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サブカルチャー

2018年を振り返って:ロマン優光連載125

2018.12.28(金)


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第125回 2018年を振り返って

 2018年。つらかったことと言えば、『日本国記』(百田尚樹)『AKB48と日本のロック』(田中雄二)という、やたらページ数が多い上に内容に支離滅裂な箇所が多い本を仕事のために読まなければいけなかったことですね。
 前者が固定層に対するお金儲けのために適当な工程を経て作られた疑いが濃い似非愛国本。後者が著者の情熱の赴くままに、ささいな事実から無理矢理に導きだされた飛躍した論理と著者の妄想が目立つ上に、やたらと事実誤認が目立つ本。方向性や売り上げは全く違いますが、読んでる最中に感じるストレスの強さに関しては互角の力を感じました。つらかった……。

 それはさておき、何かについて書くとき、それが作品やライブについてのレポートやレビューではなく、演者や作者本人についての文章だと尚更なんですが、どこまで踏み込んで書くべきかということは非常に悩ましい問題です。特にアイドルについて書こうとする時に非常に悩みます。
 これは悪いことでも良いことでも同じです。どちらかというと、良いことを書こうとした時にこそ気を付けなければならない問題なのかもしれません。特定のアイドルに悪い評をつけたり、悪い感想をわざわざ書いたりは別にしなけりゃいいというだけの話ですしね。
 何かについて評論めいたことをするということは、対象についてわかりやすく他者に伝えるということでもあります。この、わかりやすくというのが曲者なんです。
 その分析が一面の真実を捉えているというのは大前提になると思います。褒めていれば何でもいいというわけではありません。間違った分析で評価されても、それは本当ではないわけですから、注目する人が増えたところで、そういう捻れは本人に負荷を与えるだけの結果になりかねません。そこは当たり前の話ですよね。
 そして、内容があってたとしても問題が無いわけではありません。踏み込みすぎて、変にわかりやすく他人に語ってしまうことには危険が付きまといます。わかりやすいということは基本的には良いことと考えられています。しかし、対象をわかりやすく表そうとする際には、わかりにくい部分を切り捨てていくという作業がなされることになります。
 こういう、わかりにくい部分を切り捨てるという過程で、その対象の持っている独自性や大切な部分を切り捨てすぎてしまい、ありがちな物語の中に回収してしまい、結局埋没させてしまうことになりがちです。対象にわかりやすい特異な体験や資質などがあって、そこを持ち上げていこうとしても、上手くできないと、ありがちな「特異体験」「不良」「破天荒」になってしまいます。少し話は違いますが、本人がわかりやすく特異性をアピールしようとした結果、ありがちなわかりやすい話になってしまい、非常に偽物くさくなってしまう場合もありますよね。たとえ本物であれ、偽物であれ、上手い人は偽物くささが出ないようにできるものです。本物でも、こういうのが下手で偽物くさく見える人もいますけど、あれは何か気の毒です。

言語化が難しいアイドル

 たとえ、わかりにくい部分も見事に掬いとって言語化に成功したとしても、危険はあります。本人が無意識でやっていたようなことまで言語化することで、本人が変に意識するようになって本来の美徳が失われてしまう可能性があるということです。これは文章のクオリティが高いほど、起こる可能性があります。
 運営が自分たちに関する言説に影響を受けた上に、ちゃんと理解できないままに変な舵の切り方をしてしまった例はよく見かけると思いますが、それとは別にアイドル本人が自分に対する言説に対して、変に受け入れてしまったり、逆に変に反発してしまうことで、何かが変わってしまうこともあるのです。
 そうですね、荘子の中の混沌の話です。混沌に目鼻をつけると混沌は死んでしまうように、他人に勝手に意味を付加していくことは、その人の良さを殺すようなことにもなりかねない。たとえ、どんなに対象を理解できていて、それが正しかったとしても、どこまで書くかの見極めができてなければ同じなんですよね。結局、わかりやすい言葉の表面だけ理解したような気になる人を変なタイミングで集めてしまっただけな感じになりかねません。
 めろん畑a gogoというアイドルグループに中村ソゼさんというメンバーがいるんですけど、彼女について書こうとする時に、私は非常に躊躇します。中村ちゃんは凄く強いアイドル性をもった、凄く変な人で、歌がどうだとか、踊りがどうだとか、接触がどうだとかで、その魅力を語ることは難しい人です。私にとって中村ちゃんは、かっての山塚愛や山塚EYEに非常によく似た匂いのする人なんですよね。それがどういう部分であるのかは、ある程度理解できてると思いますし、山塚愛という言葉を使わずに書けるとは思うのですが、それはどういうことなのかをわかりやすく書こうとすることに躊躇してしまうのです。
  私がよく見に行ってるアイドルに佐倉雅さんという人がいるのですが、彼女が自分で語ることを望んでいないような部分をフレームアップして語っていけば、今より注目度が上がるような気はするのです。しかし、それが彼女が望んでないことであったり、それで注目を集めたところで集まった人間が彼女が表現したい部分を理解できなければ、意味がないことだと思うのです。しかも、そんなわかりやすい部分を取り上げたところで彼女の面白さの核心にたどり着いたりはしないと思いますし。
 SAKA-SAMAのまひるんにしろ、日曜日ゆずさんにしろ、私の好きなアイドルにはヲタクが喜ぶようなわかりやすい感動話と縁遠いような個性の人が多いので、いつも悩みます。でも、そういう人間という生き物の不可思議なわかりにくさが伝わってくるジャンルがアイドルであるとも思ってもいるのです。

 そういうわけで、今年も去年に続いて家で一番聴いたアイドル楽曲はHAMIDASYSTEM の『略すな』でして、わかりにくい部分にこそ大切なものがあるのではないかなということと、他人がそれを小賢しげに語ることの傲慢さを考えてしまうのです。

(隔週金曜連載)

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz

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