に運営の才能ないな…」と思ったのも印象深いです。トークに限らず、もかろんのポテンシャルの高さは特筆すべきものがあると思います。
 二部のようなバラエティー色の強い感じですと、テーマに特に興味がないけど目立つ場が欲しくて出てきてる感が出てしまい鼻につく場合も多いのですが、テーマにそった自分の個性の出し方が絶妙だった白川花凛さん、りりかる*ことぱぉさん(AH(嗚呼))の「アイドル以前に面白くて頭の良い人」感が圧倒的でした。出演者中一番世間的にアピールできるものを何も持ってない(オタクもだいたい一人だし)夕月未終さんが臆せず律儀にテーマに沿って話題にグイグイ切り込んでいき、「ライブ中心の地下アイドルのフォロワーは民度が高い」という示唆に富む発言を残したのも頑張っていたなと思います。
 トークイベントというのは、出演者のファン向けのバラエティー的な楽しさと、テーマにそった討論な楽しさの二つの方向性があるわけですが、バラエティー寄りの方向性は出演者の意識によっては劣化したテレビ番組みたいになってしまいがちです。演者の意識の方向性というものの重要性を感じるイベントでもありました。
 最後に。Dr.まひるんに敬称を付けてないのはDr.が既に敬称であるような気がするからで、水道橋博士を博士さんと書かないのと同じ理由なので、怒らないでください……。

(隔週金曜連載)

写真:イベント告知写真

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。

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