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サブカルチャー

グランドキャバレーの指名攻防戦:杉作J太狼XE「美しさ勉強講座」連載98

2019.04.12(金)


軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太狼XE先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」

98時限目・グランドキャバレーの指名攻防戦

 大阪ミナミのグランドキャバレーに連れて行ってもらった。もう二十年ぐらい前の話である。

 連れて行ってくれたのは関西の芸能関係者。

 この人がなかなかのいわゆるケチだった。

 我々のテーブルについたホステスさん数名が「指名して」と頼むのを「だめ」と断るのだ。

 もちろん最初から「指名してよ」と言ったわけではない。「今日はお仕事だったの?」とか「お兄さん、私の知り合いに似てるわ」とか、いろいろとお話をして、ひとしきり笑ったりなごんだりしたあとの頼みである。

 ホステスさんは三人か四人いた。私たちも三人か四人だった。二十年も前のことなのではっきり覚えているのはプロデューサーのK、そして私。30歳ぐらいの顔立ちがはっきりしたホステス、そして20歳ぐらいのおとなしいホステスの四人。

「ねえ、指名してよ」

 そう頼んでいたのは顔立ちのはっきりしたホステスであった。

「だめだよ」

 頼まれるたびにKは即座に断った。

 たしかに指名すると金額が高くなる。プロデューサーという仕事から来るものだろう。Kの金銭感覚は徹底していた。そうでなければやってこれなかったのだろう。

 美しい女性にお願いされて即座に断るというのはなかなかできることではない。私は頼もしさを感じた。

「じゃあなにか飲んでいい?」

「ははは。だめだよ」

 ふつう、「指名してよ」「なにか飲んでいい?」という問いかけに客は「いいよ」と答える。大きいところを見せたいという気持ちと、断ったら先の展開がなくなるという恐れがあるからだ。先の展開というのはなかよくなり、なんとなく好きになり、もしかしたら男女の関係に突入できるかもしれないということである。そんな虫のいいことは滅多にない。いや、ないのだろう。だから断るべきなのだというKの姿勢は最初たしかに頼もしかったが、

「フルーツ食べていい?」

「だーめ」

 なにもかもだめだと断っているうちにテーブルの雰囲気はなんとなく、そしてはっきり確実に沈んできた。

 そのうちに交わされる会話は、

「じゃあ指名してよ」

「だめだよ」

「じゃあ飲ませて」

「ははは、だめ」

「指名してよ」

「だめだめ」

 という懇願と拒絶だけになった。

 テーブルは明らかに異様な雰囲気になって、私は不安になっていた。だがテーブルにいたのはKと同じ会社の人たちで私だけほとんど面識がなく、おまけに旅先で、勝手もわからず、口出しすることもできずただ笑ったりしながら見守るしかなかった。その頃にはもう笑ってなかったが。テーブルにいる私たち、ホステス、誰も笑ってなかった。顔立ちのはっきりとしたホステスの目は吊り上がっていた。それでもKは涼しい顔で「だめ」「だーめ」と答え続けた。

 そして何十回めかの「指名してよ」のあと、Kがテーブルに500円玉をいくつか置いた。

「これあげるから静かにしてよ」

 目が吊り上がっていたホステスが怒って席を立った。

 その後、どれぐらい店にいたのだろう。テーブルの空気は暗かったがKは涼しい顔をしていた。

 店を出るときも誰も見送りに来なかった。

 ふつうは「また来てくださいね」とホステスが見送る。そんな気分になれなくて当然だし、腰が重かったはずだ。

 外に出て歩き出そうとしたとき、ひとりのホステスが私たちを追いかけてきた。

 20歳ぐらいのおとなしいホステスだった。

 色の白い、かわいい、おさない顔立ちの女の子だった。

「ごめんなさい」

 女の子は泣き顔になっていた。

 Kも振り返ってその子を見たが。「ふっ」と笑って歩き始めた。

(この項、おわり)

<隔週金曜日掲載>

撮影◎東京

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【杉作J太狼XE:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろうXE
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。

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