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芸能・エンタメ 2016.06.23(木)

ディズニー王国事始め~『白雪姫』がすべてを変えた(1):高橋ヨシキ連載4


あの映画に隠された、禁断の魅力とは? 現代の「神話」の深淵に迫る!

高橋ヨシキのディズニー大好き!
第4回 ディズニー王国事始め~『白雪姫』がすべてを変えた(1)

文・高橋ヨシキ

ヒトラーが愛したディズニーアニメーション

 1937年、まだドイツではアメリカ産のポップ・カルチャーが大人気を博していました。いや、1937年までは、と言ったほうが正確でしょう。翌1938年、ナチス・ドイツはオーストリアを併合、さらにチェコスロバキアのズデーテン地方をも獲得し、また11月には悪名高い「水晶の夜」(※)事件が勃発したことで、ドイツとアメリカの関係は急速に冷え込みました。これに伴って、ドイツではアメリカ映画やアメリカ音楽を視聴することができなくなっていきました。

(※)「水晶の夜」は、1938年11月9日の夜から翌朝にかけて、ドイツ各地でユダヤ人の住居や店舗、シナゴーグ(ユダヤ教の聖堂)などが次々と破壊・放火された事件のことです。建物だけでなく、多くのユダヤ人が暴行されたり殺害されたりしたほか、大規模な略奪も発生しました。そのとき、破壊されたショウウインドウや窓ガラスの破片が道路に撒き散らされ、月明かりを浴びてきらきらと輝いていたことから「水晶の夜」と呼ばれました。ドイツの警察はこれをまったく取り締まらなかったばかりでなく、ナチス政権は事件そのものを正当化し褒めたたえるありさまでした。「水晶の夜」はまた、ナチス・ドイツがその後のユダヤ人絶滅計画、いわゆるホロコーストへ向かって突き進むことになる大きな転換ともなった事件でもあります。

 しかし1937年の時点では、ドイツでもまだアメリカ映画は普通に観ることができていました。その年のクリスマスに、宣伝大臣のヨーゼフ・ゲッベルスはヒトラー総統にミッキー・マウス映画をプレゼントしています。ゲッベルスの日記によれば「クリスマス、私は総統に12本のミッキー・マウス短編をプレゼントとして差し上げた! 総統はいたくお喜びで、素晴らしい贈りものに大変満足しておられた」(1937年12月20日)とのことです。当時のドイツではミッキー作品だけでなく、「フェリックス・ザ・キャット」やフライシャー作品などもポピュラーでした。

 ヒトラーとゲッベルスはディズニーのアニメーションのファンでした。ヒトラーはミッキー・マウスの悪口を言ったりもしているのですが、それでもディズニー製の見事なアニメーションに彼らは驚嘆を隠せず、ヒトラーはゲッベルスに対し「ああいった素晴らしいアニメーションを我が国でも作れないものか!」と、国産アニメーション映画の製作に大号令をかけました。これはのちに、「ドイッチェ・ツァイヒェンフィルム」という巨大アニメーション会社(1941年設立)という形をとることになるのですが、このスタジオがものにしたまともなアニメーション映画は『Armer Hansi』(43年)一本だけに終わりました。『Armer Hansi』は、後述する「マルチプレーン撮影」など、アメリカ発のアニメーション技術を意欲的に取り入れた作品ではありますが、いかんせん全体的に野暮ったく、同時期のディズニー作品の洗練と高度な技術には及ぶべくもありませんでした。

http://www.dailymotion.com/video/xwz97i_armer-hansi_animals
(編集部注:動画リンク先は音が出ます)

白雪姫はナチスの精神を表現する?

 今回ご紹介するディズニー初の長編アニメーション映画『白雪姫』は1937年の作品です。そして、ヒトラーは『白雪姫』をを心待ちにしていました。というのも『白雪姫』はもともとドイツの民話をベースとした『グリム童話』からきているので、「古き良きドイツ」のイメージを扇動に用いていたヒトラーにとって、とても好ましい作品に思えたのでしょう。ドイツに『白雪姫』のフィルムが持ち込まれたのは1938年のことです(アメリカでプレミア上映されたのが1937年12月21日です)。ゲッベルス自身がアメリカ公開直後に『白雪姫』の上映権を注文、一説によると1938年にドイツを訪れたロイ・ディズニー(ウォルトの兄)がフィルムを宣伝省に売ったとのことです。ヒトラーはベルヒテスガーテンの山荘にあった専用の映写室にフィルムのコピーを持ち込んで鑑賞したと言われています。

 全世界の観客同様、第三帝国の総統ヒトラーも『白雪姫』に魅了されました。ヒトラーがフェイバリットとして挙げている3本の映画は『白雪姫』と『キングコング』(33年)、それに『銀嶺セレナーデ』(41年)なのですが、どれもアメリカ映画なのには苦笑させられます(当時のドイツに優れた映画がなかったわけではもちろんありません。ただ、ナチス政権が勢いを増す中で、多くの映画人が国を離れてアメリカなどへと渡ったことも事実です)。

しかし『白雪姫』は結局、ナチス時代のドイツで公開されることはありませんでした。当時の配給元RKO社がドイツから撤退したこと、アメリカとドイツの関係が悪化したことなど、いくつかの事情が重なった結果。公開することが不可能になってしまったのです。独裁者本人は海外のポップ・カルチャーに夢中だったのに、国の体制としてそういうものを国民の目に触れさせないようにしてしまう、というようないびつな構造はナチス・ドイツだけでなく、北朝鮮など多くの独裁体制下でみられるアンフェアな状況です。そして、そういう状況になってしまったからこそ、ヒトラーとゲッベルスは自国製で『白雪姫』レベルのアニメーションを! という夢を捨てきることができなかったのですが、いくら自分たちは優れた「人種」だから、なんでもうまくできるはずだ、と言い募ったところで、自由な環境で実験と試行錯誤を繰り返しながら蓄積されていったディズニーの技術力や芸術性にかなうはずもなかったのです。

未だかつてない、どこの国の人でも身近に感じる映画

 前置きが長くなってしまいましたが、長々とヒトラーと『白雪姫』の関連についてお話してきたのには理由があります。『白雪姫』から始まったディズニーの長編映画の歴史、その骨格を考える上で、この逸話はとても示唆的だと思えるからです。映画そのものを観てヒトラーが感じた「感激」は置いておくとしても、『白雪姫』についてのヒトラーやゲッベルスの思惑、すなわち「これは我がドイツの伝統に基づいた童話を、素晴らしい形で映像にしたものだ。ナチス・ドイツの精神、ドイツの心情を国民に浸透させるのに、これほど適したものはないのではないか?」という考えこそ、ディズニーの長編映画が世界中で愛される理由の真逆だからです。善きにつけ悪しきににつけ、ディズニー映画は、少なくとも初期のディズニー長編は特定の時代や特定の場所(国)との結びつきをなるべく感じさせないように作られていました。それは意図的なものです。もちろん、(初期の)ディズニー作品において、そういった「国」や「時代」との結びつきがまったくないと言っているわけではありません。ですが、たとえば「この物語は、西暦××年、ドイツの××地方を舞台にしたものである」というような強い結びつきは避けられている。そうでなければ、各国語版の『白雪姫』において、わざわざ7人の小人のベッドに彫り込まれたそれぞれの名前が、別の言語に書き換えられてはいないわけです。7人の小人のベッドは、背景画を公開する国の数だけ描き分けて再撮影されているわけですが、これを字幕で処理することはできたはずですし、また単に英語版だけで済ませることだって不可能ではなかった。でもディズニーはそうしませんでした。それは「昔々、どこかの王国で……」という物語であったとしても、誰もが(どこの国の人でも)身近に感じることができるように配慮したからに他ならないからでしょう。同様の理由で『白雪姫』ではセリフをできるかぎり削ること、またセリフであっても「歌のように聞こえるように」することが求められました。

『白雪姫』は、何もかもが真にエポック・メイキングな作品でした。後の文化全般に与えた影響、エンターテインメントの新しい「形」を生み出したというような意味において、『白雪姫』に比肩し得る作品は『スター・ウォーズ』ぐらいしかない、という人もいます(『スター・ウォーズ』がいまやディズニー作品になっていることを考えると皮肉ですね)。次回はそんな『白雪姫』について、掘り下げて見ていきたいと思います。

(つづく)

<木曜連載>

画像:(Original theatrical poster for Snow White and the Seven Dwarfs Illustrated by Gustaf Tenggren. Artwork (C) 1938 Walt Disney Productions and RKO Radio Pictures.)
※「研究を目的とする主文」に対する「引用画像」として掲載しております。

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映画ライター、デザイナー、悪魔主義者。雑誌『映画秘宝』にアートディレクター、ライターとして参加する傍ら、テレビ、ラジオでも活躍中。NHKラジオ第1放送で『すっぴん!』にて毎週金曜日「高橋ヨシキのシネマストリップ」を担当。近著に「暗黒映画評論 続悪魔が憐れむ歌」。

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