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サブカルチャー 2015.07.10(金)

アイドルをテーマとした小説とか漫画とか:ロマン優光連載35

 


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第35回 アイドルをテーマとした小説とか漫画とか

 最近、朝井リョウ『武道館』や真鍋昌平『アガペー』のようなアイドルを扱った作品が増えてきてますね。唐突に何かと思われますでしょうが、ようするに編集氏から「今回のテーマはそこらへんでよろしくお願いします」というメールが来たという話です。

「人の数だけアイドル感がある」というように、アイドルを扱う作品というのは読む人によって評価が別れるもの。作品としてのクォリティーとは違うところで、どうしても乗り越えられない違和感を感じてしまうことはあります。朝井リョウ氏の『武道館』が自分にとってはそんな作品でした。おおざっぱに言うと「アイドルも人間。ヲタクは我が儘言うのやめろ!」と言うのがテーマのような気がするのですが、全体的に人物像がふわふわしてて私は感情移入がしにくいです。ハロプロに48系の要素を少し交えたような主人公のグループも、どんなグループなのかイメージがわいてきません。アイドルにしろ、ヲタクにしろ、イメージが漠然とし過ぎていて作品世界に入っていけない感じがしました。
 研究生で正規メンバー入りが絶対視されてたのにもかかわらず、昔の彼氏とのプライベート写メの流出で正規メンバーになれなかった子のエピソードがチラリとでてきます。朝井氏は「彼女にとって恋愛は大切なもの。謝罪会見などをすることで、それを否定してまではアイドルになることを選ばなかった。」というような描き方をしていますが、 自分としては「それでもアイドルになりたくて地下アイドルとして再起を目指す」その子の物語を妄想してしまいます。私は「何かになりたいなら、何かを手放さなければならない」という考えの人間なので、ただ漠然と「アイドルはやりたい、彼氏は好きだから一緒にいたい。」というだけで流されてる感じの主人公に共感できないのかもしれません。「したたかにバレないようにやって、夢つかんでやるよ!」というような普通のモラルを捨てたヤクザな子だったほうがまだわかるかも。個人的には「アイドルは恋愛してもいいけど、いちいち知りたくないから、わかんないよう本人も運営も上手くやってね。ただ、アイドル業の手は抜かないでね。」派です。朝井リョウ氏が心優しい、接触があまり好きでないライトなハロヲタだというのは良く伝わる作品でした。文章も構成も完成度が高いので、アイドルにこだわりない人にお勧めなのでは。

ドキュメントの破壊力には勝てない

 真鍋昌平『アガペー』なんですが、この人らしい作品だなあと思います。『闇金ウシジマくん』で感じることがこの作品でも多く感じました。この人はかなり綿密な取材の上に作品を書くタイプだと思うんですが、そこで細部のリアリティを積み重ねて世界観を作っていくのではなく、あえて多くの人が漠然と持ってるそれに対するイメージに寄せてきて世界観を補完してくるんですよね。『アガペー』でいえば、冒頭のシーンが秋葉原なところ。作中に登場する地下アイドルグループ「Hellring乙女パート」のモデルになったのはあからさまに「BELLRING少女ハート」というグループなのですが(取材対象であったことが公言されてますし)、ベルハーって特にアキバのイメージもないんですよね。でも「アイドルヲタク=アキバ系」というところに寄せてきている。
 ヲタクがTENGAでキモいオナニーをしたりするところも「ヲタクはアイドルを性的視線で見ていてオナニーばかりしている」という世間的イメージに寄せてきてる感があります。底辺臭い男の汚らしいオナニーといえば、ウシジマくんにもよく見られそうな光景でもあり、真鍋先生はキモい男が汚らしいオナニーをすることを描写することをリアリズムであると考えてるのではないのでしょうか。今回のテーマで彼がオナニーする必然性はなかったと思います。あと、MIXの時のポーズが何か変な気がします。特に「ジャージャー」の時に口元に手をあててる人はあまり見たことないような気がするのですが…。別のコールをやってるところの写真を元に描いて、そこにMIXを当てはめたような気がしてならないのですが、違ってたらすいません。まあ、細部が気になりだすと気になってしょうがないのですが、読み応えのある作品ですし、運営やアイドルの登場シーンは素晴らしいものがあると思います。それより、何も悪いことをしてないのに、あんなキモいヲタクに恫喝されたオカモトくんが不憫でなりません。単におとなしい地蔵な人だったかもしれないのに…。

 ドラマでいえばテレビ朝日のドラマ『警視庁捜査一課9係』の第五話「嘘つき女殺人」もまたアイドルがテーマでしたね。ピンクトマト略してピントマという、あからさまにももクロがモチーフの名称のアイドルが登場するのですが、何故か人気投票制度があります。ニートのアイドルヲタクが出てきたり、母子家庭で母や兄弟をやしなうためにアイドルやってたり、アイドルが大物俳優と不倫してたり、ニートだったヲタクが実は就活がんばってて本当はいい子だったり、まあ、お年寄りがアイドルについて一生懸命想像したような世界観の連続で、変に現実に寄っていって細部の違和感に悩まされるより、これくらいおおざっぱな方が気楽でいいですね。

 大衆向けの作品というものは一般性が必要なので、わかりやすくしがちですし、それは正しくはあるのですが、極端な面白さは減少してしまいます。なんだかんだいってもフジテレビで放送された『ザ・ノンフィクション 中年純情物語』の破壊力にはどれも勝てないわけで、私もカラオケでヲタ芸を練習する光景には衝撃を受けました。あの人たちとは何度も同じアキドラという空間にいたはずで、そんなに遠い世界の話ではないはずなのに全然知らない世界が…。あれも制作者の意図的な取捨選択や勘違いが入っているのですが、ああいうものを見てしまうと生半可な創作では勝てない気はしますね。ドキュメントに創作が勝てないというのも個人的にはシャクなので、現場ヲタクや元アイドルの人が自分の極私的な体験をもとに作品を書いてくれないかなあ、と思います。

【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っている。好きなアイドルは、イニーミニーマニーモー。

おすすめ書籍:「日本人の99.9%はバカ」/ロマン優光(コア新書)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/

おすすめ書籍:「武道館」朝井リョウ(文藝春秋)
http://books.rakuten.co.jp/rb/13220627/

『日本人の99.9%はバカ』購入特設ページ
http://www.cmz.jp/roman/

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