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サブカルチャー

日野皓正の往復ビンタ:ロマン優光連載91

2017.09.01(金)


ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第91回 日野皓正の往復ビンタ

「え、あの世界的に有名トランペッターの日野皓正さんが男子中学生に往復ビンタ?」
 往復ビンタなんて、昔の学園エロコメ漫画の「強風にスカートが煽られて下着が見えてしまったヒロイン。それを偶然見ていた主人公は鼻の下を伸ばし、ヒロインは羞恥の念から往復ビンタをくりだす。」というシチュエーションでくらいでしか、お目にかかることができないもの。漫画の世界ならともかく、現実の世界では普通に暴力。しかも日野皓正は74才の成人男性。それが子供に対してビンタとはおだやかな話ではありません。一体なんでそんなことに?

 中学生で編成されたジャズバンドのライブ中、各人がソロを順繰りに回していくパートで、ドラム担当の男子中学生がいつまでたっても演奏をやめず、他の子たちにも指示をだして一時はフリージャズのセッション状態に。しかし演奏に落ちをつけられないまま、再びドラムのソロ状態。指導者の立場である日野さんの指示にも従わず延々と演奏を続ける彼のスティックを取り上げるも、それでも素手でドラムを叩き出す。結果、日野さんが彼の髪をつかんでからの、往復ビンタ。世田谷教育委員会主催の「新・才能の芽を育てる体験学習」のひとつとして、世田谷区立中学の生徒から希望者を集めてジャズを学ぶ「Dream Jazz Band Workshop」。中学生たちは4ヶ月間、日野皓正をはじめとするプロのジャズ・ミュージシャンに指導をうけ、その最終段階として、世田谷パブリックシアターで実際の観客の前で演奏するという感じのプロジェクトですが、そのライブ中に起こった出来事です。少年の行き過ぎた行為に日野さんがキレてしまった、そういう風に見えますが、そんなに単純なものでしょうか。
 少年のやったことは完全に間違っていたかといえば、そんなこともありません。横山光輝の『三国志』の内容を三行で説明するぐらいの勢いで恐ろしく雑に言ってみるなら、たとえ一応のルールが決められていたとしても、それから勝手にハズれていってもいい世界なんですよね。その演奏でステージに立ってる他の人間や聞き手を納得させることができたら全部OKなんだと思います。他のメンバーを巻き込んでいくところまでは全然ありなのです。彼が悪かったところがあるとしたら、自分で始めた演奏を演奏として着地させられなかったことだと思います。まあ、私もインプロビゼーションみたいなやつを他の人とやってたら、いつの間にか一人にされてしまい、終着点が見えないままに一人で続けざるをえなかったというツラい経験があるのですが、彼もそんな感じだったのかもしれませんね……って多分ちがいます。それはともかく、マッドハニー、ステージから勝手に帰るなよ!
 ただ、彼は一人のミュージシャンとしてライブをやっていたわけではないのです。世田谷区教育委員会が立ち上げたカリキュラム、ようするに授業として、そのライブは行われていたものなのです。そうなってくると、まあ、勝手な行動として指導は受けるのは仕方がないことです。
 彼と日野さんが対等な立場のミュージシャン同士として演奏をしていたなら、納得いかない演奏に腹を立てて手が出るというのは無いことではないし、まだわかりますけど 、そういう場ではないんですよね。逆にそういう場であれば、日野さんの演奏で上手くコントロールして着地させることもできたでしょうけど、日野さんの立場は指導者、教育者なのです。そして、ミュージシャンとしての意識であそこにいたなら、日野さんも彼の様子を笑って見ていたかもしれません。しかし、日野さんはおそらく教育者的な意識でその場にいたのではないでしょうか。だからこそ、他の子にも配慮しなければならず、ああいった指導という形で収めようとしてしまったのではないでしょうか? しかし、児童に対する教師としての訓練が欠けていて、老齢で体罰が常識だったころに学生時代を過ごしている日野さんは、少年の反抗的な態度にカッとなって手が出てしまったのではないでしょうかね。世間的に許されないことではありますが、常習的な体罰教師みたいに扱うのは違うような気はします。
 結局、報道からでは二人の関係性はわからないし、普段の指導がどういうものであったかはわかりません。個人的な師弟関係に近い精神的な距離感に二人ともなってしまっていたのかなとも感じますが、媒体を通して情報に触れているだけの他人の自分にはこれ以上踏み込めないのです。何か言えるとしたら、こんなもんです。「暴力の温床になるこんなプロジェクトは潰すべし。」みたいな強い言葉も吐けなければ、「生意気な子供にはおしおきは当然。しつけだ。」みたいな思い上がった言葉も、「少年のジャズ魂に感服!」みたいなマヌケな言葉も、どれも言えないんですよ。結局、当事者同士で話し合って互いに納得して、心からゴメンナサイと言い合えたらいいだけの話なんだと思います。

(隔週金曜連載)

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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。

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