
少年時代の星飛雄馬、そのズボン:杉作J太郎「美しさ勉強講座」連載35

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
35時限目・少年時代の星飛雄馬、そのズボン
ずいぶん話が長くなり、何の話を書いていたのか、なんのために書いていたのかわからなくなってしまったが、要するに、人間は仲間がいればたいていのことは平気だったりする、ということなのだ。
たったひとりでハロプロのTシャツを着て、ハロプロの買い物バッグを下げて、首からは加護のピカピカ光るペンダントをぶらさげていても、自分と同じような仲間がひとりでもそばにいたらなんとかなる。ふたりいたら心強い。5人いたら怖いものはない。池上遼一先生の『男組』という漫画は、男子ならではのそうした性質がうまく描かれている。仲間がいれば恥ずかしいことはほとんどないのである。
これが女子の場合はすこし異なる。ま、どう異なるか、いずれ機会があれば展開したいがここでは割愛する。
ま、要するに。
男子は孤独が苦手なのである。
少数派が苦手なのである。
たとえばズボンにつぎがあたっている。星飛雄馬のように。肩のあたりにもつぎがあたっている。これがクラスにひとりだから飛雄馬もつらかった。ただ飛雄馬の場合はまだ漫画なのでなんとかなったが、これが現実生活だったら。これはきつい。
「あいつの家、すごく貧乏なんだって」
俺ひとりが言われたら。
これはきつい。
が、これがふたりだったら。3人だったら。そのなかの誰かが景気が良くて威勢がよかったら。
「貧乏の何が悪いんだ」
ということになる。
10人いたら。これはひっくり返る。貧乏がクラスを支配する。なんか革命の話を書いているみたいな気もするが、そうではない。もっと些細な話だ。こころの問題だ。
ズボンにつぎがあたっているのが自分ひとりでも、クラスの10人いても、ズボンのつぎ自体はなにも変わらない。つぎのあてられたズボンはつぎのあてられたズボンだ。それ以上でもそれ以下でもない。だが、自分ひとりだとみじめで恥ずかしくて、10人いたら逆にワイルドで力強い。
いや、もちろん周囲の扱いは違うだろう。ひとりなのと10人なのとでは。だがそれ以前の自分の気持ちがなぜ違ってしまうのか。はきごこちさえ違って感じてると思う。
ただ単に貧乏が恥ずかしいわけでもないのだ。
星飛雄馬は恥ずかしそうにもじもじはしていなかったが、彼ほどの男でもそれを気にしていた。ズボンのつぎを気にしていた。
この弱さはどこから来るのだろう。
この弱さが俺の敵である。
<隔週金曜連載>
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【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
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撮影場所◎よるのひるね